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佐藤綾子【第1回】「相手との関係性」「場面」をまず意識する – 「意図的に表現を変える」人を魅了する自己表現とは
「意図的に表現を変える」人を魅了する自己表現とは
「パフォーマンス学の定義は「人の良いところを120%表現する」こと。」
会ったばかりなのに、なぜか好感を覚える人、一方で、興味や関心を持てなかった人もいるはずだ。
『人は第一印象で決まる』。それを学問として体系化したのがパフォーマンス学。日本における同学問の第一人者として、多くの人に自己表現の技術指導を行っている佐藤綾子氏が、その貴重なメソッドを明かしてくれた。
小谷奉美 ≫ インタビュー 波多野匠 ≫ 写真 肥沼和之 ≫ 文
(※本記事は、2018年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
「相手との関係性」「場面」をまず意識する
パフォーマンス学とは、一言で表すと”自己表現のサイエンス”です。心理学、社会学・文化人類学、スピーチコミュニケーション学、演劇学などをベースとした体系的理論や、豊富な実験データに基づいた、米国発祥の実践的な学問です。
私はニューヨーク大学の大学院でパフォーマンス学を勉強し、日本で初めてそれを体系化し、首相経験者をふくむ政治家や、有名企業の社長をはじめ、多くの受講生に指導してきました。この学問の定義は、「人の良いところを120%表現する」ことです。
第一印象がなぜ重要なのか
心理学者のティモシー・ウィルソンによると、人は1秒間に1万要素の情報を視覚から得ています。そのうち、脳で処理できる40要素で、第一印象を決定しています。この第一印象がなぜ重要なのか。それは一度ついた印象を、後から変えることは困難だからです。
第一印象の決定要素となる表情、歩幅や姿勢、アイコンタクトの頻度や長さなどには、何らかの意図や欲求が表れています。私があるホテルのレストランで食事をしていたとき、隣の席に若い男女がいました。彼女は上品で優しそうでしたが、ふとテーブルの下を見ると、ハイヒールを脱いでいたのです。上半身は「彼に見られている」という意図が働き、上品にふるまっていても、見られていない下半身は「足が痛い」という生理欲求で動き、油断していたのでしょう。
このようにすべての人は、他人に見られると、自己表現を意図的に変えているのです。
パフォーマンス学で意識すべきこと 一つ目「関係性」
パフォーマンス学で意識すべきことは2つ。一つ目は「相手との関係性」。国会議員は、一般市民と接するときと、国会答弁をするときでは、意図的に表現を変えないといけません。自分を支援してくれる市民と、対立する政党の国会議員では、関係性が全く異なるからです。議論を仕掛けてくる議員相手に、フレンドリーに答えていては、真剣さがないと思われかねません。逆に、市民相手に怖い顔で接していては、近づきがたい印象を与えてしまうでしょう。
パフォーマンス学で意識すべきこと 二つ目「場」
二つ目は「今はどんな場なのか」。ある女性アナウンサーが、悲しいニュースを笑顔で読み、非難されたことがありました。これは、カメラの前で微笑むことがパターン化していたため、表情の切り替えができなかったのだと思います。そのため、場違いな印象を与えてしまったのです。「関係性」と「場」がパフォーマンス学では重要な要素となるのです。
講師紹介
佐藤綾子(さとう・あやこ)
博士(Ph.D. パフォーマンス学・心理学専攻)。社団法人パフォーマンス教育協会理事長。佐藤綾子のパフォーマンス学講座・主催。ハリウッド大学院大学教授。信州大学、上智大学大学院卒(MA)。ニューヨーク大学パフォーマンス研究学科卒(MA)。非言語研究の第一人者として、累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブ、首相経験者をふくむ54名の国会議員、地方議員にコンサルティングとスピーチ指導を行う。日本大学藝術学部教授を経て現職。2017年現在、著書は全189冊、累計320万部。
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非言語研究の第一人者としてコンサルとスピーチ指導で絶大な信頼を集めている指導者。株式会社国際パフォーマンス研究所 代表
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