働き方・生き方

「痛みの駆け込み寺」として人々のつらい症状に向き合ってきた、ゆらしＬａｂ。強い刺激を与えない独自の手技「ゆらし療法」は、日本の病院だけでなく、ドイツをはじめとする欧米諸国の病院や治療院でも導入されているのだとか。これまで多様なケースで心身のケアに携わってきた三浦由佳氏に、体を整える意義や方法を教えてもらいました。

（※本記事は、2025年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。）

中澤仁美 ＞ 文 　　梅沢香織 ＞ 写真　

三浦由佳（みうら・ゆか）

ゆらしＬａｂ品川高輪 院長／Ｙｕｒａｓｈｉ療法士
１９７６年北海道生まれ。商業高校卒業後、事務職や営業職を経験。その後結婚し、現在３児の母。２００９年にゆらし療法に出会い北海道での修行を経て、２０１６年品川高輪店の開業に伴い上京。以来、多くの痛みを抱える方々の相談にのっている。店舗運営やスタッフ育成も行っており、ゆらし療法を通じ【医療の選択肢を増やし患者ファーストの医療に変革する】活動を行っている。

●そもそも「ゆらし療法」とはどのようなものですか。

子ども時代、痛いところをお母さんがさすってくれて、気分がよくなった――。そんな経験をしたことはありませんか。ゆらし療法は、この延長線上にある手技と考えるとイメージしやすいでしょう。痛みや違和感は心身が発する危険信号であり、多くの場合、筋肉の異常な緊張が関係しています。
私達は生理学を紐解いて、「強く押したり揉んだりすると、強い刺激に対して防御反射が起こり筋肉がより緊張してしまう」と考えています。肩こりなどで強く押すマッサージなどに通い、むしろ当初よりも肩が硬くなってしまっているという人が多いのもこれにあたります。ゆらし療法では、「優しく触れる、関節をゆっくり動かす」といった手技で筋肉の緊張を緩め、痛みや違和感などの危険信号を軽減します。

●具体的に、どのような手順で施術を行うのですか。

まずは症状が出始めた時期やきっかけなどお話をしっかり伺います。次に筋肉や関節の状態を確認しながら、伺ったお話と実際の状態を照らし合わせます。そうすることで、体が何に対して危険信号を発しているのかを推測します。

不調の出ているところに関連した箇所に必ずと言っていいほど筋肉の緊張やゆがみが存在するので、関節を動かしながら周囲の筋肉を触っていき、体の変化を確認しながら施術をしていきます。また、お家でできる体操や姿勢維持の方法など、日常的な対処法もお伝えします。根本的な要因は体の使い方の癖だったり、過去のけがだったりと、一様ではありません。

肩こりや腰痛に悩む方はもちろん、頭痛、腱鞘炎、肉離れ、半月板損傷、オスグッドなど多様な痛みを抱える方が当店を訪れます。また、医療機関とも積極的に連携。親和性が高い整形外科はもちろん、内科クリニックでも機能性ディスペプシア（＊） 専門外来の枠を設けてもらい、医師と協働しながら症状の改善に挑んでいます。

＊検査で異常がみられないにもかかわらず、胃もたれ、早期満腹感、胃の痛みなどが続く病気。ストレスによる自律神経の乱れが原因の一つと考えられている。

●体の痛みと心の痛みは、どのように関連しているとお考えでしょうか。

さまざまな方の施術を通して、「心と体はつながっている」と肌で感じてきました。痛みというのは想像以上に孤独なもので、「誰も分かってくれない」という心の痛みにつながり、それが一層体の苦痛を強めることもあります。

また、痛みの症状が日常生活を阻害することにより、精神的に落ち込んでしまうことも珍しくありません。心がつらくなったとき、心療内科的なアプローチがまず頭に浮かびがちですが、体にアプローチすることで「苦痛の悪循環」を断ち切ることも、有効な手段の一つだと思います。

 
●体のつらさが改善されることで、心も元気になるような場面は、よく見られるのでしょうか。

もちろんです！　ひどい頭痛で顔をしかめながら来店された方が、施術後は見違えるような笑顔になり、「最近みんなに表情が明るくなったねって言われるんです。なんか人間関係も良くなった気がするんですよね〜」と言われたことがあります。これはわかりやすい例ですが、痛みや辛さがなくなれば、意識が外を向いて視野も広がります。

