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岩本隆【第1回】タレントマネジメントとはなんでしょうか? – 社内の人材データを「見える化」しよう!感覚頼みのマネジメントはもう卒業 タレントマネジメントの効果とは
社内の人材データを「見える化」しよう!
「その人に合った仕事を与え、必要なスキルを学ばせて成長を促すと同時に、社内人材を有効活用して全社的な業績アップにつなげる」
ひと昔前の企業では、管理職の感覚に頼って部下を評価する傾向があった。また、経営者は社内にどんな人材がいるのか把握しきれず、どんぶり勘定で人を採用し、配属を決めるケースもあっただろう。だが、こうしたやり方は既に過去のものになりつつある。ICT*をベースにした「タレントマネジメント」により、社内人材の有効活用を目指そう。
*ICT…情報通信技術のこと。最近は、従来から使われている「IT」にかわり、「ICT(Information and Communication Technology)」と言うことが標準になっている。
白谷輝英 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2017年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
タレントマネジメントとはなんでしょうか?
人材開発のプロ集団である「全米人材開発協会(ASTD)」は、タレントマネジメントを「仕事の目標達成に必要な人材の採用、人材開発、適材適所を実現し、仕事をスムースに進めるため、職場風土(Culture)、仕事に対する真剣な取り組み(Engagement)、能力開発(Capability)、人材補強/支援部隊の強化(Capacity)の4つの視点から、実現しようとする短期的/長期的、ホリスティックな取り組みである」と定義しています。言い換えれば、全社的な人材需要を見据えながら、優秀な人材を採用してその人に合った仕事を与え、必要なスキルを学ばせて成長を促すということ。同時に、企業内にどんなスキルの持ち主がいるのか一元管理することで、社内人材を有効活用して全社的な業績アップにつなげることだと言えるでしょう。
ここでカギを握っているのが、近年の技術革新です。
従業員を評価するためのポイントは、数多く存在します。それらの全てを人力で分析しようとすると、膨大な時間がかかってしまうでしょう。だから従来は、評価指標を絞り込み、シンプルな枠組みで従業員を評価するしかありませんでした。ところが、現代ではICT技術の進化によって、膨大な情報を処理・分析可能になったのです。全従業員の能力をきめ細かく把握し、一覧できる環境が整ったため、企業は社内人材をより有効活用しやすくなりました。
なお、現在では「ヒューマンキャピタルマネジメント」という、さらに大きな概念が提唱され、その中にタレントマネジメントが位置づけられるという構図になりつつあります。
岩本特任教授のワンポイントアドバイス!
タレントマネジメントを考える上で大切な思考はなんですか?
タレントマネジメントのシステムを導入する際に、「多額の予算が必要なのではないか?」と危惧する企業は少なくありません。私もいろいろな企業から、この種の質問をしばしば受けます。しかし、解決法はあります。はじめは、予算が許す範囲の規模でスタートすればいいのです。
例えば、いきなり全社で導入するのではなく、限られた部署でテスト的に導入してみる。あるいは、新卒採用など特定の分野だけに絞り込み、一部機能だけを利用するという手もあります。
あと、社内に統計学やプログラミングの知識を持つ人材がいると、タレントマネジメントシステムを活用する上で有利になります。もし、そうした人材がいない場合、システムを手がけるベンダーなどに相談して知恵を借りるといいでしょう。
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