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萩原智子【第1回】日記を読み返すことで自らの頑張りをほめた – チームの結束力が、個のパワーを引き出す!
【コラムジャンル】
スポーツ , チーム , ノビテクマガジンVol.12 , パワー , ブランク , ほめる , モチベーション , 五輪 , 個 , 再掲 , 引き出す , 日記 , 水泳 , 競泳 , 第1回 , 結束力 , 自ら , 萩原智子 , 読み返す , 連載 , 頑張り
2016年09月06日
チームの結束力が、個のパワーを引き出す!
苦しい時に自分を ほめてあげられるのは 自分だけです。20歳を過ぎた萩原氏の競技生活は、まさに順風満帆に見えた。
トップスイマーとして活躍していた萩原智子氏は、24歳で引退した。しかし、5年間のブランクを経て29歳で現役復帰し、日本記録を樹立。どんな感情が萩原氏を動かしたのか。また、萩原氏が身をもって感じ取った「水泳日本代表チームの結束力」は、どのように生まれ、どんな効果をもたらしたのだろうか。
白谷輝央≫文 佐々木信行≫写真
※この記事は、2016年4月1日発行のノビテクマガジン発行時に収録した内容の再掲です。記事中の年齢、肩書きなどは2016年取材時のものです。
日記を読み返すことで自らの頑張りをほめた
– 苦しい時に自分を ほめてあげられるのは 自分だけです。 –
2000年のシドニー五輪で2種目に入賞。翌年行われた世界選手権では、800mフリーリレーで銅メダルを獲得した。20歳を過ぎた萩原氏の競技生活は、まさに順風満帆に見えた。ところがその胸の内では、モチベーションの低下に悩んでいたという。
「十代の頃は、五輪に出たいという思いでいっぱいでした。ところがシドニー後、『私は何のために泳いでいるのだろう?』という疑問を感じるようになったのです」
当時のタイムそのものは、決して悪くなかった。だが、気持ちは高まらないまま。
「五輪が終わって燃え尽きた私は、義務感だけで泳ぐ毎日でした。無理やり練習をこなした結果、私は腰痛や体調不良で入院してしまったのです」
萩原氏は1年間、競技から離れることを決意。そして2つの取り組みを始めた。1つ目は「原点回帰」だ。
「2003年夏は故郷の山梨に戻り、18歳以下のジュニア選手と合宿をしました。ぼろぼろの屋外プールは、風が吹くと凄い波(笑)。でも、そんな中でジュニア選手たちが楽しそうに練習する姿を見て、泳ぐだけで楽しめていた昔の自分を思い出しました」
2つ目の取り組みは、自分を褒めることだった。とりわけスランプに陥った時ほど、自分の頑張りを認めることが大切だと萩原氏は語る。
「記録が伸びる時期は、皆が褒めてくれます。でも成績が落ちこんだ時、褒めてくれるのは自分だけです」
萩原氏は小学生の頃から毎日、その日できなかったことや次の日にチャレンジしたい課題を日記にメモし、折に触れ読み返したという。
「日記を読むと、『1年前に比べ、こんなに成長できている!』と確認できます。そうすれば、過去の自分に励ましてもらえるのです。やり遂げたことや課題をこまめに記録し、成長を実感するための物差しを作ることも大切です」
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シドニー五輪競泳日本代表の経験から学んだ講演テーマが人気です。シドニーオリンピック競泳日本代表/日本水泳連盟理事/
2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会アスリート委員
萩原 智子 講師のプロフィールはこちら
ゼロからの挑戦が前向きな情熱の源に
2004年、萩原氏はアテネ五輪を目指して日本選手権に出場。しかし代表入りは果たせず、大会終了後に引退を発表した。その後はテレビ出演や水泳指導などに打ち込み、自ら泳ぐ機会は減った。
現役復帰を決めたのは2008年のこと。取材で訪れた北京五輪の開会式のスタジアムで、五輪マークが光って浮き上がる光景を目の当たりにした瞬間、萩原氏の目から涙があふれてきた。自分でもその瞬間の感情を表す言葉は見つからなかったが、涙は止まることがなかった。そして、もう一度競技に戻りたいと思った。
「よく『やり残したことがあったからですか?』と聞かれますが、そうではないようです。代表入りを逃したアテネ五輪は、スッキリした気持ちでテレビ観戦していたほどです。それなのに、どうして復帰したいと思ったのか ……。正直、私にも分かりません(笑)。多分、あの開会式がよほど衝撃的だったんでしょうね」
5年間のブランクは大きかった。筋肉を戻すため、最初は水中ウォーキングから始めたという。泳げる身体ができるまで、丸1年かかった。
当初、萩原氏はビデオを取り寄せ、昔の泳ぎ方を確認しようとした。ところが、指導者から強硬に反対された。
「昔の自分を取り戻そうと思ったら、練習は苦しくなってしまいます。でも、『28歳の萩原智子として、ゼロから泳ぎを作ればいい』と言われ、気持ちがものすごく楽になりました。新たなことに挑戦しようという意識を持ったことで、泳ぐことが本当に楽しくなりましたね」
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