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ノビテクマガジン Vol37 藤﨑忍-武田雅子-片岡恵美

藤﨑忍 武田雅子 片岡恵美 – 人は人にもまれることで成長できる

藤﨑 忍

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【コラムジャンル】

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2024年08月09日

藤﨑忍 武田雅子 片岡恵美 - 人は人にもまれることで成長できる

『男女雇用機会均等法』の施行から40年。現在も女性活躍推進が進められているが、日本では女性管理職はまだまだ少数派だ。そこで今回は、株式会社ドムドムフードサービスの代表取締役社長である藤﨑忍氏、株式会社メンバーズで専務執行役員 CHROを務める武田雅子氏、株式会社ニチレイフーズの常務執行役員である片岡恵美氏に集まっていただいた。普段から親交があるという3人の女性(管理職)は、どのような経緯で今の立場にたどり着き、どのような想いを抱えているのか聞いた。

(※本記事は、2023年5月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

白谷輝英 > 文 佐藤里奈 > 写真 

藤﨑 忍(ふじさき・しのぶ)

>藤﨑 忍

株式会社ドムドムフードサービス 代表取締役社長
1966年生まれ。青山学院女子短期大学卒業後、すぐに結婚して専業主婦に。39歳の時に夫が病に倒れたことで、SHIBUYA109内にあるブティックの店長として初就職。若いスタッフと店を盛り上げ、5年間で年商を倍にした。退職後の2011年、東京・新橋に居酒屋を開店し、翌年には2店舗目のイタリアンバルを出店した。2017年、再生事業を行うレンブラントインベストメントに入社し、ドムドムフードサービスが手掛けるファストフードチェーン店「ドムドムハンバーガー」の商品開発を外部顧問として進めることに。その後、ドムドムフードサービスからヘッドハントされ、新商品開発担当、新店店長、東日本地区スーパーバイザーを経て、2018年8月、株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長に就任。

武田 雅子(たけだ・まさこ)

>武田 雅子

株式会社メンバーズ 専務執行役員 CHRO
1968年生まれ。青山学院女子短期大学を中退後、1989年にクレディセゾンに入社。20代で店舗責任者を経験した後、営業推進部に異動して課長に昇進。さらに、戦略人事部に移って人材開発などを担当した後、2014年から人事担当取締役を務める。2018年にカルビーに転じ、2019年には常務執行役員 CHRO・人事総務本部長に就任。コロナ禍における働き方改革や、自立型人財の育成を主導する。2023年、デジタルビジネス運用支援会社である株式会社メンバーズの専務執行役員 CHROに就任。さらに、複数の企業で社外取締役を務める。厚生労働省と経済産業省が後援する表彰制度「HRアワード2018」で、企業人事部門・個人の部・最優秀賞を受賞。オフタイムには自らの経験を活かし、がんサバイバーの就労支援も行う。

片岡 恵美(かたおか・えみ)

>片岡 恵美

株式会社ニチレイフーズ 常務執行役員
1970年生まれ。横浜市立大学卒業後の1994年、ニチレイに入社。主に営業畑でキャリアを積み2002年マネージャーに昇格。2007~2009年には経済同友会、某商社など社外に出向して見聞を広げた。2010年、ニチレイフーズ研究開発部マーケティンググループに帰任。同年、冷凍和菓子「花乃菓房」のプロジェクトを任され、新たに設立された企画会社の社長に就任した。2013年、ニチレイフーズ広域事業部生協営業部長となる。その後、北海道支社長、首都圏支社長を経て、2020年、執行役員に昇進。同社にとって片岡氏は、初の女性支社長、執行役員だった。現在は、常務執行役員、ハミダス推進部・人事部管掌、ダイバーシティ推進部長を兼任している。

出世など考えなかった若い頃の3人

――各社の経営層として活躍されている皆さんですが、若手の頃から昇進への意欲は強かったのでしょうか?

片岡 私にはそんな気持ち、1ミリもありませんでした(笑)。私がニチレイフーズに入社したのは1994年ですが、当時は社内に女性課長が1人もいない状況だったのです。営業の仕事をしながらも、「頑張ったところで未来など描けないなあ」とよく考えていましたね。若い頃は入社5年以内に寿退社しようと思っていたほどです。

――片岡さんは社内初の女性支社長、女性執行役員だそうですが、若い頃はキャリア志向ではなかったのですね。

片岡 はい。当時は、平均点程度の実績を残せば十分だという意識で働いていました。また、30歳くらいの時に初めて役職への就任を打診されたときも、責任ある仕事をするのは大変そうだと思い、一度は断ったのです。

――でもその後、役職を引き受けたのはなぜでしょうか?

