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MANAGEMENT AND BUSINESS マネジメント・経営
伊藤邦雄【第3回】「ヘリコプターセンス」のあるリーダーに – インタビュー「理念は企業のぶれない軸」
理念は企業のぶれない軸
「リーダーは多様性を認めて、尊重しながら、高い視点で舵を取ってほしい」
東京証券取引所が主催する「企業価値向上表彰」において、選考委員会の座長を務めるなど、数多くの企業経営の分析実績を持つ、一橋大学大学院商学研究科の伊藤邦雄教授。そんな伊藤教授に、「経営理念」が企業やそこで働く人々にもたらす価値などについて、先駆的な企業の事例を踏まえながらうかがった。
岩崎知佳 ≫ インタビュー 田村知子 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2015年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
「ヘリコプターセンス」のあるリーダーに
―チームや部署のリーダーの方が、理念の浸透のためにできることはありますか?
各企業の理念はどこをとっても素晴らしいものですから、そのうちの一部に着目してもいいでしょう。事業ごと、チームごとに重点が違うでしょうから、この部分は何があっても大事にしようと思えることを、リーダーが決めたり、メンバーと話し合ったりして、共有するんですね。
そのときに大切なのは、PDCA(計画・実行・評価・改善)を回すことです。共有した理念を実際に実現できているかを定期的にチェックして、フォローしていく。その繰り返しが重要です。
―リーダー層の方たちが、経営的な視点を持ちたいと考えた時には、どんなことを意識すればいいでしょうか。
私がよくお話するのは「ヘリコプターセンス」を持つことの重要性ですね。ヘリコプターは上空を飛んでいくときに、下を眺めると様々な景色が俯瞰できますよね。地を這っていては何も見えないし、飛ぶ位置が低いと電線などに引っかかって墜落してしまいます。ですから、高く飛ばないといけないんですね。
そうしたヘリコプターセンスを磨くには、就業時間内は社内の人とのコミュニケーションを大切にして、それ以降は社外の人、とりわけ異業種の人と交流を持つといいと思います。そうすると、視野が広がり、視点も高くなっていく。このヘリコプターセンスが、いわば経営のセンスなのです。
また、リーダーは、管理者にはならないこと。管理者は、自分の思う通りに周囲をおさめたいと考えるものです。そこから逸脱した人を出したくないために、同質性を求めて、管理しようとしてしまう。でも、それでは部下は萎縮してしまって、何か問題が起きたときにも相談しようとは思えなくなってしまいます。
リーダーは多様性を認めて、尊重しながら、高い視点で舵を取ってほしいと思いますね。そして、そのときにも、理念が拠り所となるのです。
伊藤邦雄 – インタビュー「理念は企業のぶれない軸」(了)
講師紹介
伊藤邦雄(いとう・くにお)
一橋大学大学院商学研究科教授 一橋大学CFO教育研究センター・センター長。1951年生まれ。1975年一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院商学研究科長・商学部長、一橋大学副学長を歴任。多数の企業で社外取締役を務める。『新・企業価値評価』『新・現代会計入門』『危機を超える経営-不測の事態、激変する市場にどう対応するか』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。
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マネジメント・経営・経済一橋大学大学院商学研究科 特任教授 伊藤邦雄 講師のプロフィールはこちら