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麻生川静男【第2回】安易な学び方では本質は捉えられない – 奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 – [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
【コラムジャンル】
リベラルアーツ , 奴隷 , 学び方 , 安易 , 技術 , 捉えられない , 教養 , 本質 , 特集 , 生きた , 生きる , 第2回 , 自由人 , 身につける , 麻生川静男
2018年12月24日
奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 - [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
「好奇心を押しつぶしてはリベラルアーツに大成できません」
「リベラルアーツ」とは何か? その理解は人によって大きなばらつきがある。そこで、リベラルアーツ研究の第一人者である麻生川静男氏に、その歴史や中身、現代人にとっての意義、そして身につけ方について伺った。
白谷輝英 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2018年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
安易な学び方では本質は捉えられない
リベラルアーツは学問ではなく技術。だから、自らに腹落ちするまで繰り返すことがなにより大切だ。
リベラルアーツは、現代に生きるわれわれにとっても重要な技術です。ロジックやレトリックを駆使して上司・同僚・部下を巻き込んだり、顧客や取引先を説得したりできれば、ビジネスに大きなプラスをもたらすでしょう。
また、変化のスピードが加速し、グローバル化が進む現代では、「自由精神」の価値も高まっています。本来のリベラルの反対語は「不自由」ではなく「奴隷的」です。これは自分で考えることをせず、主人の命令に盲目的に従う態度を指します。「人にこう言われたから」「今までこうしていたから」といった信念のない奴隷的態度では自由人と言えません。また、聞きかじりの耳学問だけで腹落ちしていない知識しか持たないようでは、他者から尊敬されることもありえません。
リベラルアーツを身につけ難い原因
ただし現代人にとって、本当のリベラルアーツを身につけるのは難しいものです。私はその原因として「チャート式脳」と「センター試験症候群」の2つがあると考えます。
「チャート式脳」とは、覚えるべき項目が強調されたり図式(チャート)化されたりしている学習参考書を使うことで安直に作られた脳の仕組みのことです。この種の参考書を使えば、確かに労することなく重要ポイントが分かり、効率よく知識を仕入れられますが、多くの情報の中から本質を抽出する能力は、絶対に磨けません。
もう1つの「センター試験症候群」とは、「大学入試センター試験」スタイルの考え方に毒された状態を指します。ビジネスの現場では、正解は1つだけではありません。時には、セカンドベスト、サードベストという道を選ぶことも必要です。ところがセンター入試は、あらかじめ用意された選択肢の中から正答を一つだけ選ぶ形式で、世の中の実態と合っていないのです。また、センター入試では、素早く正答を出す効率性が求められますから、勉強している途中で「これは面白そうだ」と思っても脱線することは許されません。好奇心を押しつぶしてはリベラルアーツに大成できません。
現代人、特に、受験戦争を勝ち抜いたエリート層の中には、チャート式脳とセンター試験症候群に陥った人がたくさんいます。こうした人々に対してリベラルアーツに関する講演を行う機会もあるのですが、残念ながら反応はいつも今ひとつですね。
近日公開予定
講師紹介
麻生川 静男(あそがわ・しずお)
リベラルアーツ研究家・元京都大学 准教授・工学博士
京都大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修了、徳島大学工学研究科後期博士課程修了。京都大学大学院在学中に、サンケイスカラシップ奨学生としてドイツ・ミュンヘン工科大学に留学。その際に強烈なカルチャーショックを受け、独力でリベラルアーツに取り組みはじめる。住友重機械工業在職中、アメリカ・カーネギーメロン大学に留学し、同大学工学研究科を修了。その後、カーネギーメロン大学日本校プログラムディレクター、京都大学准教授を経て、「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立、運営していた。新著『資治通鑑に学ぶリーダー論~人と組織を動かすための35の逸話』(河出書房新社)など、著書多数。
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「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を
設立、運営していた。リベラルアーツ研究家、元京都大学准教授、工学博士
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