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中村義裕【第5回】知らない昭和(下) – 知ってるつもり?日本の伝統と文化~真の国際化は、自国の伝統と文化を知ることから始まる~
【コラムジャンル】
リベラルアーツ , 下 , 中村義裕 , 伝統 , 国際化 , 始まる , 文化 , 日本 , 昭和 , 演劇評論家 , 知ってるつもり , 知らない昭和 , 知る , 第5回 , 終戦記念日 , 自国 , 連載
2015年05月01日
知ってるつもり?日本の伝統と文化~真の国際化は、自国の伝統と文化を知ることから始まる~
今年(2015年)は70回目の「終戦記念日」である。ということは、戦争を知る世代がどれほど少なくなっているかは、言うまでもない。現在の我々にも、さまざまな意味での「戦争」はあるが、当然ながら意義も行為も違う。
グローバル人材育成にかかせない、リベラルアーツ。「知ってるつもり?日本の伝統と文化」と題し、中村義裕氏に日本の伝統と文化について語っていただくコラムです。
地球の規模がどんどん進み、国際化が激しくなる中、私の専門分野の「演劇・芸能」を40年近く勉強してきたが、それ意外の「日本」のことを、あまりに知らないことに気づいた。世界と対等に付き合うためには、母国の歴史の上にすっくと立ち、「日本はどんな国なのか」を我々が知らなくては、「真の国際(グローバル)化」は始まらない。
知らない昭和(下)
今年(2015年)は70回目の「終戦記念日」である。
ということは、戦争を知る世代がどれほど少なくなっているかは、言うまでもない。
現在の我々にも、さまざまな意味での「戦争」はあるが、当然ながら意義も行為も違う。
昭和20年8月15日、「ポツダム宣言」を受諾して日本は敗戦した。その2週間ほど前の昭和天皇の言葉の中に、「万一の場合は自分がお守りをして運命を共にするほかない」とある。折しも、「本土決戦」が叫ばれていた時期のことだ。この言葉が何を意味するか、おわかりだろうか。
これは、日本における皇位継承の証である『三種の神器』についての気持ちを昭和天皇が述べたものだ。当時、『三種の神器』は三重県の伊勢神宮と愛知県の熱田神宮に分けて保管されていた。しかし、米軍が伊勢湾を攻めてしまえば、右には熱田神宮、左には伊勢神宮がある。『三種の神器』が一つでも欠ける、ということは、皇位継承が不可能になるとも言える事態に繋がる。それを意識した発言なのだ。
我々には想像もつかない思考だが、俗にいう「万世一系」を保つために、昭和天皇は自らの命を引き換えにする覚悟を持っていた、とも読める。遥か昔の戦国時代のエピソードを読んでいるような気分になるが、これがわずか70年前に実際に日本で起きた出来事なのだ。
また、敗戦までの「大日本帝国憲法」のもとでは、日本国民は、天皇の加護の元に生きる「赤子」(せきし。『赤ん坊』『幼子』の意味)だった。ポツダム宣言受託の理由の一つに、「これ以上新型爆弾などの攻撃を受けたのでは、赤子を守り通すことができない」ともある。
私は、晩年に近い年代からの昭和天皇しか知らないが、若い頃は血気盛んな性格の持ち主だったと記録にある。64年という長い一つの時代の「象徴」として、天皇というものがその時々に、どんな役割を果たして来たのか。それを知らぬままに、無自覚に批判をする前に、まずはその事跡を辿ることも必要だろう。
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