働き方・生き方

村上　由美子（むらかみ　ゆみこ）
有限会社ビジネスサテライト
文大学卒業後、大手コンピュータ・メーカーに入社。技術者として、プログラム開発、顧客サポート、プロジェクトマネジメントに従事する。1993年以降は社内ＳＥ（約300名）向けの教育企画・運営及び、自身も研修講師として活躍。2005年に人材育成、企業研修コンサルティング、研修運営管理、教材開発等のサービスを提供する有限会社ビジネスサテライトを設立し、代表取締役に就任。プロ研修講師としても、切れ味鋭い魅力的な研修で安定の人気を誇る。

そろそろ新入社員のスーツ姿が眩しい頃となる。

「今年の新人は…」と例年必ず話題になるが、個人的見解としては、今も昔も新人は新人。会社組織という中においては異邦人であるが、その一方で、早く組織に馴染みたいと望んでいる。彼等が考える、組織に馴染むための手法が、時代・環境によって変わっていることは否定しない。そこから「今年の新人」ネタが出てくるのだろう。

企業のＨＲＤ部門、その後人材コンサルタントとして、新入社員研修に長年携わってきて感じるのは、入社当初は誰もが高い成長意欲を持っているということ。表現の違いこそあれ、組織を理解しようとする真摯な姿勢がうかがわれる。それから、規則や手法を研修で詰め込まれることで、目標が規則や手法を習得することに限定されてしまう。研修が進むにつれ、規則に違和感を持つ、あるいは手法がうまく理解・実践できない等々で苦労する者も少なからずおり、育成を担う皆様は、その対応に頭を悩ます経験もお持ちであろう。

しかし、組織の規則や手法は、常に変わらないのだろうか？自社ソリューションは？組織体制は？マナーは？コミュニケーションの方法は？

自身の経験の範囲内では、変わらないものは自社の在り方・進むべき方向性、そして継続させたい社風のみであり、それ以外は５年、いや今やもっと早く変化してきている。むしろ、変わっていく必要があるのではないだろうか。組織の中で「出来上がってしまった」者にとって、異邦人の考えや振る舞いは少々突飛ではあるが。しかしながら、そもそも現在の組織を客観的に見ることができる者のゼロベースの意見や考え方には、新たなヒントが隠されている可能性は高い。

以上のことから、新入社員研修の目的は①～④のように考えてはいかがだろうか。

①誇るべき自社の社風、自社の在り方・進むべき方向性を目標として共有・維持する
②組織成長に貢献する必要性を理解する
③従来の規則や手法を「他にもあるかもしれない」が、「現時点で最適と思われる」組織の実態として理解する
④組織に対する意見や考えを持つ（引き出す）そして、最終的には、それを組織の変革に実際に活かしていくこと

武道に「守破離」という言葉があると聞く。師の教えを忠実に守り、それを中軸にして殻を破って個性を発揮し、師を離れ自らの道を見出していく。個人的に大好きな言葉であるが、時代とともにこのプロセスにもスピードアップが迫られているのかもしれない。いや、このプロセスを新人と共有することこそ、必要なのだと強く思う。

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