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眞邊明人【第7回】スティーブ・ジョブズのはなしかた – プレゼンの鬼が教える話し方のコツ!眞邊明人の最強の話し方
【コラムジャンル】
コツ , スティーブ・ジョブズ , トレーニング , はなしかた , プレゼン , 教える , 最強 , 眞邊明人 , 第7回 , 話し方 , 連載 , 鬼
2016年04月22日
「スティーブ・ジョブズのはなしかたは決して上手くない。むしろ下手なくらいである。」しかしプレゼンは魅力的だ。その極意に迫る。
元吉本興業のプロデューサーであり、新垣結衣や佐藤健のデビュードラマの監督であり、即興演劇のプロリーグ「アクトリーグ」を生み出したという異色の経歴の持ち主、眞邊明人氏。
売れっ子研修・講演講師でもある 眞邊明人氏に、いままでの研修や講演会をはじめ、様々な経験を通じて得られたことを元に、最強の話し方について語っていただきます。
どうしたら、あの人のように喋れるようになるのか?
あの人とこの人では、同じことを話しても全然違うのはなぜなのか?
最強の話し方を身につけるために必要なこととはなにか?
これぞ話し方の「ノウハウ」決定版です。
スティーブ・ジョブズのはなしかたは決して上手くない
「最強のはなしかた」は基本的に「日本語」をベースにしているのですが、前回ビジネスにおける「はなしの達人」で孫正義さんをとりあげたので、どうしてもこの人のことを書きたくなりました。そう、世界最高のプレゼンテーターと称されたあのひとです。
スティーブ・ジョブズ。
1分話せば36億円稼ぎだす。なんて伝説がまことしやかに伝えられるほどのプレゼンの天才です。スティーブ・ジョブズのプレゼンにまつわる本は山のように出ています。勿論、ワタシもそれらの本のほとんどに目を通しました。いずれの本も大変よく研究され、ためになるものばかりです。ここでワタシがスティーブ・ジョブズの「はなしかた」についてとりあげたいのは、それらの本と少し違う視点です。それは、
「スティーブ・ジョブズのはなしかたは決して上手くない。むしろ下手なくらいである。」
ということです。
スティーブ・ジョブズの資質
前回のコラム「第6回「孫正義さんのはなしかた」で書いた、「資質×意図=演出」という公式に当てはめてみると、スティーブ・ジョブズは資質に関して言えば、そんなに高くないのです。特に、資質の中でもパフォーマンスを司る「表現力」は一般の人よりも低いのではないかと思われるくらいです。
その人がもつ「表現力」の才能というものはあります。声や外見や仕草、姿勢など、「スター」と呼ばれる人は、練習しなくても最初から備わっています。例えば前回とりあげた孫正義さんは天性として、そういった「スター性」が備わっていると思います。つまり、他人が真似しようとしても真似できないものが孫さんにはあるのです。
海外に目を向ければ、スティーブ・ジョブズが率いたAppleの対極ともいえる、マイクロソフトの元CEOのスティーブパルマー氏なども天性の表現者としての才能に恵まれていると思います。その人たちに比べると、スティーブ・ジョブズは…。
なのにスティーブ・ジョブズのプレゼンは魅力的
ワタシは熱狂的なスティーブ・ジョブズファンですが、演出家としてスティーブ・ジョブズを見たとき、「表現者」としての天性の才能というものをあまり感じないのです。むしろ「発声」や「タイミング」「間」などはどう見ても「下手」と感じることが多いのです。それなのに、やっぱり、スティーブ・ジョブズのプレゼンは魅力的なのです。とんでもなく。その秘密をあれやこれやと考えてみたのですが、ひとつの結論に達したのは、
スティーブ・ジョブズは「アドリブ」をしない。
このひとことに尽きるのではないかと考えました。
スティーブ・ジョブズのプレゼンの極意
スティーブ・ジョブズのプレゼンはアドリブに見える部分も実際には非常に綿密に練り込まれた「シナリオ」であるということは有名です。この事実はいくつかのスティーブ・ジョブズのプレゼン本にも出てきます。スティーブ・ジョブズは異常と思われるくらい、プレゼン(カンファレンス)のリハーサルを行ったと言われています。
照明のタイミングやスライドの出るタイミングや椅子や机のような舞台装置に至るまで徹底的にこだわり、納得いくまで何度でもやり直したそうです。つまり、完璧に「つくりこむ」、「不確定な要素」は残さない。それがスティーブ・ジョブズのプレゼンの極意なのではないかと。
ワタシが「下手」だと感じたのは、シナリオを「アドリブのように演じる」声や間が、完璧を求めるがゆえに「シナリオ」を感じさせてしまうからだということに気づきました。もっともそれは、ワタシのように「お笑い」や「演出」を職業としている人間は、内容よりパフォーマンスにどうしても目がいってしまうからであって、一般の人には、ほとんどわからないくらいの問題だと思います。それよりも、綿密に組み上げられたシナリオを完璧に頭と身体に叩き込んでいるスティーブ・ジョブズのプレゼンは、実に「安定感」があり、聴衆が「安心」して楽しめるという絶大な威力があるといえるのではないでしょうか。
「つくこむ」そして「完璧に演じる」
才能あるなしに関わらず、「表現者」として自信のある人は、どうしても自分の力を過信して準備を怠る傾向があります。(ワタシなんかもそのクチだと思います。反省しなければ。。)その結果、めちゃくちゃ素晴らしい時もあれば、めちゃくちゃダメなときもあるというような、実にアップダウンの激しいパフォーマンスになってしまうのです。
これは即ち「再現性」の不確実さであり、もちろんいいことではありません。「芸術」であれば許される部分もありますが、「仕事」においては「再現性」が低いというものは評価に値しません。ワタシがスティーブ・ジョブズに感じることは、常に「自分はプレゼンが下手である」ということをベースにプレゼンに取り組んでいたのではなかったかということです。そしてそのことは「プレゼンの天才」と賞賛を集めてからも一切変化がなかったのではないかということです。
簡単なようですが、なかなか難しいことです。それはiPhoneやMacを生み出したように、常に「完璧」で「革新的」な製品を追求するスティーブ・ジョブズだからできたことかもしれません。スティーブ・ジョブズにとって「プレゼン」も「製品」と同じだったということではないでしょうか。そして、「つくこむ」それを「完璧に演じる」ということは、ある程度のレベルまでなら「練習」で誰にでもできます。
次回予告「つくりこむ」「演じる」トレーニング
スティーブ・ジョブズのように大掛かりなプレゼンでなければ、われわれにもそれを真似することではできるはずです。ワタシはこの「つくりこむ」「演じる」をあるトレーニングにしてみました。次のコラムでそれについて触れてみたいと思います。
あ、それともうひとつ。スティーブ・ジョブズには「表現者」としての「資質」の中で、ある「ひとつ」のことだけが「天性」のものがあります。それは孫正義さんにも共通する「特異」なものです。このことだけが「常識」から外れているのに効果が絶大という「武器」です。ちなみにジャパネットたかたの高田会長や、小泉純一郎元首相にも共通していることです。さて、それはなんでしょうか?そのことについても、また別のコラムでおはなししたいと思います。
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