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小森康充 – どの状況でも成果が出せる「真の営業」に必要なこと

小森 康充

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【コラムジャンル】

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2021年01月14日

リアル・オンラインなど、どのような状況でも成果を出す

幼い頃から体が弱く勉強もスポーツも苦手、そのうえ口ベタ…。そのような人物が二十数年後、外資系メーカーで常に営業トップクラスの成績を誇り、最優秀マネージャーとしても表彰。さらに二度のヘッドハンティングの度に年俸アップという成功者の道を辿ると誰が想像しただろうか。3社の外資系企業を経て営業力強化コンサルタントとして活躍する小森康充氏が語る、必ず結果が出る営業のロジックとは。

(※本記事は、2020年7月に公開されたノビテクマガジン特別号の記事です。)

小森 康充(こもり・やすみつ)

小森 康充

小森コンサルティングオフィス 代表
1962年生まれ。P&Gジャパン、日本ロレアル、COACHジャパンなど実力主義の外資系企業で20年間の営業キャリア、人材育成キャリアを積む。その後、神戸学院大学客員教授を経て2009年、営業力強化コンサルタントとして独立。P&G時代においては常にトップクラスの営業成績を上げ続け、当時P&Gトレーナーの世界トップであったボブ・ヘイドンよりコミュニケーションスキルとマネジメントスキルを直接学び、トレーナーとしても社内や得意先の人材育成に貢献。アジアパシフィック最優秀マネージャー等、数々の表彰を受ける。また、世界No1サクセスコーチといわれるアンソニー・ロビンズのコーチングスキルを習得し、20年間の実績が証明する卓越したスキルとミックスした独自のスキルを確立。わかりやすく実践的な指導には定評がある。著書に『スベらない商談力』(かんき出版)、『仕事ができる人はなぜ決断力があるのか』(生産性出版)などがある。

営業に「センス」はいらない

同じ商品を同じ値段で売っても、売上の良い人もいればそうでない人もいる。この差はどこから生まれるのか。P&Gジャパン、日本ロレアル、COACHジャパンと名だたる外資系企業にて、常にトップクラスの成果を叩き出してきた小森康充氏はこう説明する。

「営業に必要なのはセンスでも、年齢でも、経験の豊富さでもありません。結果を出す営業の手法には、実は体系だった『プロセス』と『話法』があります。これを私はP&Gジャパン時代、当時世界ナンバー1だった営業トレーナーに直接教わりました」

それまでの小森氏のやり方は体を壊すほどの根性一辺倒で、成果も安定していなかった。しかし『プロセス』と『話法』のスキルを身につけたことが大きな転機に。体力勝負の根性営業を卒業し、楽しみながら安定した結果を出せるようになったのだ。さらにこのスキルを自身がトレーナーとして他の社員に伝えると、彼らも次々と結果を出せるようになっていったという。

「結果を出すための営業のプロセスとは、着実に信頼関係を構築しながら相手の『心の窓』に応じたアプローチをしていくというものです。第一印象で信頼を獲得し、心の窓を開きながら商談を進め、最適なタイミングで商品説明を行い、堂々とクロージングする。このプロセスに則って進めていくためには、質問の仕方や相槌の打ち方、話の聞き方などの『話法』も重要なスキルになってきます」

多くの人は「まずは商品説明を聞いてもらわなくては」と考え、とにかく自分がリードして喋ろうとしがちだ。しかし小森氏によれば、その方法では「最初からその商品に興味がない人」には響かない。

「相手の話を聞くことに時間を使う方が成約率は上がります。話の流れの中で自然と”たまには他の商品も導入していかないといけないよね”、”あなたの話も聞きたい。実は◯◯のことはよく知らないんだ。ちょっと説明してもらえないかな”と言ってもらうことを目指します。言葉は『発した本人』に最も強く作用します。”買うよ”、”その商品のことを教えて”といった決めゼリフは相手に発してもらいましょう」

