働き方・生き方
HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
イノベーションを推進する合意形成と決断の力 at ”大槌” とは
“判断”ではなく“決断”する力を。 意識が変わり覚悟が決まれば、行動が変わる。 〜おらが大槌夢広場 代表理事 臼沢和行さん×ノビテク社長 大林〜
東日本大震災で甚大な津波被害を受けた岩手県上閉伊郡、大槌町。この地でしか体験できないワークショップを受けるため、今、多くの企業や団体が訪れています。株式会社ノビテクとのプロジェクトが立ち上がった経緯、そしてワークショップの内容について、おらが大槌夢広場代表理事でファシリテーターでもある臼沢和行さんにノビテクの社長・大林がインタビューしました。
臼沢和行
一般社団法人おらが大槌夢広場 代表理事。
大槌出身。高校卒業後、静岡の建設会社に勤務。震災で人生観が一変し、
現在のおらが大槌夢広場の立ち上げメンバーとして関わり、
ツーリズム事業を担当。
2014年1月より代表理事に就任。
一般社団法人おらが大槌夢広場>>
2011年11月設立。町民・専門家を含めた幅広い知識と行動力を結集し、町づくりに関する事業を行い、観光業・商工業・農水産業の発展と、それらの担い手である大槌町民の生活再建に寄与することを目的に設立。外部への情報発信強化、地場産業やツーリズムの活性化、町民の起業独立支援等を行う。
大林伸安
株式会社ノビテク代表取締役。
1964年生まれ。証券会社、経営コンサルタント会社を経て2005年に
株式会社ノビテク設立。日本一の規模の研修実施プロジェクトを
講師側総責任者としてマネジメントし、完遂させる。
研修講師としても大手企業を中心に100社以上、経営幹部から新入社員
まで、何万人もの受講実績がある。“やれる気請負人”として教育や
コミュニケーションの促進により、 組織や人材のやれる気を引き出す。
( 文>村上杏菜 写真>ノビテクマガジン編集部 )
出会いで人は変わる
大林:
臼沢さんが代表理事を務める一般社団法人『おらが大槌夢広場』では地域に根ざした幅広い活動を行っていらっしゃいます。団体はどのような経緯で発足したのですか?
臼沢:
大槌は東日本大震災で行政マヒした唯一の地でした。行政がダメなら民間が立ち上がるしかないと、縁のある企業のお偉いさん方が集まり、ボランティアの方々のために食堂を作ったのが団体の始まりです。その活動を行う中で、大槌のことを知りたいと訪れてくれる人たちを受け入れる母体が必要ということで、担当になったのが私でした。
大林:
そこから臼沢さんが担当している研修・視察ツアー、町内語り部ガイドなどのツーリズム事業はどのような流れで……?
臼沢:
最初のきっかけはインドネシアのアチェ州の被災遺児を支援する知り合いに依頼され、子どもたちを受け入れたことです。スマトラ沖地震・津波で自分たちも辛い思いをしてきたはずなのに、「生きている人たちが頑張れば町はきっと元に戻る」とキラキラした目で話す様子に、希望の光を見ました。この取り組みがメディアで紹介され、視察やボランティアツアーのコーディネートが始まったんです。
大林:
まずは大槌を知ってもらう、見てもらう、感じてもらうところからスタートしたんですね。
臼沢:
はい。ただ、同じようなことは他の地域もやっていましたし、単なる視察やボランティアツアーではいつか人の訪れは途絶えるとも思っていました。アチェの子どもたちとの交流で私たちの心が救われた経験を通じて「多くの人と触れ合うことで人は変わり前に進むことができる」と実感していたので、大槌への人の流れを止めたくなかった。そこで、震災とその後の活動経験で得たリーダーシップやコミュニケーションなどの要素を、ツアープログラムの中に入れてみたんです。
リーダーに一番必要なのは、スキルではなく意識のあり方
大林:
臼沢さん自身が震災やその後の活動を通じて学んだり身につけたりした経験をプログラムに反映したと。ちなみに、リーダーになる上で必要な要素は何だと考えていらっしゃいますか?
