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人見玲子【第6回】お客様の本当の声が聞こえていますか – 研修講師リレーコラム
人見玲子プロフィール
人見 玲子(ひとみ れいこ)
接遇コンサルタント。
株式会社JALスカイ大阪でグランドホステスとして10年間務め、通常業務の他に社内講師も担当。その後、証券会社等の金融系企業の社内研修講師として人財育成プログラム開発も行い、自身が企画運営した「おもてなしリーダー制度」が金融庁よりモデル事例として着目される。2013年に独立し、株式会社コントレール代表に就任。ビジネスマナー、クレーム応対、接客接遇を中心とした人材育成に関わる。
お客様の本当の声が聞こえていますか
近年、企業理念の一つに『お客様第一主義』や『お客様満足』を掲げる企業が数多くありますが、こと、クレーム対応となると“意見”や“要望”をおっしゃるお客様もすべて、いわゆる『クレーマー』(悪質で過剰な要求を常習的に行う人)として扱いがちです。
クレーム対応において、通常の接客対応のように『お客様第一』や『お客様満足』を意識できないのは何故でしょうか。クレーム対応では、お客様の『大きな声で怒鳴る』、『何度も同じ話を繰り返す』、『暴言を吐く』等の現象面にどうしても捉われてしまいがちです。しかし、このような場合、その現象面の奥にある“真因”(本当の理由)や“心理”を見極めることが何よりも大切です。
そのために、まずはお客様の話にしっかりと耳を傾けましょう。人は話すことで頭の中が整理され、心の中が浄化されます。また、人は自分の話を聴いてくれる人のことを好きになるのです。
クレーム対応も通常の接客対応も、要は人と人が行うものですから、お客様とどう信頼関係を結べるかが重要です。
空港でグランドスタッフをしていた頃、チェックインを済ませたお客様がカウンターに戻って来て、多くのお客様の前で「搭乗券を返してもらっていない!」といきなり大声で怒鳴られたことがありました。よく見るとお客様の上着右胸ポケットに搭乗券の端が見えています。そこで、私は、「えーっ!」と自身の制服の右胸に手を当て、驚いてみせました。私のその態度にお客様は「はっ」と気がつき、「もういい」と少し気まずそうにその場を立ち去られました。
お客様の勘違いによるクレームや、明らかにこちらに非がないクレームというのはよくあるものです。そんなとき、対応者は得てして上から目線の対応になりがちです。ここでも、私が「は?ポケットに入っていますけど」と返答すれば、お客様に恥をかかせることになります。お客様は「なんだ、その態度!」と怒りの矛先は私に向かい、振り上げた拳は私の頭上に下りてきたことでしょう。つまり、こちらが優位なときほど丁寧に対応することが鉄則です。
クレーム対応であっても通常の接客対応と同様、相手を思いやり、おもてなしの心で接することにより、大クレームへの発展を防御することは可能なのです。
(※本記事は、2015年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)