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歌田弘子【第14回】メンバーの話を聞いてみませんか? 〜リーダーに必要な聞くことのスキル〜 – 研修講師リレーコラム
歌田弘子プロフィール
歌田 弘子(うただ ひろこ)
中小企業診断士/研修講師。
キリンビール(株)にて、営業を経験後、営業部門の研修に従事。その後、中小企業診断士として独立。中小企業診断士として活躍しつつ、企業研修講師として、新入社員からマネジメントまでの研修をはじめ、顧客満足向上研修(及び現場指導)、営業基礎研修、女性活躍推進プログラムを得意とし、人材育成のしくみづくり支援、事業計画策定・実行支援といったコンサルティングも行っている。
メンバーの話を聞いてみませんか? 〜リーダーに必要な聞くことのスキル〜
私は中小企業診断士として、中小企業の経営者やこれから創業する方の話を聞く機会が多く、その内容は事業計画や人材育成といった経営相談であったり、資金繰りや創業のための融資相談であったりと、様々です。
独立したての頃は、人生経験豊富な経営者や意欲溢れる創業者を前に気後れしたことが何度もありました。しかしそのうち、相談内容に関わらず、経営者や創業者は「自分の話をまずは聞いてもらいたい」という思いが、多かれ少なかれあることに気づきました。
それからは解決の方向性を探る前提として、悩みはもちろん、相談者の価値観や信念、大切にしているものを、できるかぎり理解するように、話を聞き、質問を重ねるようにしています。そうすることで、相談者は「自分は理解されている」という安心感からか、今後の改善点を率直に指摘しても、感情的な反発無く課題解決に向けて行動されることが多くなりました。
この「相手の話をよく聞き、理解されている安心感を相手に与え、次の行動へスムーズに移行させること」の有効性は、メンバーを持つリーダーの方々にも活かしていただけると思います。特にこれは、入社半年ほどたった新入社員のフォローとして、活用することをおすすめします。というのも、この頃の新入社員は、配属後の緊張感は薄れたものの、「自分の仕事に対する見通しを持てるようになった人」「周囲との落差にすっかり自信をなくしている人」など、個人差が目立ち始め悩みが増える人が多い時期だからです。
人の個性と同様に、人の成長スピード、価値観、信念、大切にしているもの、仕事に対する姿勢も違います。リーダーはその認識を持った上で、メンバーの現状や悩み、仕事に対する思いを、メンバーを理解するために徹底的に聞く…その結果メンバーから「実は…」という言葉が出たら、リーダーの聞く姿勢が及第点だったサインです。なぜならメンバーは「この人は自分の味方だ」と思わないかぎり、打ち明け話はしないからです。
この「実は…」を経営相談の場で聞く時、私は相談者にやっと信頼されたという嬉しい思いの反面、身の引き締まる思いがします。たいてい「実は…」に続く話は、それまでの表面的で画一的な課題ではなく、その企業や相談者にとって根源的な悩みや問題だからです。つまり「実は…」という言葉は、真の課題解決にむけた取り組みが始まる合図でもあるのです。この機会にぜひ、「実は」を聞き出すために、周囲のメンバーの話を一度じっくり聞いてみてください。
(※本記事は、2017年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)