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ノビテクマガジン Vol37 二ノ丸友幸

二ノ丸友幸 – 自ら考え、判断し、行動できる「自考動型人材」

二ノ丸 友幸

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2023年06月19日

二ノ丸友幸 - 自ら考え、判断し、行動できる「自考動型人材」はどう育つか

自ら考え、判断し、行動できる「自考動型人材」はどう育つか「どんな人材が求められるか」と経営者や人事担当者へ問うと、多くの人が「自分で考えて動ける人」「一を聞いて十を知るような人」と答えるという。しかし、そのような〝理想の人材〟が育つ環境が整っているかどうかは別の話だ。プロラグビーコーチであり、人材育成プロデューサー、更にはコーチのコーチ(コーチエデュケーター)を務める二ノ丸友幸氏に、不測の時代を生き抜くための人材育成の考え方について聞いた。

(※本記事は、2023年5月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

佐々木信行 > 写真 村上杏菜 > 文  

二ノ丸友幸(にのまる・ともゆき)

二ノ丸友幸

プロラグビーコーチ/人材育成プロデューサー/コーチエデュケーター
大阪府出身。啓光学園中学・高校(現常翔啓光学園)、同志社大学に進学し、ラグビー選手として活躍。
大学卒業後、ジャパンラグビートップリーグ「クボタスピアーズ」でトップリーガーとして選手生活を送り、2006年に引退。引退後も、株式会社クボタに在籍し、企業法務や広告宣伝業務に従事する。2012年に日本ラグビーフットボール協会リソースコーチとなり、U17・U18ラグビー日本代表コーチを歴任。2016年に株式会社クボタを退社し、人材育成研修事業やスポーツコーチング事業を展開する「Work LifeBrand」を設立。企業研修や講演活動を精力的に行う傍ら、全国屈指の強豪チームの御所実業ラグビー部やKiT CURLING CLUB(カーリング)やサッカー、バレーボール、ハンドボールのコーチなど、10を超えるコーチング契約を結びサポートしている。

不測の時代に求められる人材とは

プロスポーツコーチ、そして研修講師として数多くのチームや企業をサポートしている二ノ丸友幸氏。同氏が提唱する「自考動型人材」とは、いったいどのような人をいうのか。

「状況に応じて、自ら考え、判断し、行動できる人のことです。今までの常識や価値観、評価基準が通用しなく、社会情勢や技術の変化のスピードが速くなっています。このような不測の時代だからこそ、自考動型人材が求められるのです」

自考動型人材について紐解くうえでは、『自主的』と『主体的』の違いを理解することが肝要だ。

「言われたことに対して意欲的に取り組むのが『自主的』、対して、言われたことに加えて、自分で考えて、判断して行動することが『主体的』です。つまり、自分で自分を管理できる行動(セルフプロデュース)と定義しています。たとえば、出された課題に取り組むのは『自主的』であって『主体的』ではありません」

「自分で考えて動ける人が欲しい」と言いつつ、主体的に行動した部下に対して「勝手なことをするな」と叱責する管理職は少なくなかった。つまり、『主体的』な人を求めている一方で、現実には『自主的』な人材が育つ社会構造(日本の教育)になっているのだ。

「ところが、コロナ禍によってリモートワークやオンライン文化が浸透しました。働き方の変化と共にビジネスパーソン一人ひとりの裁量権が大きくなったのです。オフィスで上司や先輩と机を並べる機会が減った今、自ら考え、判断し、行動できる人材を育てなければ、業務が遂行できないということが現実味をもって企業に迫ってきたのです」

自考動型人材の育成には「心理的安全性」の構築が大前提

自考動型人材の育成には「心理的安全性」の構築が大前提

「自考動型人材」を潰す組織、育てる組織

日本の企業には自考動型人材が育つ土壌が欠けていると二ノ丸氏は話す。

「私は多くの企業で『自考動型人材になることが大切です』という話をします。しかし、若手社員の意識が変わっても、管理職の思考や社内環境が変わらなければ、自考動型人材は育ちません。実施した研修を無駄にしないためにも、若手から組織のマネジメントを司る管理職まで、全員で同じイメージを共有し、思考と社内環境を変えていくことが欠かせません」

