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中村義裕【第6回】世界三大肖像画家が日本にいた – 知ってるつもり?日本の伝統と文化~真の国際化は、自国の伝統と文化を知ることから始まる~
【コラムジャンル】
リベラルアーツ , 三大 , 世界 , 中村義裕 , 伝統 , 国際化 , 始まる , 文化 , 日本 , 歴史 , 演劇評論家 , 画家 , 知ってるつもり , 知る , 第6回 , 肖像 , 自国 , 連載
2015年06月11日
知ってるつもり?日本の伝統と文化~真の国際化は、自国の伝統と文化を知ることから始まる~
レンブラント(1606~1669)、ベラスケス(1599~1660)と並び称され、「世界の三大肖像画家」とまで言われた画家が日本にいたのをご存知だろうか。その名を…
グローバル人材育成にかかせない、リベラルアーツ。「知ってるつもり?日本の伝統と文化」と題し、中村義裕氏に日本の伝統と文化について語っていただくコラムです。
地球の規模がどんどん進み、国際化が激しくなる中、私の専門分野の「演劇・芸能」を40年近く勉強してきたが、それ意外の「日本」のことを、あまりに知らないことに気づいた。世界と対等に付き合うためには、母国の歴史の上にすっくと立ち、「日本はどんな国なのか」を我々が知らなくては、「真の国際(グローバル)化」は始まらない。
世界三大肖像画家が日本にいた
レンブラント(1606~1669)、ベラスケス(1599~1660)と並び称され、「世界の三大肖像画家」とまで言われた画家が日本にいたのをご存知だろうか。
その名を、「東洲斎写楽」という。江戸時代中期にあたる寛政6年(1794年)5月から翌年の3月にかけてのわずか10か月の間に、145点以上の作品を描き、忽然と消えた浮世絵師だ。この謎の人物が誰であるかは、専門の美術研究家は言うに及ばず、作家、学者などが多くの説を展開しては話題を呼んだことでも知られる。
同じ絵師の初代歌川豊国、葛飾北斎、喜多川歌麿、司馬江漢、谷文晁、円山応挙をはじめ、戯作者の山東京伝、十返舎一九など多くの人物の名があげられ、「写楽探し」は今も続いている。
実は、「東洲斎写楽」が発見されたのは意外に新しく、1910年にドイツ人の研究者・クルトによって『Sharaku』という本が刊行されてからのことだ。明治維新以降、日本の美術品、特に陶磁器などが海外へ輸出されるようになり、それを保護するために、丈夫な和紙に刷られた浮世絵が梱包や緩衝材に使われた。多くの浮世絵がこうして海を渡り、外国人の眼によってその魅力が再評価されたのだ。
日本の浮世絵が西洋美術に与えた例は他にもあり、歌川広重の版画がゴッホなどに大きな影響を及ぼしたエピソードは有名だ。しかし、200枚も刷る版画が、アメリカのオークションで1枚5,000万円もの高額で落札されるほどの人気を誇った写楽は、日本を代表する浮世絵師であることに間違いはない。
世代によっては記念切手などでもお馴染みの、表情を極端にデフォルメした画法は、多くの人にショックをもたらしただろう。今から200年以上も前に、こうした画家が嵐のように江戸を風靡し、忽然と消えた。その姿は何ともミステリアスで、多くの人が「写楽の正体」を知りたがるのだろう。
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