片岡 上司から「役職に就くと家賃手当が増えるぞ」と言われたんです。仕事仲間とお酒を飲んだり、仕事がら食べ歩いたりすることが好きだった私は「家賃手当が増えれば家計は助かるし、もっと美味しいものが食べられるかも?」と考えて。

一同(爆笑)

藤﨑 でも、それくらいの自然体な姿勢で出世を捉えても、全く問題ないですよね。

――藤﨑さんは、短大卒業後すぐ結婚されたのですね。

藤﨑 そうです。子どもの頃からの夢はお嫁さんになることで、キャリアアップなど想像もしていませんでした。結婚後は区議会議員を務めていた夫を専業主婦として支え、まさに予定通りの人生だったんです。ところが、2005年に夫が選挙に落選し、さらに心筋梗塞を患って働けなくなりました。それで生活のために働き口を探し、SHIBUYA109内にあるブティックの店長職を紹介されて人生初の就職をしました。ですから私も、若い頃はキャリアアップなど考えていませんでしたよ。

――武田さんはどうでしたか?

武田 私は片岡さんや藤﨑さんとは違い、結婚しても仕事を続けたいと思っていました。私の頃は、女子学生は四年制大学より短期大学に進む方が就職面で有利だと言われていたこともあり、長く働きたかった私は短大にエスカレーター進学。ところが進学後、短大卒の女性は数年で結婚退職するケースがほとんどだと知りました。そこで短大を中退しフリーターになり、いろいろな職場でアルバイトをして社会経験を積んだのです。

――なぜ、結婚後も働き続けようと思ったのですか?

武田 最大の理由は、仕事が楽しかったからです。例えば飲食店のアルバイトで自分なりに工夫をすると、すぐに結果がでるじゃないですか。それでお客さまや店長から褒められたのが、本当に嬉しかったんです。また、リクルートでのアルバイト経験も衝撃的でした。社員たちが男女関係なく、まるで文化祭前夜のような雰囲気で働いていて、「仕事ってこんなに楽しめるものか」と驚きましたね。

―武田さんはクレディセゾンに入社した後、どんどん昇進していくのはうれしかったですか?

武田 いいえ。私は若い頃から、組織や仕事の進め方について不満があると物怖じせず意見を出していました。それを面白がる上司が何人もいて、私を管理職に抜擢してくれたのです。でも、昇進を望んだわけではありませんよ。特に人事部長の内示を受けたときは、そんな大変な仕事などできないと号泣しました。大粒の涙をこぼす自分の顔が山手線の窓に映っている情景を、今でもよく覚えています(笑)。

その後、役員に打診されたときも悩みましたね。当時社内には15人ほどの男性役員がいましたが、夜は会食、土日はゴルフという生活。そのような働き方は嫌で、最初の役員就任は断りました。

人は人にもまれることで成長できる

片岡恵美 氏、武田雅子 氏、藤﨑忍 氏

目前の仕事に挑戦するうち自然に成長できていた

――出世欲がなかった皆さんですが、どのような流れで管理職から経営層に昇進していったのでしょうか?

武田 私の場合は、目の前の課題に夢中になって取り組んでいるうちに、いつの間にか昇進していたという感じです。

片岡 全く同じです。「仕事を通じて成長したい」などの意識はなく、ひたすら、与えられた役割を果たそうという一心でした。

藤﨑 私も、食べていくために目の前の仕事を頑張っていたら、いつの間にか今の道にたどり着いていましたね。

――藤﨑さんはドムドムフードサービス入社から9カ月後に、社長就任を果たされましたね。

藤﨑 最初から経営者を目指したわけではありません。当時経営していた居酒屋の常連客にドムドムフードサービスの親会社の役員がいて、その方が私の料理を気に入ってくれたのです。そして「ドムドムハンバーガーを再生したいので、商品開発を引き受けてくれないか」と頼まれたのが入社のきっかけでした。