スポーツ界では「名選手、名監督にあらず」という言葉がある。プレイヤーとしてのパフォーマンスが優れていても、指導やマネジメントがうまいとは限らない。これはビジネスの場でもそのままあてはまると二ノ丸氏は言う。

「ビジネスの場でもスポーツの場でも、今の時代にふさわしい育成スキルを養うことが必須です。古いものがダメと言いたいのではなく、古いものより、良いものが出てきているのです。つまり、アップデートすることが大切ということです。とはいっても、私は『古き良きもの』は継承すべきだという考えも持っています。残すべきところは残し、変えるべきところは変える。昔ながらの良いエッセンスを今の時代にうまく融合させるべきです」

ラグビーの名門校である奈良県立御所実業高等学校でコーチを務め、10年目になる二ノ丸氏。同校の竹田監督やコーチと共に選手の育成に携わっている。最近のトレンドや選手のフィジカル面での変化などをふまえ、チームの現状(目標・能力など)に合う戦術と、それに沿った練習方法や指導法を工夫しているという。長年にわたり強豪校の座を保ち続けているのは、この辺りにも理由があるのかもしれない。
中学時代からラグビーを始め、社会人になってからもジャパンラグビートップリーグ(現:ジャパンラグビーリーグワン)で活躍した二ノ丸氏。自考動型人材が持つスキルは「状況把握」「優先順位設定」「逆算思考」「計画的実行」の4つに分解できるが、同氏がこれらのスキルを身につけたのもラグビーと両親の教育法を通じてだった。

「ラグビーはその特性上、監督やコーチが試合中に逐一指示を出すことが難しいんです。選手自身が状況を見て判断し、行動することが求められる。これこそまさに自考動型人材です」

加えて、二ノ丸氏の両親も息子が自分で考える「余地」を常に残す教育方針を貫いており、「あとは自分で考えてやってごらん」と、状況に応じて、全てを教えることを意図的にしなかったこともある。 こうして同氏は自考動型人材を体現する存在となり、スポーツの場はもちろん、株式会社クボタにて管理職の経験も積んだ上、2016年に独立。年間120本以上の研修を行っている。

教えすぎてはいけない

「『上司たるもの、全てを教えないといけない』と思い込みがちです。しかし、それは相手の考える機会を奪ってしまっているともいえます。『聞く』だけの学びの定着率はたったの5%という、アメリカ国立訓練研究所の研究もあります。よかれと思っての指導が、部下の成長の妨げになるのは悲しいですよね。一方的な指導よりも『君はどう思う?』といった、相手への質問や確認を少し増やしてみませんかと提案しています」

考える「余地」を残し、意見を言う機会を多く与える。
これが自考動型人材を育てる基本だと二ノ丸氏は説明する。しかし、従来型の組織ではここで大きなハードルが出現する。人は信頼できる相手と、安心できる環境がなければ積極的に意見を述べることができないのである。よって、自考動型人材の育成には「心理的安全性」の構築が大前提なのだ。

「指導育成で最も重要なのは部下との関わり方です。自分が部下に大きな影響を与える存在だということを忘れてはなりません。遠慮なくものを言える関係を部下との間に築けているでしょうか。部下から気軽に話しかけてもらえる存在になれているでしょうか。わかっていてもできていないことは多い。自らを省みることが必要ですね」

ローマは1日にして成らず。心理的安全性や信頼関係を構築するには時間がかかるものだ。

「とはいっても、ビジネスの現場では迅速な対応が必要なタイミングもあります。『この案件は急ぐから指示通りにお願いします』と指示すべきときもある。また、相手の能力に応じて『この人には8割説明したほうがいいけど、この人には2割にしておこう』などの見極めも必要になります」

つまり、相手の特性や能力、時期、状況などによって「管理(ティーチング)」と「育成(コーチング)」を使い分けることが求められる。

「時代は変革期にあります。固定観念に縛られ前例踏襲に陥ると人も組織も成長できません。専門分野を深めるだけでなく、幅を広げていくリスキリングや、知識などを棚卸しするアンラーンの視点を持ちながら、井の中の蛙にならないことが重要。感度を高く保ち、自ら積極的に考動を起こしていくことは上司・部下共に求められることです。立場を問わず全てのビジネスパーソンが自分で自分を管理しながら『自ら正解を創っていく』ことを意識できれば、不測の時代をたくましく生き抜けるでしょう」

 

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