働き方・生き方
HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
【第3回】整形靴の職人を目指し日々ドイツで奮闘している林沙織さんの場合① – ドイツで育むグローバル人材!~アメリカ・イギリスでもない環境を選ぶ日本人~
【コラムジャンル】
グローバル , ドイツ , 人材 , 奮闘 , 整形靴 , 日本人 , 松居温子 , 林沙織 , 株式会社ダヴィンチインターナショナル , 現場研修 , 環境 , 第3回 , 職人 , 育む , 連載 , 選ぶ , 高野哲雄
2015年03月06日
整形靴のゲゼレ(職人)を目指し日々ドイツで奮闘している林沙織さんにドイツでの活動をお話しいただきました前編です。
グローバル人材育成の必要性が叫ばれる昨今、たくさんの書籍・雑誌が出版され、多くの研修・セミナー・講演会が開催されています。
ご多忙にもれず、このコラムもグローバル人材をテーマにしたものですが、イギリス、スイスでもない、米国のバーバードビジネススクールでもなく、世界各国が注目をしているドイツの教育制度を通して、実際にドイツで “ゲゼレ” “マイスター” を目指している日本人の活動をお伝えしながら、グローバルな視点に立った人材育成・教育についてお伝えできればと考えおります。
整形靴のゲゼレを目指し日々ドイツで奮闘している林沙織さんの場合①(渡独2年目 職種:整形靴)
Q:ドイツで職人ゲゼレを目指そうと思ったきっかけは?
A:大学卒業後、一般企業に就職し働いていたところ偶然書店で立ち読みした雑誌に、日本国内にある靴の学校の記事が載っていました。ちょうど今後の進路をどうしようかなと考えていたこと、昔から何かを作るということが好きだったことから「これだ!」と思い、意を決して退職し、日本の靴の学校に入学しました。これが、私のゲゼレを目指す上での最初の一歩となりました。
1年半程日本の学校に通い、修了過程を終えることができましたが、違う環境でも経験を積んでみたいと思っていた時に、偶然にもNGES(日独エキスパートサービス)の「ドイツ日本人職人養成プログラム」の募集記事を見つけ、「靴について学ぶなら歴史のあるヨーロッパ、しかも足に良い靴を作っているドイツならぴったり!」と考え募集し渡独しました。
※NGES(日独エキスパートサービス)とダヴィンチインターナショナルは、総代理店契約をしており、ドイツへの留学サポートを行っております。(2015年4月26日にNGES(日独エキスパートサービス)との総代理店契約は終了しております。)
Q:実際にドイツの職場に飛び込んでみて、感じたことは?
A:ドイツの職場では、何も知らない若者の研修生を受け入れて育てていくことがふつうのことなのだというのがまず新鮮でした。徒弟制度が昔から根付いている国ならではだと感じます。そして、ドイツでは残業をあまりしないことと、与えられた30日程度の有給をしっかり年内に使い切っている事ですね。それだけ定められた時間内に仕事を効率よくやりきることが求められているのです。
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この林さんの話を裏付ける労働政策として、現在ドイツでは労働大臣のアンドレア・ナーレス氏が、「午後6時以降に仕事をすることを禁止する法案改正を2016年までに進めることを示唆した」とのこと。すなわち長時間労働が人の心に及ぼす影響についての研究を根拠としており、法案が通過すれば勤務時間外は仕事に関するメールを見ることも禁止される計画があるようです。 日本では、想像が付かない絵空事のように感じますが、ドイツではこのような潮流になっているのです。 例えば、2013年12月のドイツの新聞「フランクフルター・アルゲマイネ」によると、大手自動車メーカーフォルクスワーゲン社では3500人以上の一般社員に社用のスマートフォンが支給されており、18:15〜翌朝7:00はサーバーを停止してメールをチェックできない仕組みになっているとのこと、大企業が率先して社員のオンとオフの切り替えが出来る仕組みを作り社員の健康、ひいては社員の仕事のパフォーマンスのアップを計っているのです。
そういった労働環境の中、一人あたりの国内総生産(GDP)は日本より2割多いとのデータがあります。非常に興味深いですね。(今後、深く取り上げたいテーマです)一言でいって「効率がいい」ということ以外の何者でもありませんね。
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教養の習得は座学、実践は現場の職人から学ぶ
Q:組織(チーム)をみたときに日本とドイツの違いは?
A:ドイツでは、相手が上司でも思った事ははっきり伝え、対等に議論している姿をよく目にします。
日本は伝統的にどうしても部下は、上司と意見が異なったことがあっても意見が出しにくいですよね。特に会議では必然的に上司あるいはトップの考えに部下が従う。さらには部下が意見を言ってもトップが一蹴する光景をよく見る気がします。もちろんそういった社風ではない会社もあると思いますがドイツでは上司が部下の意見を尊重したうえで方針を出しています。
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これは教育そのものがドイツと日本では根本的に違うところに原点があるように思います。前回のコラムでお伝えしたとおり、ドイツでは小学生のときから先生が生徒に意見を述べることを求め否定することしません。自分の考えを発信することの大切さが根付いているのです。そのまま上司と部下という大人の社会でもその関係が維持されているのです。
(前回コラム:日本とドイツの教育制度は、何が違う?)
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Q:ドイツの教育システム(デュアルシステム)を受けてみていかがですか?
A:一番大きな魅力は、職場での研修だとは感じます。 自分の課題のための試作品ではなく、実際にお客様の手に渡るものを作る経験が研修生の間からつめる事、周りの現役の職人の皆さんの仕事を隣で見ながら仕事ができる機会は本当に貴重だなと感じます。また、解剖学や病理学の基礎など教養の習得に関しては、学校に通い座学で学び、実践は職場で職人から学べるというバランスが合理的なシステムです。
Q:林さんのデュアルシステムのプログラムは、そのような流れですか?
A:私の場合は3年間で予定を組まれ、職場と学校でそれぞれ学び、中間試験と最終試験を受けます。そして、それぞれの道を歩みます。
次回は、林さんが靴職人(ゲゼレ)を目指す中で、ドイツでの社会的な価値を具体的に、そして林さんのオフの時間の過ごし方など、お伝えいたします。
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