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内山厳【第7回】研修講師の役割とワークショップデザイン – 研修講師リレーコラム
内山 厳プロフィール
内山 厳(うちやま げん)
G office 代表
青山学院大学 客員准教授
同大学 ワークショップデザイナー育成プログラム 講師
1969年 東京都生まれ。
HB Studio(New York)とRADA(London)で演劇を学ぶ。自身の演劇活動のほか、子どもから大人までの演技や表現の指導にも携わる。また演劇活動と並行して、1997年より、大学や企業研修の講師として活動する。現在、官公庁や大手企業を中心に、若手から管理職まで幅広い対象者に向けて、主にワークショップ型の研修を提供している。講師を担当するワークショップデザイナー育成プログラムは、2014年にHRアワードを、2015年にグッドデザイン賞をそれぞれ受賞し、注目を集めている。
研修講師の役割とワークショップデザイン
みなさんは、研修講師に何を求め、どのような学習観で研修を評価していますか。ここでは、次の2つについて考えてみたいと思います。
研修における講師の専門性とは?
私は、3つの専門領域があると考えています。それは、①評論家・②実務家・そして③ワークショップデザイナーです。①はテーマに関して専門的に研究していて、先端的な知見を有している人です。有資格者ということもあるでしょう。②はテーマに関するハイパフォーマーで、伝説の営業マンや、どの部門でも成果を上げてきたマネージャーといった類の人です。③は集合研修で受講者間の学びあいの場づくりができる人です。学びの質を向上させるために、受講者がどのような活動に取り組むのが効果的か、そしてその活動への没入を促す仕掛けや、どのような環境だとコミュニケーションが起こるのかなどを考えられる人のことです。
講師になりたての頃の私は、①と②を演じるために、毎回異なるテーマについて必死に準備をして、何とか乗り越えてきました。しかし、振り返ってみると、私が評価されていたのは、どちらでもなかったように思うのです。もちろん、専門書の読み込みや事例を集める作業は役に立ちましたが、受講者間のコミュニケーションの環境を丁寧に設計していたことがよかったのだと思います。
ワークショップ型の学びとは?
ワークショップとは、講義などの知識獲得型の学習ではなく、参加体験型の学習のことです。同一の解に誘導するのではなく、多様な納得解を探っていくプロセスです。試験で合格点を取るための学習ではないので、大幅に新たな情報を「知る」ことや、何かが急に「できる」ようになることは期待できないかもしれません。しかし近年、教育担当者の間でも、解を与えない学習への理解は急速に進み、様々な形で人材育成に取り入れられています。ただし、単にグループワークを入れさえすればワークショップであるとか、グループワークが盛り上がりさえすればよいといった誤った風潮が一部で見られることも事実です。集合研修の学習環境を緻密に作れるワークショップデザイナーは、今後必要な人材であると信じます。
今回は、誌面の都合でワークショップ型研修の種類や事例などは割愛しますが、特に、私が好きな研修プログラムのデザインは、社内外の①評論家②実務家を巻き込んで、場をつくることです。どうでしょう、一緒に協同してみませんか。
(※本記事は、2016年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)