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岩本隆【第2回】なぜ今タレントマネジメントが注目されているのでしょうか? – 社内の人材データを「見える化」しよう!感覚頼みのマネジメントはもう卒業 タレントマネジメントの効果とは
【コラムジャンル】
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2018年01月09日
社内の人材データを「見える化」しよう!
「人事のさまざまな面が「見える化」され、より正しいジャッジが下せるようになってきた」
ひと昔前の企業では、管理職の感覚に頼って部下を評価する傾向があった。また、経営者は社内にどんな人材がいるのか把握しきれず、どんぶり勘定で人を採用し、配属を決めるケースもあっただろう。だが、こうしたやり方は既に過去のものになりつつある。ICT*をベースにした「タレントマネジメント」により、社内人材の有効活用を目指そう。
*ICT…情報通信技術のこと。最近は、従来から使われている「IT」にかわり、「ICT(Information and Communication Technology)」と言うことが標準になっている。
白谷輝英 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2017年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
なぜ今タレントマネジメントが注目されているのでしょうか?
1970年当時、日本のGDPにおける非製造業の割合は5割に満たない水準でした。しかし現在、その比率は約75%にまで高まっています。また、製造部門を海外に移転させる企業が増えたため、国内では研究開発やマーケティングなどの業務に従事するビジネスパーソンが増えました。
こうした中、「1人が1時間に何個の製品を作るか」という切り口で従業員の生産性を計るやり方は、時代遅れになりつつあります。今は、「多彩な才能(=タレント)を持つ従業員を組み合わせることで、従来よりも高い成果を得られるか」という観点から、生産性の向上を目指すことが必要になっています。それで、タレントマネジメントの重要性が高まっているのです。
従来の人材管理に対して疑問が湧きあがってきたことも、タレントマネジメントに注目が集まっている理由の一つです。以前、ある企業と共同で、高い成果を上げる優秀者(ハイパフォーマー)の業績やスキル、経験などをテキストマイニング(アンケートで書かせた文章をコンピュータ解析すること)を併用しながら分析をしたことがあります。すると、ハイパフォーマーを生み出す要素が、人事担当者が想定していたものとかなり食い違っていることが分かりました。
従来の企業では、経営者や管理職、人事担当者などが自らの「感覚」に頼って、人事や教育の施策を立てていたのではないかと思います。人間の思考にはバイアス(偏り)が生じやすいため、時に正しくない判断をすることもあったでしょう。しかし、ICTを駆使したタレントマネジメントの出現によって、人事のさまざまな面が「見える化」され、より正しいジャッジが下せるようになってきたのです。
岩本特任教授のワンポイントアドバイス!
ICTで従業員の能力を評価することに抵抗があるのですが…
タレントマネジメントは、テクノロジーの力をフル活用して人事を変えようとする取り組みです。こうした動きに対し、「人間の評価を、ドライなコンピュータに任せるのはイヤだ。人間の評価は、同じ人間が行うべきだ」と考える人もいます。しかし、システムは人間を支配する存在ではありません。むしろ、人間を雑務から解放してくれるものなのです。以前は、公平な人事評価をし、従業員一人ひとりに適した教育を行おうとすると、膨大な分析の時間がかかってしまいました。ところが、テクノロジーを利用することで、そうした業務を効率的にできるようになったのです。それで生まれた時間を使えば、人事担当者や管理職は従業員とのコミュニケーションをさらにきめ細かく展開することができるでしょう。
テクノロジーを怖がる必要はありません。むしろ、人がより生き生きと働くためのサポートをしてくれる、頼れるものだと捉える方がいいと思いますよ。
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