●さまざまな心身の痛みに立ち向かうビジネスパーソンに、メッセージをお願いします。

自分のことはもちろん、周囲の人が抱える痛みやつらさにも、耳を傾けてあげてください。家族や同僚など、ＳＯＳを発信している人が身近にいるかもしれません。「首が痛いなあ」「背中に違和感があるかも」といった一言に対して「大丈夫？」と声をかけてもらえるだけでも、気分はかなり違ってくるものです。
また、家族やパートナー同士であれば、つらい部分を優しくさすってあげるのもいいですね。寝ている赤ちゃんが起きないくらいの柔らかなタッチで、互いに労わり合う時間を取ってみましょう。

体を整えて、心をチューニングする Ｑ＆Ａ

Ｑ　健やかな毎日を送るために、心がけたい生活習慣はありますか。

Ａ　「水」「入浴」「睡眠」の３点を意識してみましょう。
血液には「水」が不可欠であり、不足するとドロドロになって循環しにくくなります。多くの人は摂取量が不足しているため、少し多めに飲むことを心がけるといいでしょう。ただし、一気に飲んでも体を通過するだけなので、少しずつこまめに飲む習慣が大切です。
「入浴」には水圧によるマッサージ効果があり、さらに温浴効果による血液循環の改善も期待できます。できるだけ日常的に湯船につかるようにしましょう。
「睡眠」は、働きづめの内臓にとって貴重な休息の時であり、重力に逆らって二足歩行する人間においては、重い頭を支える首を休ませる意味もあります。たとえ眠りに就けない日があっても慌てず、横になるだけで体は回復していることを思い出してください。

Ｑ　肩こりや腰痛は「あるのが当たり前」に感じるのですが、我慢してはいけませんか。

Ａ　もともとビジネスパーソンには肩こりや腰痛を訴える方が多いですが、コロナ禍を経て、さらにその数が増している印象です。出勤せずに仕事をする機会が増加し、運動不足になっていることが一つの原因といえそうです。こうした痛みは次第に強くなっていく傾向があり、いきなり激痛が襲ってくることはまれです。最初はちょっとした腰痛だったはずが、体をかばうような動きが増えて疲労が蓄積していった結果、ぎっくり腰を発症……といったイメージです。

日本では頑張ることが美徳という考えがまだまだ根強く、「まだ大丈夫」「休むほどは痛くない」などと考えてしまいがち。しかし、それでは手に負えない事態を招きかねません。過度に頑張ってしまう傾向がないか振り返り、自分を労わる視点を意識的に持ってほしいと思います。

Ｑ　オフィスや自宅で気軽に取り組める運動などがあれば教えてください。

Ａ　猫背が望ましくないことは皆さんご存じだと思いますが、どんなに正しいとされる姿勢であっても、長時間同じ体勢を保ち続けるのは無理があります。筋肉がずっと動かない状態であること自体が体によくないので、定期的に立ち上がったり、体重移動したりすることが欠かせません。できれば１時間くらいおきに体を動かすため、タイマーなどを活用してもいいでしょう。

立ち上がって背伸びをするときは、上からひもで引っ張られるようなイメージで爪先立ちになり、ゆっくりとかかとを下ろします。このとき、親指側だけに体重をかけるのではなく、小指側も意識することがポイント。実は、小指はとても握力が強く、ここを使いこなせるかどうかで、体を支える能力が大きく変わってくるのです。

また、気になる部位に手を当てて、それに連動する関節を動かすこともお勧めです。例えば、肩に手を置いて、腕を内側や外側へひねるように動かす運動（写真上）、腰に手を当てて骨盤を前後に動かす運動（写真下）など。手を当てることで温熱効果が得られる上、脳がその部位を意識して「そんなに筋肉を硬くさせなくても大丈夫だ」と気付き、ふっと力を抜くきっかけになります。

講師への講演依頼はノビテクビジネスタレントで！

三浦由佳　ゆらしＬａｂ品川高輪 院長／Ｙｕｒａｓｈｉ療法士

株式会社ノビテク　TEL.０３-５８４４-１１４４

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