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ドミニク・チェン【第1回】今、注目が集まる「ウェルビーイング」 – ウェルビーイングな組織づくりのヒントは「阿吽の呼吸」にあり。
ウェルビーイングな組織づくりのヒントは「阿吽の呼吸」にあり。
「科学的に計測し、改善することで幸福をより科学的に追求できる」
近年、企業では「ウェルビーイング」に関しての注目が集まっている。「ウェルビーイング」とは何か? なぜ注目されているのか?日本の企業にとりいれるとしたらどうしたらよいのか?
科学的、行動学的知見、心理学、哲学的な洞察から、新しいコンピューティングのあり方を提唱しているドミニク チェン氏に聞いた。
小谷奉美 ≫ インタビュー 櫻井健司 ≫ 写真 白谷輝英 ≫ 文
(※本記事は、2017年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
今、注目が集まる「ウェルビーイング」
「『ウェルビーイング』とは、WHO(世界保健機関)によっても定義されている心理学の概念で、直訳すると『よきあり方』、あるいは『良好な状態』という意味合い。精神的に充実している状態を指しています。ウェルビーイングの概念を深めたのが、ペンシルベニア大学のポジティブ心理学センターのセンター長であるマーティン・セリグマン博士です。彼は、ウェルビーイングを『ポジティブな感情』、『没頭』、『他者との関係性』、『意義』、『達成』という5つの要素に分類しました。そして、それらを科学的に計測し、改善することで幸福をより科学的に追求できると提唱したのです」
西洋的な方法で、組織のウェルビーイングを高める方法もあるが、日本では、もっと身近な方法で、組織のウェルビーイングを上げることも出来るはずだ。とドミニク氏は語る。
個が溶けていく日本語の仕組み
日本語・英語・フランス語に堪能なドミニク氏から見ると、日本語、あるいは日本式のコミュニケーションには特殊な部分があるという。
「少し前、日本では『忖度』という言葉が話題になりましたね。言葉などを介さずに他人の気持ちを推しはかるという意味ですが、外国人にとっては分かりづらいようです。先日、アメリカ人の友人から『忖度とは何だ?』と質問されたのですが、色々説明してもうまく伝わりません。仕方なく、最後は『忖度とはテレパシーのことだ』と説明しました。友人は、『日本人はテレパシーが使えるのか!』と、感心していました(笑)」
「忖度」、あるいは「阿吽の呼吸」のようなコミュニケーションは、日本において古くから行われてきた手法だ。その背景には、日本語に特徴的な仕組みが横たわっているとドミニク氏は見ている。
「お茶の水女子大学・明海大学名誉教授で日本語教育学者の水谷信子先生は、『共話』という概念を提唱されています。これは、『1つの発話を必ずしも1人の話し手が完結させるのでなく,話し手と聞き手の2人で作っていく』ことです。 日本語を話していると、『自分』、あるいは『相手』という主語が場の中で溶けて、あたかも話し手と聞き手が一緒になって会話を作っていく雰囲気になりやすいのです。例えば、日本人のビジネスパーソンとブレインストーミングを行うと、どんな発言がなされたかという印象は強く残りますが、どの発言を『誰が』したのかは記憶に残りづらいのです。日本語の中には、『個が溶けていく文法構造』が秘められているのではないでしょうか」
講師紹介
ドミニク チェン
1981年、東京生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業後、東京大学大学院博士課程を修了。博士(学際情報学)。NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン設立理事として著作権の新たな仕組み作りに尽力するかたわら、2008年に創業した株式会社ディヴィデュアルでウェブやスマホに向けたコミュニティアプリなどを開発している。2017年4月、早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授に就任。 キャプション:従業員同士が異なるコンテキストを共有し、その上でお互いの個性を尊重し合えれば、スピーディーな意思疎通が可能になるでしょう。
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テクノロジー, ビジネススキル, 人材育成, 情報学,早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授/株式会社ディヴィデュアル共同創業者
NPOコモンスフィア理事 ドミニク・チェン 講師のプロフィールはこちら