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澤井芳信【第3回】「自分の求める道を信じろ」。大学時代の自分を戒めた親父の教え – プロフェッショナルの歩き方
プロフェッショナルの歩き方
「それぞれの選手に合った“その人の価値”を崩さないこと」
どの世界にもプロフェッショナルと呼ばれる人がいる。彼らはどのような出会いによって学びを得て、どのように成長し、現在に至るのか。業種の違うプロフェッショナルに話を伺った。
櫻井健司 ≫ 写真 村上杏奈 ≫ 文
(※本記事は、2016年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。所属・肩書・固有名詞は当時のものです。)
プロフィール
澤井 芳信(さわい よしのぶ)
株式会社スポーツバックス代表取締役。京都成章高の「一番・ショート・主将」としてチームを率い、松坂大輔を擁する横浜高校と対戦し準優勝。同志社大、社会人野球のかずさマジック(現・新日鐵住金かずさマジック)でプレー後、スポーツマネジメントの会社に転職。上原浩治投手や元水泳選手の萩原智子、元バレーボール選手の山本隆弘のマネージャーを勤める。2007年に独立、アスリートのマネジメント業務を中心に事業を行う。
「自分の求める道を信じろ」。大学時代の自分を戒めた親父の教え
「勉強やれ」だの「野球やれ」だの言うことは一度もない“ほったらかし”の家庭で育った中でも、忘れられない親父からの教えがあります。
「佐々木小次郎と宮本武蔵の違いが何かわかるか」。大学3年、プロ野球選手になりたくてたまらなかった僕。「わからん」と答えると親父が続けました。「佐々木小次郎は燕返しという技で戦った。宮本武蔵は剣ではなく木刀で勝った。剣に技を求めた小次郎と、剣に人生を求めた武蔵。その違いだ」。当時の自分はプロになりたいあまり、チームとしての勝利よりも自分の技術を磨くことに必死でした。
「あれになろう、これになろうと焦るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作り上げろ。世間に媚びずに、世間から仰がれるようになれば、自然と自分の値打ちは世の人が決めてくれる」とは、吉川英治の『宮本武蔵』の有名な一節。親父は「自分の求める道を信じろ、周りに振り回されてブレるんじゃない」ということが言いたかったんだと思います。
卒業後も社会人野球チームに所属しましたが、プロへの道は断たれました。その後、スポーツマネジメント会社に所属し、以前から興味があったスポーツビジネスの世界に身を置くようになりました。現在は、メジャーリーガーの上原浩治選手のマネージャーとしてメディア露出の調整から、トレーニングの相手まで全て行い、他にもスポーツ選手を抱え、マネジメント事務所の代表として充実した日々を過ごしています。
選手のマネジメントをする上で気をつけているのは、それぞれの選手に合った“その人の価値”を崩さないこと。僕を信頼してキャリアを預けてもらっているのですから、いくら条件がよくてもその人にプラスにならない仕事は断ります。逆にノーギャラに近くても、選手主宰の子どもの大会運営など、意義のあることは全力で応援します。
僕は、スポーツの道に人生を捧げてきたアスリートたちが引退後も存分に活躍できる社会システムをデザインしていきたいんです。「澤井に任せれば大丈夫だ」と安心してもらえるよう、スポーツとアスリートの価値を社会に広げていくビジネスを探求し、学び続けていくつもりです。
My opinion by 齊藤正明 コメント
かつては「自分が目立つために!」と、努力をしていたものが、お父様の言葉によって、「他人や社会を幸せにするためには?」という視点で努力をされるようになったことが、今の成功につながったのですね。