ただ、私が入社した2017年、ドムドムフードサービスは巨額の赤字を出してしまいました。ブティックや居酒屋時代からの仲間たちに「事業再生を手伝う」と宣言し、送別会を開いてもらったのに、このままでは申し訳が立たない。そう考え、私は経営に意見を言おうと思ったのです。ところが当時の私はスーパーバイザーという肩書きで、経営会議に参加できる立場ではありませんでした。そこで私を誘ってくれた方に「意見を言える立場にさせてください」と直談判し、施策や夢を熱く伝え続けたところ、それなら社長になってくれと頼まれ驚いた、という経緯でした。

片岡 「社長になりたい」というより、「やりたいことをするには社長になるしかない」ということだったのですね。

藤﨑 そうなんです。夢中でもがいていたら、いつの間にか社長になっていました。

武田 ビデオゲームでクリアを目指して進んでいたら、いつの間にかコインが貯まっていたみたいなイメージでしょうか(笑)。私も似た状況でしたよ。

――すると皆さん、成長するために努力したというより、目の前の仕事に取り組んだ結果、昇進していたということですね。

藤﨑 そうですね。成長しているかどうかは、他者が判断すること。私には、自分が進化しているかどうか、よく分からないです。ただ、自分が常に変化しているとは思っています。
成長することが常に正しいわけではありません。それは個人だけでなく企業も同じ。売上額や利益額が伸びても、従業員が不幸になったら無意味です。
大切なのは、自分はどうしたいのか、企業はどうあるべきなのかと常に考えること。そして、その実現に向けてチャレンジし続けることです。その結果、他の人から「あなた、成長したね」と評価されるのであれば、それは理想的な姿でしょうね。

武田 変化を求める姿勢は大切です。私がカルビーを辞めた理由の1つも、新たな挑戦をしたいと思ったことでした。

――ただ、世の中には挑戦したいと思っても、なかなか一歩を踏み出せない人もいます。

片岡 そういう人は、「できない言い訳」をやめたらいいと思います。「〜だから、挑戦するのは無理だ」と諦めたりせず、「〜を実現するためにはどうしたらいいのかな?」というスタイルで考えるくせをつける。その方向に沿って頑張るうちに、自分にできることが徐々に増えていくんです。それが成長につながるのかもしれませんね。

管理職にはオープンマインドが不可欠だ

――皆さんの中で、仕事上の転機は何でしたか?

片岡 ダイバーシティを推進するNPO法人「J-Win」に参加した経験は、私にとって大きかったです。そこには仕事を頑張って輝いている女性がたくさんいらっしゃいました。そういった方々と出会ったことで初めて、キャリアアップもいいなと思うようになりました。

藤﨑 私はブティックの店長時代、10~20代の「ギャル店員」と一緒に働いたことで人生観がガラリと変わりました。青学の初等部から青山女子短大に進み、政治家の妻になった私にとって、ギャルたちの世界はまさに異文化。でも、皆性格がよく、一生懸命に働く彼女たちと触れあったことで、私の凝り固まった価値観が柔らかくなったのです。

武田 そう、人の出会いって、人生の大きな転機になりますよね。私も働く中でたくさんの人々と出会い、さまざまなことを学びましたし、がんになったときの主治医や患者会の仲間との出会いも貴重なものでした。

片岡 分かります。そして人と出会うためには、日頃から「人脈の網」を広げておくことが大事ではないでしょうか。いろいろな人とお目にかかり、その方の役に立つ。そうして、何か悩みが生まれたときに相談できる人を一人でも多く増やせば、いざという時に助けてもらえます。

藤﨑 片岡さんが武田さんと出会えたのも、まさに人脈の網を広げていたからですよね。私と武田さんは青山学院中・高等部で先輩後輩の間柄。それである日、片岡さんが「人事の仕事を始めることになったので、どうしよう」っておっしゃって。それで、「人事といえば、まーちゃん(武田氏)がいるよ!」となって飲み会を開催(笑)。

武田 それが今では、3人で温泉旅行をする仲に(笑)。

片岡 巡り合わせって、本当に不思議ですよね。

藤﨑 ただ、私たちが親しくなれたのは運だけじゃなく、オープンマインドだったからだとも思うんですよ。恥ずかしがらず、他の人と積極的にコミュニケーションを取る姿勢があるから、人ともつながりやすくなる。

オープンマインドであれば多くの人とつながり、より大きな成果を生み出せる

オープンマインドであれば多くの人とつながり、より大きな成果を生み出せる

――皆さんは若い頃からオープンマインドだったのですか?

