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新将命【第1回】経営において、人事部が最重要の部署となるのは必然 – 「リーダー人財育成」答えは原理原則の中にある
経営において、人事部が最重要の部署となるのは必然
「リーダー育成」で悩める教育担当者に進むべき道を示唆するメンター・インタビュー。著作の累計部数、約30万部。「リーダーの教科書」、「経営の教科書」など、教科書シリーズの著者として知られる新 将命。彼の著書をバイブルとする経営者、人事担当者、管理職は多い。新がもっとも精力的に取り組んでいるのが「リーダー人財育成」だ。その活動の核心に迫る。
(※本記事は、2013年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。記事中の年齢、肩書きなどは2013年取材時のものです。)
「人事部」は企業経営の要である
誰もが知る「経営のプロフェッショナル」の一人、新 将命(あたらし まさみ)。 新は、約半世紀に渡ってグローバル・カンパニーの経営に深く携わってきた。シェル石油(現 昭和シェル石油)、日本コカ・コーラでの重職を経て、医療関連製品やベビー製品を扱うジョンソン・エンド・ジョンソンの社長に就任。弱冠45歳のときのことである。
これを4期務めた後、電気シェーバーのリーディングカンパニーであるフィリップス(副社長)、グリーティングカードの世界的ブランドであるホールマーク(社長)などで経営の中核を担った。また、2003年から9年に渡って住友商事のアドバイザリー・ボード・メンバーを務めてもいる。
はじめに、この豊富な経営経験の中で「人事部」の存在をどう位置づけてきたのかについて聞いた。 「どの会社にも、社内には複数の部署がある。経営者の立場でいえば、表向きにはそのすべてが等しく大事と言うしかない。しかし、無理にでも優先順位をつけなさいと言われたら、『人事部がもっとも大事な部署』というのが本音です。よくいわれるように、会社は人からはじまる。人事部は人づくりの中心を担っているわけですから、経営において最重要の部署となるのは必然でしょう。最近は人事部の重要性がますます高まっている。人事部、とくに社員教育が機能していない会社は、この先、間違いなく衰退していきます」
人事部の重要性が高まっている背景には、グローバル化・IT化・多様化によって、変化のサイクルが早まっていることが挙げられるという。ひと昔前までの国内企業は、先輩や上司の成功体験を後に続く社員がなぞっていれば成長できた。現代では、過去と同じことを繰り返す企業は滅びてしまう。
「どこを変えずに、どこを変えるべきか」という視点が、経営層のみならずリーダーに求められる時代。必然的に、「変化への対応力のあるリーダー」を輩出することが、人事部の使命になる。
リーダー育成は 「正しい人材育成」からはじまる
リーダー育成を考える前に「人材育成とは何か、人材育成の原理原則とは何か」を定義しなさい、と新は言う。リーダー育成だけに目を向けても、成果は出せない。正しい人材育成の基盤があり、そこに正しいリーダー育成の手法が加わったとき、はじめて成果が出せると説く。
「私が人事部の責任者に『御社が求める理想の人材とは、具体的にどのようなものですか?』という質問を投げかけると、たいていの場合、『モーティべーションとスキルが高い人』、『コミュニケーション能力が高い人』といった答えが返ってきます。たしかにこれらは、人材育成にとって大切な要素ですが、その一方で、人材育成の側面でしかない。すべての企業に共通する理想の人材とは、理念・目標・戦略に沿って積極的な活動を展開して結果を出せる人。これを軸として人材育成をすべきです」
この理想の人材を実現する条件は、① ノレッジ(知識)、②スキル(技術力・仕事力)、③マインド(人間力)の3つ。これらが揃うと、「社員品質が高い」ということになる。これによって 顧客満足度が高まり、勝ち組み企業になることができる。
先に挙げた「理想の人材の条件」の中で、新がとくに重要視するのが③マインド(人間力)だ。
「マインドというのは漠然とした言葉です。具体的にビジネスパーソンのマインドを構成している要素は『信頼性』。では、周囲から信頼される人がどのような特性を持っているのかといえば、『約束を守る』、『言行一致』、『有言実行』などになる。このような人物がノレッジやスキルを持っていれば、周囲から自然に尊敬される。そして、彼を管理職のポジションに置けば、部下のモーティべーションが劇的に高められます」
つまり、人材育成の原理原則を遵守することは、リーダー育成にもつながっている、
というわけだ。