働き方・生き方
HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
原口雅子【第22回】コミュニケーションの原点 – 研修講師リレーコラム
原口雅子プロフィール
原口 雅子(はらぐち まさこ)
研修講師、司会者、ナレーター
青山学院女子短期大学英文科卒業。J A L 国際線C Aを経て、ZIP-FMナビゲーターコンテストにてグランプリ受賞をきっかけにラジオパーソナリティへと転身。CMナレーション、語りを中心に「声」の仕事に従事。現在は司会業、研修講師として活動中。研修テーマは「接客スキル」「アナウンス」「コミュニケーションマナー」など。
(※本記事は、2020年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
コミュニケーションの原点は、相手を尊重すること 「人を育てること以外の方法で、社会の質を高めることはできません」
「私が話かけると、その人はレディ(ジェントルマン)になる。なぜならば、レディ(ジェントルマン)として扱うから」これはアメリカのブロードキャスター、ラリー・キング氏の言葉です。
人はもともとレディ(ジェントルマン)。誰だって粗末に扱われると心が曇り、大切にされれば自信も生まれます。”会社が社員をどう扱うか” ”ビジネスパートナーに敬意を払っているか”など、「接し方(扱い方)」がコミュニケーションの土台であり、人材育成の根幹だと考えます。
私は研修講師を15年、司会者として20年間活動しています。まだ駆け出しの頃、ゲストへのインタビューの仕事で行き詰まりを感じたことがありました。その場を仕切ることに精一杯だった私は、「相手の話を聴いているようで実は聴いていない」という事態に陥ってしまったのです。
「打開策は何かないか」と煮詰まっていた時、CNNの名物司会者、ラリー・キング氏のトーク番組を見てヒントを得ることができました。彼を前にすると、どんな無口なゲストも途端に饒舌になるから不思議です。別のゲスト曰く、「自分がこんなに愉快な人間だったとは思わなかったよ」と。ゲストのなかに眠っている魅力を引き出し、花を持たせる彼流の仕切りに人間の器の大きさを感じました。まさに、トークの帝王ここにあり。
しかし、彼の魅力は話術だけではありません。相手の目を見て軽く身を乗り出す仕草、「あなたしか見ていませんよ」といわんばかりに全身全霊で向き合う姿勢。
ちょっとしたことにも楽しそうに笑うリアクション。これらにコミュニケーションの何たるかを見た気がしました。以降、私は心を入れ替え、時には身を乗り出し、時にはツッコミを入れながら、その場の空気を心から楽しむことにしたのです。
特別なスキルではない日常の単純な営み、たとえば「相手の目を見て挨拶する」「明るい返事をする」「相手の話に熱心に耳を傾ける」という初歩的な行為の積み重ねが、どんなに場の空気をおだやかにすることでしょう。目の前の人に敬意を示すことが、どれほど自信を与えることでしょう。
これらを日々実践できる能力こそが、コミュニケーションの原点だと思います。そして信頼関係が実った暁には、仮に相手の過ちに気付いた時に潔く忠告することだってできるのです。無難な会話しか成立しない人間関係より、気持ち良く意見を言いあえる風通しの良い職場環境のほうがよほど健全です。そのためにも、コミュニケーションの基礎力に益々磨きをかけてほしいと切に願います。