武田 いや、そうではなかったと思います。学生時代の文化祭では、ステージ脇でタイムテーブルを組み立てる「統括」という役割で、リーダー役の斜め後ろに立ち、全体を見ながら戦略を立てるタイプでした。また、フリーター時代には「君は人生を斜めに見ているね」と指摘されたこともあります。

藤﨑 私も学生時代は、そんなにオープンマインドではなかったですよ。部活動では全く話をしたことがない後輩もいて、怖い先輩だったかも(笑)。

――そういう姿勢が変わっていったのはなぜでしょうか?

武田 私の場合、20代前半にした体験が大きかったですね。クレディセゾンの店長だった私は、ある日かなりの高熱を出してしまいました。でも出勤し、部下には熱のことを隠して仕事をしていたところ、一番若い部下から「武田さん、機嫌悪いんですか?」と聞かれてしまったんです。その時、「部下は全員、私のことをしっかり見ているんだなあ」と気付かされました。同時に、どうせ隠してもムダなんだから全部さらけ出してしまえと開き直ることができたのです。

すべてをさらけ出せば、部下の力を存分に引き出すことが可能

すべてをさらけ出せば、部下の力を存分に引き出すことが可能

管理職になれば新たな風景が見られる

――今、自分らしさを発揮して組織を引っ張る「オーセンティックリーダー」が注目されています。武田さんは積極的な自己開示によってリーダーシップを発揮しているのですね。

武田 プレイヤーとしての私は、それほど優秀ではないのかもしれません。でも、部下と裏表なく話すことで円滑なコミュニケーションを図り、皆の力を最大限に借りているんです。私のモットーは「心の裸族」(笑)。隠し事をせずどんな人も受け入れることが、大きな成果を出す秘訣ではないかと思っています。

片岡 心の裸族、いいですね! 私も40歳のとき、立場に関わらず正直に伝えること、隠し事をしないことが大切だと気付きました。当時は新しい和菓子を企画する会社の社長に就任したばかりで、分からないことだらけのなか、年上の部下と仕事をしなければなりませんでした。そこで、自分より経験豊富で、自分にないスキルを持っている部下に対し謙虚に教えをこえば、組織はうまく回ると学べたのです。それで、以前よりも格段にオープンマインドになれました。

武田 知らないことがあったり間違ったりしたら、すぐに「ごめんなさい」「教えてください」って言えたらいいんですよね。その方が、自分も部下も楽になれます。

藤﨑 でも、世の中には「ごめんなさい」が言えない人が多いですよね。特に男性のリーダーに目立つ気がします。でも、リーダーが隠し事をすると、組織全体にミスを隠す雰囲気が出てしまう。すると企業全体にチャレンジ精神が失われてしまうのです。

――最後に、管理職への昇進をためらっている女性に対し、メッセージをください。

藤﨑 若い女性の皆さんには、興味のあることを見つけ、それをとことん面白がってほしいですね。仕事をしていると厳しい場面にもぶつかりますが、その仕事が好きで楽しめるのであれば、乗り越えられますから。
武田さんと片岡さんは若い頃から自然体の姿勢を崩さず、管理職として活躍してきました。でも、お二人は特異な存在ではないんです。特にこれからは、女性でも肩肘張らずに管理職ができる時代になると思いますよ。ぜひ頑張ってください。

片岡 管理職になると、自分で決められることが増えます。すると仕事はグッと楽しくなりますし、人から感謝される機会も多くなります。

また、管理職として見ることができる景色は一般社員の時とは違っていました。昇進という階段を上るのはしんどいこともありますが、新たな景色が見えると思うとワクワクして、「勇気をもって、もう1段だけ上ってみようかな」と思えるんです。私自身もそういう経験をしましたし、当社の女性社員にも、違った景色を見てワクワクする経験をしてもらえたらと考えています。

実現するためにどうすべきか考える習慣が成長をもたらす

実現するためにどうすべきか考える習慣が成長をもたらす

武田 私は仕事を、「未来をつくる作業」だと捉えています。自社の若い社員や、将来の社会を支える子どもたちのために仕事を通じてどう貢献できるかと考え、努力することがやりがいです。あなたも管理職になれば、もっと貢献度の高い仕事ができるはず。そうすれば、人生をより楽しめるはずですよ。
そして、人は人の中でしか成長できないと私は思うんです。昇進してより多くの人にもまれることになれば、その分、自分自身を磨くことができます。プレッシャーを恐れず、挑戦し続けてほしいですね。

 

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