臼沢:
以前勤めていた建設会社での現場監督経験もふまえて私が思うのは、仲間の弱いところを知ってあげること、そして仲間のために自分が頭を下げる覚悟ですね。スキルよりも意識の在り方でしょうね。
大林:
リーダーシップの定義として、「リーダーシップはリーダーとフォロワーの関係性の中に存在する」と言われています。私も研修講師、社長として、“語る前に見せる”ことがリーダーには必要だと思っています。
臼沢:
そもそも組織とそこに属するメンバーがいなければリーダーも存在しませんからね。
大林:
イノベーションを起こせるような、革新的なリーダーになれる場として、ノビテクの教育会社としての知見を入れた臼沢さんのプログラムを紹介していきたいと思っています。それが可能なのは、やはり大槌という場の力あればこそですよね。
臼沢:
受講者にとって一番の魅力は“疑似体験”ができることでしょうね。資料や物ではなく、実際の場に行ってその場の人間に“なりきる”ことができる。体で学ぶというか……。
被災地は戦後の日本と通じるものがあると思うんです。何もなくなったからこそ気付けること、学べることがある。この体験ができるのは被災地しかないと思いますね。
ワークショップを通じて、幸せと感じられる人を増やしたい
大林:
そのような疑似体験を通じて修得できるのは、先ほどリーダーに必要とおっしゃっていた“覚悟”の力ですか?
臼沢:
決断・覚悟の力は大きく推している要素です。それに加えて、同じくらい大事だと私が考えているのは“聞く”力。
ここで言う“聞く”とは、相手の立場に立って物を考えることです。相手の立場に立ってこそ、それまで気づかなかったこと、見えなかったものが見えてくると思うんです。自分の考えばかり発信するんじゃなくて、より多くの人の言葉や価値観に触れた上で答えを出すことがリーダーには求められているんじゃないかなと思います。
大林:
なるほど。臼沢さんはきっといいリーダーなんでしょうね。
臼沢:
いや〜、今もですけど学生時代はただのヤンチャ小僧でしたよ(笑)。夢や目標を持ったこともなかったし、そもそも今のような活動をするなんて思ってもみませんでしたしね。
大林:
今の夢や目標って?
臼沢:
より多くの人たちを大槌に呼びこむことですね。田舎は閉鎖的な側面もありますが、井の中の蛙なりの良い所がたくさんあると思うんです。だから私はその井の中にたくさんの人を呼び込みたい。そうすることで色んな人の価値と可能性を導き出してあげられたらなと。
私自身がワークショップを通じて多くの人と出会い、学びを得て、「生きていてよかった」「こんな素敵な仕事はない」と心から幸せを感じられているんです。そんな風に思える人を増やしていけたらいいですね。
価値観が“ゆらぐ”場、大槌
大林:
震災という辛く悲しい経験を経たけれども、今、新たな夢と目標を得られているのは素晴らしいことですよね。だからこそ、おらが大槌夢広場さんが提供するプログラムは“本物”なんだろうと思います。
たくさんの人に会う、ということがおらが大槌夢広場さんのプログラムのキーかと思いますが、実は私も「人は人によって磨かれる」という言葉を師匠からもらい、座右の銘にしているんですよ。
臼沢:
人との出会いは成長のキーだと思います。私のプログラムでは、ワークショップを行っている様子を地元の高校生にも見てもらうんです。研修に参加する受講生に学びを得てほしいのはもちろんですが、その人たちの考えや価値観に、町の人にも触れてほしくて。受講生と大槌町の人間の両方がお互いに得られるものがある場にできれば、たくさんの可能性が生まれると思います。
大林:
実際私も臼沢さんのワークショップを体験して、すごくインパクトを受けました。人が成長したり変わったりする時って、それまでの自分の価値観が“ゆらぐ”時だと思うんですけど、それを促すものがあの場にはありましたね。自分にとって本当に大切なものを見つける感覚というか……。
臼沢:
ありがとうございます。
大林:
近江商人の商売の心得に「三方良し」(※)というものがあるんですが、臼沢さんの研修はまさにそう。受講生にも学びがあり、町の人にも気付きがあり、そのような場を作ることで社会経済にも利益が生まれる。誰にとっても良いことづくめのこのプログラムを、これからどんどん広めていきたいなと思います。一緒に頑張りましょう!
※「三方良し」
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるという近江商人の教え。
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