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中北朋宏【第1回】普通の”まともな人生”なんて送りたくない – 企業に”笑いのメカニズム”が浸透すれば、世の中はもっと面白くなる
企業に"笑いのメカニズム"が浸透すれば、世の中はもっと面白くなる
「人に恩返しできる仕事がしたい」
お笑い芸人から人事系コンサルタント、企業人事責任者を経て、会社社長に。唯一無二といえる、異色のキャリアを歩んできた気鋭の企業家、中北朋宏氏が立ち上げた『株式会社俺』が、今にわかに注目を集めている。本格稼働からわずか1年足らずで、研修や講演オファー実績が250を優に超える。中北氏が手がける、世の中を”ちょっと〟面白くする仕掛けとは─!?
猪俣奈央子 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2019年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
中北 朋宏(なかきた・ともひろ)
株式会社俺 代表取締役社長
大学中退。NSC(吉本お笑い養成所)や浅井企画に所属し、お笑い芸人として6年間活動。お笑い芸人活動に区切りをつけ、人事系コンサルティング会社に入社。内定者育成から管理職育成まで幅広くソリューション企画提案に携わる。その後、インバウンド系事業のスタートアップにて人事責任者となり、制度設計や採用などを担当。2018年に人材研修コンサルティングなどを手掛ける株式会社俺を設立し、社長就任。
著書「「ウケる」は最強のビジネススキルである。」も好評。
スーツ姿に白いシャツ、紺のネクタイ。いかにもビジネスマンの格好で、さっそうと取材現場にあらわれた中北朋宏氏。その風貌からは、”元お笑い芸人”であることはうかがい知れない。だが名刺交換の瞬間、ビジネスの場に似合わない”笑い”がドッと生まれた。中北氏が差し出した名刺は、なんと通常サイズの9倍。アイパッドと同じ大きさだ。一同が笑いに包まれるなか、中北氏はこう語った。
「実はこの名刺は、マーケティングの一環なんです。うちの会社は”笑い”をベースにしたビジネスを提供しているので、名刺を手渡したときのリアクションが商談結果を判断する材料になるんです」
場の雰囲気を和ませる”笑い”と、深く練られた”戦略性”。この両面に、中北朋宏氏が持つ魅力が象徴されているのかもしれない。
普通の”まともな人生”なんて送りたくない
子ども時代の中北氏は、一風変わった少年だった。公務員の父親、介護職に就く母親に対して「僕は、お父さんお母さんのような”まともな人生”は送らない」とキッパリ告げたこともある。決められた時間に登下校し、言われたとおりに過ごさなければならない学校生活は退屈の極みだった。そんな彼が憧れを抱いたのが、お笑いの世界だ。
「小学2年生のときには、『お笑い芸人になる!』と決めていました。学校給食の時間、友だちが牛乳を口にふくませた瞬間に面白いことを言って、吹かさせるのがすごく好きで(笑)。明日はどうやって笑わせようかと、いつも考えているような子どもでした。僕は毎日ネタを考えているわけだから、将来お笑い芸人になれるはずだ! と思っていたんです」
お笑い芸人への夢は消えることなく、大学を中退し、NSC(吉本興業株式会社が運営する養成所)に進学。NSCを卒業しても売れずに消えていく人たちの多さに圧倒され、「大阪でくすぶっている暇はない」とすぐさま上京し、芸能プロダクション『浅井企画』に入社した。ここから夢の芸人生活が幕をあける。
これから、なんの仕事で生きていくのか
ひたすらネタを書き、舞台に立ち、オーディションを受け、深夜にアルバイトをする生活。お笑い芸人としての毎日は、本人曰く「とても楽しいもの」だった。芸人時代に身につけたものは、たくさんある。トークの技術、舞台度胸、人間関係の処世術、人の感情をかき立てるストーリーを組み立てていく論理的思考力や企画力、個人事業主としてのプロ意識。さらに自己プロデュース力……いずれも、現在の中北氏を支えるスキルだ。憧れの先輩芸人と同じ番組に出演したり、ネット番組でレギュラーを得たり、3000人を前にイベントの司会をしたりと順風満帆に思われた。しかし中北氏が27歳のとき、終わりは突然訪れる。コンビの解散だ。6年間かけて積み上げてきたものが、ゼロになった瞬間だった。
「コンビの解散が決まって芸人を辞めると決断したとき、『ああ、これで俺の人生終わるのかな』と思いました。子どものときからお笑いが好きで、芸人として売れることだけを目指してきた人生でしたから」
新たな職を求め、人材紹介会社に登録するものの、勧められるのは警備員やドライバーの求人ばかり。「トークの技術を磨いてきた俺に、なんでトークを必要としない仕事を紹介するんだろう」-そんな違和感が募ったという。これから、なんの仕事で生きていくのか。改めて考えたとき、中北氏の脳裏に浮かんだのは、「これまで人に世話になりっぱなしの人生だったから、人に恩返しできる仕事がしたい」という想いだった。
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