働き方・生き方
HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
【第5回】ソーセージ、ハム作りの職人をめざしている阪本さんの場合 – ドイツで育むグローバル人材!~アメリカ・イギリスでもない環境を選ぶ日本人~
【コラムジャンル】
グローバル , ソーセージ , ドイツ , ハム , マイスター制度 , 人材 , 人材育成 , 就職 , 日本人 , 松居温子 , 株式会社ダヴィンチインターナショナル , 環境 , 第5回 , 職人 , 育む , 連載 , 選ぶ , 高野哲雄
2015年07月31日
保育園での仕事から一転し、職人(ゲゼレ)をめざしている坂本さんに、ドイツでの生活、学び、実感をお話しいただきました。
グローバル人材育成の必要性が叫ばれる昨今、たくさんの書籍・雑誌が出版され、多くの研修・セミナー・講演会が開催されています。
ご多忙にもれず、このコラムもグローバル人材をテーマにしたものですが、イギリス、スイスでもない、米国のバーバードビジネススクールでもなく、世界各国が注目をしているドイツの教育制度を通して、実際にドイツで “ゲゼレ” “マイスター” を目指している日本人の活動をお伝えしながら、グローバルな視点に立った人材育成・教育についてお伝えできればと考えおります。
ソーセージ、ハム作りの職人(ゲゼレ)をめざしている阪本さんの場合
もともと保育園で仕事をしていた阪本さん、あるきっかけを転機にドイツでのチャレンジを目指し、人に喜んでもらう仕事がしたい、安全で美味しいハムやソーセージをつくって多くの人に食べてもらい人々を健康であり幸せにしたいという思いを胸に、単身ドイツで奮闘中。
Q:日本では、どんなお仕事をされていたのですか。ドイツで学ぼうと思ったきっかけもお聞かせください。
A:日本の保育園で働いていた経験がドイツへ行くきっかけになりました。主に幼児、学童保育のクラスで、野菜作り、キャンプ、バザーなど色々な事にチャレンジ、経験をさせていただきました。その中の一つに、子ども達が年間を通じて園の畑で、畑を耕し、苗を植えて、草むしりや水やりをし、できた季節の野菜をできるだけ自分達で調理して食べるという取り組みを経験しました。(春はジャガイモ、夏はスイカ、秋はサツマイモを焼き芋にして、冬は大根をおでんにし、玉ねぎはホイル焼き、など)
子ども達と一緒に過ごして感じたのは、ありきたりかもしれませんが、食べ物のおいしさと楽しさ、そして食べることの大切さを伝えることです。また、たくさんの研修、勉強会に行かせていただきました。その時の研修で、ドイツの保育所・児童館・幼稚園に行き、シュタイナー教育(※)をしている幼稚園を視察しドイツの教育制度(Ausbildung Dualsystem)を知ったことが大きいです。
子どもたちの人格形成のための物・空間・人の環境への理念を一貫して大切にしているように感じました。また、ドイツの教育制度で職人を育てるという教育制度がしっかりと確立していることを知り興味がわきました。
ドイツの哲学者・教育学者ルドルフ=シュタイナーが提唱・実践した教育。シュタイナーが1919年にシュトゥットガルトに開いた自由学校に始まる。1920年代の自由主義教育の流れを受けた、子供の自主性を尊重した教育。シュタイナー教育では、人間の成長を7年おきに大別してとらえる。生まれてから成人するまでの21年間のうちに世界から「真・善・美」を全身を通じて理解し、その世界と自分との一体感を見いだし、世界の中で自由で自立的に生きることのできる人格の育成を目指す。
Q:ドイツでは、どんな職・技術を身につけたいと考えていますか?
A:今、私は、Fleischerei(=肉屋)を目指しています。ドイツの肉屋はソーセージ、ハムその他いろいろな種類の加工食品を作っています。肉の解体、ドイツの肉料理、衛星、管理、スパイス、Wurst,Schinken(ソーセージ、ハム)などの食肉加工食品作りの技術と知識を学びたいと思っています。
なぜ、肉かというと自分が無類の肉好きということもあるのですが、ドイツの多種で美味しWurst,Schinken(ソーセージ、ハム)を子ども達と作って食べられたら楽しいだろうなと思い描いています。自分自身、食い意地がはっているのかもしれませんが、おいしいものを食べると『おいしかったなぁ』と精神的な満足が味わえますよね。
Q:実際にドイツに飛び込んでみて、最初に感じたことはなんですか?
A:ビールがおいしいです。量が多いので、飲みすぎてお腹がパンパンになりました。また、週二日休みがある事、祝日が多い事、年一回有給を使って長期休暇を取る事から、休みを楽しんでいる人が多いと感じました。職場の同僚を見ていてもキャンプをしたり、旅行をしたりと家族の時間を大切にしています。
Q:ご自身の経験を通して、ドイツの教育は日本とどう違いますか?