学んだだけではただの「知識」

このような『プロセス』と『話法』のスキルに加え、もう1つ必要なものがある。『自分はできる』との自己重要感だ。

「P&Gジャパンに学んだことの1つに『ThinkBig!』という考え方があります。たとえば上司から『新規開拓を10件』のノルマを与えられたとしましょう。多くの人はこの目標に対して”大変だな”、”難しいな”と思いつつなんとか頑張ろうとします。しかし私ならあえて自分の目標を『新規開拓を20件』と公言します」

小森氏がこのような宣言を大言壮語で終わらせずに済んだのは「口に出した手前、やらないと格好がつかない」と必死になり、実現するための方法をなんとしてでも考える姿勢があったからだ。先輩、上司、さらに取引先の人にも「どうしたら実現できるでしょうか」と相談し、可能な限りの手を尽くす。その熱意を感じた周囲の人たちが応援者となり協力してくれることも少なくなかった。

「さすがに20件は難しくても16〜17件はいくんです。10件を目標にしていた人たちは9件か10件で止まってしまう。元のノルマは20件ですから、これで人の1.6倍や1.7倍の成果です。つまりトップ営業になれる」

この例で言えば、小森氏と他の人たちの差は「目標に対する最初の設定値の違い」だ。加えて、『ThinkBig!』をベースにした目標を”自分は達成できる”と信じ切っていたことも大きな差だ。

「最初から”できないかも”と及び腰になると行動する力が生まれにくい。柔道で背負い投げのやり方を学んだとして、”できる”と心から思って手足を動かすのと”できないかも”と思いながら動かすのでは結果は大きく違ってくると思いませんか。やり方を理解しただけではスキルは知識にしかならない。実際の行動と合わさってこそ本当の意味でのスキルになるのです」

実は小森氏も、生まれつきこのようなマインドセットを身につけていたわけではない。幼い頃は体が弱く幼稚園も学校も休みがち。勉強もスポーツも苦手でコンプレックスの塊だった。心配した祖父の勧めで通ったスイミングスクールで平泳ぎに目覚め、中学1年の時に市の大会で入賞したのをきっかけに少しずつ自信を育んでいく。そのなかでも一番影響を受けたのは、大学時代に縁あって所属したボート部での経験。インターハイへの出場経験を持つスーパー選手が数多く所属し、「目指すのは2位3位ではなく日本一」といったレベルの高い世界にカルチャーショックを受けつつも、大きな学びがあった。

「全国レベルでトップを争う人たちは、私とは住む世界が違うと思っていました。しかし、日々一緒に練習を重ねていると、そんなヘラクレスみたいな図体をしている選手が『練習しんどいな、やめたいな」と弱音を吐くこともある。馬鹿みたいな冗談を言ったり、可愛い女の子を追いかけてフラれたりもしている。”スーパーマンみたいな人も、自分と同じ人間なんだな”と気づきました」

“優れた成果を残す人は自分とは違うレベルの人間だ”という思い込みがなくなった瞬間だった。さらに、俳優業に憧れ養成所で演技のレッスンを受ける経験から、”演じることで違う人間になれる”ことにも気づいた。自分で人生の台本とセリフを作りさえすれば、なりたい人になれるのだ。ボート部と演劇での経験が”口下手で笑顔のない小森”から”トップ営業の小森”になるためのマインドセットの下地となった。

研修を確実な成果につなげるには?

『プロセス』『話法』のスキルとマインドセットの両輪があれば、入社1年目の新人であったとしても必ず結果が出せる。その確信に至った小森氏は、ヘッドハンティングを経て日本ロレアルの営業部長、COACHジャパンのアウトレットモールの責任者を歴任した後、2009年に営業コンサルタントとして独立。根っこにあるのは「人は変われる」という思いだ。P&Gジャパンでのトレーナー経験や、COACHジャパン時代に神戸学院大学客員教授として学生に向けて講義を行なった時に感じた手応えから、後進の育成を志すようになったという。

「”根性営業ばかりだった自分でもスキルとマインドセットを身につけることで変われた”、この経験を多くの人に伝えたい。若い人ほど人生の先は長い。研修を受けることで変われたら、その先の仕事生活も充実するでしょう」

