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堀井亜生【Q1】研修会場での出来事 – 教育担当者奮闘記[法律編]
Q1 依頼したお弁当が当日会場に用意が無かった!
株式会社ノビテル商事
人事部 人材育成課
持部孝夫さん〔29歳〕
株式会社ノビテル商事入社6年目。
今年4月より営業支援部から人事部・人材育成課へ異動してきた新米教育担当者。
「研修担当者になって半年が経ちましたが、まだまだ課題は山積みです・・・」
はじめて研修会場を手配しました。研修会場に1,000円のお弁当を参加者30名分依頼をしたのですが、当日会場にはお弁当の用意が無かったのです。すぐに用意できるのは近隣のレストランの2,000円のランチでした。この予算オーバーした差額は研修会場に負担していただけるのでしょうか。また、研修会場との契約の段階で気をつけるべきことはあったでしょうか。
A 1.研修会場に対する差額支払請求の可否
研修会場に対して予算オーバーした差額の支払いを請求するためには、研修会場が当日、弁当を用意しなかったことが、当事者間の契約違反である必要があります。
この当事者の契約違反を「債務不履行」と言います。(民法415条)
本事例では、研修会場が「研修当日に1,000円分のお弁当を30人分用意する」という債務を負っているにもかかわらず、研修当日に弁当を用意しなかった場合ですので、「債務不履行」に該当します。
では、予算オーバーした差額分を「損害」として賠償請求することができるのでしょうか。ここでいう「損害」とは、債務不履行と因果関係のある範囲の損害と解釈されています。本事例では、研修会場がお弁当の用意をしなかったために、近隣のレストランでランチをとらざるを得なかったという事情がありますので、予算オーバーした差額分は研修会場の債務不履行と因果関係のある「損害」であるといえます。
レストランでのランチ代が弁当代と比べて負相当に高額というわけてはないので、このように考えても債務を提供する側の研修会場にとってとりわけ不当であるともいえないでしょう。
したがって、本事例では研修会場に対して予算オーバーした差額の支払いを請求することができます。
A 2.研修会場と契約の段階で気をつけるべきこと
通常、研修場所の確保について研修会場との間で契約書を取り交わしていないことが多いと思われます。仮に、契約書が存在せず、見積書のみが存在する場合に、弁当代の差額を請求したところ、そもそも弁当代の発注は受けていない、事前の見積書には発注の記載はあったが、正式な見積書ではない等、研修会場から反論されてしまう可能性があります。そのリスクを回避するために簡単なものでいいので、契約書を作成することをお勧めします。出来れば、契約書に解除や損害賠償に関する特約をあらかじめ契約内容に盛り込んでおくとスムーズに差額が請求できたはずです。
とはいっても、日常業務における全ての契約について契約書を取り交わすということは現実的ではないかもしれません。その場合には、依頼内容の明細と見積書を研修会場から提出してもらうこと、それに対して、この内容でお願いしたいという文書(メールでも可能)が残っていますと、具体的な契約内容について疑義が生じるリスクが減ります。
(※本記事は、2014年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
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