A:二つあるのですが、一つ目は、幼い頃に自分の将来を考える機会があり、進路を選択しなければいけないことです。
(ドイツの内情はわかっていないので詳しくはわかりませんが、)幼い時期から就業訓練コースか、進学コースかを決めるのです。まだ若い子供たちにとっては、経験やいろいろな職業を知ることができていない時期に選ぶ厳しさを感じます。
つまり、見聞を広げてからの自由な選択ができない、親の考え、親の社会的地位・年収、子どもの周りの環境に大きく左右されることがあります。けれども、選択しなければならないからこそ、子どもは自分の将来を、親は子供の将来を、子どもが幼い頃から考える機会があることは、とても良い事だと思いました。日本ではあまりこのような機会がないので。
二つ目は、子どもが育ち、自立するまでの費用(大学、専門学校)も少ないと聞き、子育てをするうえで大切なことだと思いました。その点で、日本では、高校、専門学校、短大、大学と自立するまでの費用が多くかかりますよね。
以上の2点(将来を考えるタイミング、子どもが自立するまでの費用)が、ドイツと日本の教育の違いだと思います。
Q:改めて、ドイツに来てよかった点を教えてください。
A:ビールがとにかくおいしいです。
気候は、冬が寒いですが、春・秋の天気のいい日は気持ちよく昼寝ができます。また、現在、バーデン=ヴュルテンベルク州のブルッフザールというところ(フランスとライン川に近い、北西の方です。)に住んでいます。田舎のほうなので、バイクや車があれば小旅行ができていいかもしれません。私は、格安の長距離バスを使ってミュンヘンやシュトゥットガルトに行きました。旅好きにはとてもいいと思います。
Q:反対にドイツに来て残念な点はありますか?
A:まだ、一年目なのであまり感じていません。
Q:休日はどう過ごされているのですか?
A:この前は、シュトゥットガルトのビール祭りに行ってきました。まだまだ一年目ということもあり、勉強に追われていますが、最近は社会人の日本人とドイツ人のstammtisch(交流)を見つけたので、参加し、ドイツの方とお寿司食べ放題を楽しみました。
Q:今のご経験を今後、どのように活かしていきたいと思いますか?
A:ドイツには各地の名産物Wurst、Schinken(ソーセージ、ハム)があるようなのでそれを学び、日本で本場ドイツのソーセージ、ハムを提供したいと思っています。まだまだ勉強不足ですが、食品添加物を使わない、スパイスで作る安全なものを福祉施設や学校、病院などに提供できれば嬉しいです。
また、ソーセージ作りを体験したい保育園や学校、施設があれば喜んで行きます!子ども達に色々な職業を知ってもらう一つとして、経験させてあげられればと思っています。
またたくさんの職種、職業があることを知ってもらう機会として、色々なドイツの職人が集まったバザーを開けたらいいと思っています。
阪本さんは、目的や思いが明確で、自分の仕事を通じて世の中の人々により良い生活を提供したいという気持ちが強く、ものごとを成し遂げる力を感じます。
現地で、阪本さんにインタビューをしましたが、阪本さんには、語学研修中も、多くの外国人の仲間が周りにいました。職場に入った現在もマイスターや仕事場の仲間からも大きな信頼を受けながら仕事をしています。阪本さんの仕事ぶりについてマイスターに伺ったところ、「僕は阪本さんを尊敬しているよ。遠く日本から来てドイツ語の困難を乗り越え、高い志で研修を受けている姿にとても感心している。彼と仕事をしていて一日たりとも残念だった日はない。彼を研修生として受け入れて本当に毎日充実しているよ。」ととても熱いコメントを頂きました。阪本さんが人々の健康や幸せにつながるような志の高い素晴らしいマイスターになる日が楽しみです
ダヴィンチインターナショナルでは、ドイツでマイスターの国家資格を取得し帰国した方や、日本で活躍されているマイスター達と一緒に、ドイツ大使館が主催で開催するドイツフェスティバル(毎年11月頃開催)にワークショップを催しています。ドイツで国家資格を取得したいという方への支援、ドイツでゲゼレ・マイスターの国家資格を取得して帰国した方に対して、日本で活躍する機会を多く作る活動をしています。(長野県など起業支援に力を入れている自治体の方とのつながりでドイツから帰国した方の起業支援のつなぎ役としての活動を進めています。)
講師への講演依頼はノビテクマガジンで!
グローバル視点の人材育成・教育の講演ができます。株式会社ダヴィンチインターナショナル
高野哲雄・松居温子 講師のプロフィールはこちら