結果の出る効果的な研修には3つのポイントがあると小森氏は考えている。
①実践的であること、②トップのコミットメント、③評価制度だ。

「まず一つ目は、研修で学ぶスキルが実践的であることが大切です。”営業をどう進めればいいのか”を講師が実際に見せ、参加者にその場で実践してもらう。講師からのフィードバックを受けながらでも、実際にできるようになれば参加者のモチベーションは必ずアップします。ただし、相手によってできたり、できなかったりと結果が変わってくるようではまだスキルとして心もとないです。どのような相手にも確実に結果が出るくらいまでに高めていくことが必要です。このような『習慣化』のためには、二度三度の連続研修を行うことが重要です。

2つ目は、長期的な売り上げとスキルの習慣化を目指し、来期の戦略の1つとしてトレーニングを組み込むことです。そのような強い決意が社長や営業本部長に必要になります。
私自身がトレーニングをきっかけに変われたのは、P&Gが日本法人の長期的な売り上げアップのために、世界ナンバー1のトレーナーをわざわざ日本に何度も来日させるという、トップのコミットメントが非常に強力なものだったからです。

そして、研修でのトレーニングと評価制度を連動させることで効果はさらに確実なものになります。研修で学んだプロセスや話法で成果を出した社員を、ボーナス査定や社長表彰などで評価すると良いでしょう。また、そのようにメンバーを成長させた管理職も同様に評価します。これがポイントの3つ目です」

研修を受けることが目的ではなく、確実に売上げをアップすることが小森氏の研修の目的。「人は変われる、自分にもできる」。そう信じさせてくれるだけの説得力あるロジック、実践的で再現性の高いテクニック、そしてウィットに富んだ経験談からは、先を見通すのが難しいスピード社会へ立ち向かう勇気とパワーも分けてもらえそうだ。

オンライン営業でも確実に成果を出す

世界的な新型コロナウイルス感染症の流行によって直接商談をする機会が激減する一方、ビデオ会議ツールや電話を使った営業手法が注目を浴びている。これらのツールを使用し、これまでと同じ成果を出せるか不安を感じている企業や人は少なくないだろう。

「ピンチはチャンス、と捉えてほしい。困っているのは競合他社も同じ。そんな時こそ、他社がやっていないことを先駆けて実行するべきです。『対面』と『オンライン・電話』での営業は全く違うと思われるかもしれませんが、場所を共有していないだけで『時間』を共有しているという意味では実はどちらも変わりません」

『話法』のスキルを使い、相手の心の窓の開き具合に応じて商談を進めていくプロセスはオンライン・電話でも変わらない。なりたい姿を自分の中に思い浮かべ、自信を持って画面越しに相手との対話を進めていけばいい。一方、対面とは少し事情が変わってくる部分も発生する。

「大きく違う点を挙げるとすれば、対面では視覚や触覚による印象づけが容易ですが、オンライン・電話の場合はその2つが弱くなることです。画面上で資料を共有することはできますがこちらの姿は上半身しか見えず、触覚に関しては一切不可能です。そこで、一番強い影響力を持つことになるのが『声』です」

相手を説得するためのロジックとして『Speak to Head & Heart』という概念がある。数字や事実といった理論で左脳に語りかけることと、共感や心地よさなどの印象で右脳に訴えかけることの両方をバランス良く織り交ぜる。そうすると相手がリラックスして話を聞くことができ、成約率が向上しやすいという。オンライン・電話を通じて相手の右脳部分にアプローチするには『声』の力を最大限に活用する必要がある。

「”この人とまた話したい” “信頼できる”と声で相手に印象付けるには、一言一言に『感情』を込めて発声することがポイントです。そのためのテクニックはいろいろあり、体得できればクロージング成功率は確実に高くなります」

コロナ禍により「会わなければ話はまとまらない」という常識は覆された。交通費、時間、労力等の面でコスト削減が叶うオンライン・電話での商談はアフターコロナの世界でも根付いていくだろう、というのが小森氏の読みだ。どのような状況でも確実に成果を出せるのが真の営業スキル。それを身につけられれば怖いものはないだろう。

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