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柴田励司【第2回】社員同士の絆を強める取り組みは有効 – 経営者よ、社員から「居場所」と見なされる職場をつくれ! – [特集]はたらくをたのしむ
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2019年07月29日
経営者よ、社員から「居場所」と見なされる職場をつくれ!
[特集]はたらくをたのしむ
「組織のカギを握るのは中間管理職」
せっかく働くのなら、楽しく働けるほうがいい。では、ビジネスパーソンが楽しく働くために、組織をどう整えればいいのだろうか。米系コンサルティング会社マーサージャパンの社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社代表取締役COOなどを歴任し、現在は次世代リーダーの発掘と育成支援を手がけるコンサルティング企業『株式会社Indigo Blue』で会長を務める”人事のプロ”柴田励司氏に、楽しく働くためのポイントをうかがった。
白谷輝英 ≫ 文 佐々木信之 ≫ 写真
(※本記事は、2019年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
柴田 励司(しばた・れいじ)
株式会社Indigo Blue 代表取締役会長
1962年、東京都生まれ。上智大学文学部英文学科卒業後、株式会社京王プラザホテルに入社し、人事改革などを担当。その後、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング日本法人(現マーサージャパン株式会社)代表取締役社長、株式会社キャドセンター代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社代表取締役COOなどを歴任。2007年、経営コンサルティング事業と人材育成事業を柱とする株式会社Indigo Blueを創業。現在は同社の代表取締役会長を務めるかたわら、講演活動などを通じて人材育成に携わっている。
社員同士の絆を強める取り組みは有効
さて、これまで挙げた三条件のなかでもっとも実現が難しいのが、社員に職場を居場所だと感じてもらうことだ。
「”居場所”とは、単なる場所のことではありません。それは、仲間がいる集団、つまり人間関係そのものです。信頼し、愛情を寄せる仲間が多いほど、社員は職場に居心地の良さを感じます」
たくさんの従業員を抱える大企業ほど、従業員同士の絆を強めることが難しい。さらに、近年はテレワークなどを取り入れる企業が増え、社員同士が顔を突き合わせる機会は減りつつある。こうしたなかで重要になっているのが、従業員同士が相互理解を深める機会をつくることだと柴田氏は指摘する。
「私がCOOだった頃のカルチュア・コンビニエンス・クラブには、全グループで約4500人の社員と100以上の連結会社が属していました。本部長、部長クラスでも、他のグループ会社の同格者がどんな人かまったくわからない状況だったのです。そこで私は、互いに深く知り合えるような場をたくさん設けました」
その原点は、人事コンサルタント会社マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン株式会社。以下「マーサー」)の制度だ。当時のマーサーには全世界で1万6000人ほどのコンサルタントがおり、そのなかで200人ほどが「ワールドワイドパートナー」に選ばれていた。そして彼らは年1回、1週間ほどのイベントに参加して、皆で議論やキャンプ、サイクリングなどをする決まりだった。
「私は2003年に選ばれ、世界中の同僚と過ごした経験が、大きな財産になりました。グローバルな案件が持ち上がって海外拠点のコンサルタントと協業したいとき、イベントで一緒になった人がいれば、すぐに『ハーイ、久しぶり!』と連絡して仕事を始められるようになったのです。こういう手法は、日本企業でも参考にできるはずです」
Indigo Blueでも、「メンバー全員で協力して壁をのぼる」「目隠しした人を他の人が導く」などのアクティビティ型研修を提供している。また先日、柴田氏が顧問をしている企業では、400人の管理職がスキー場でカレーライスをつくる研修を行ったという。
柴田氏はしばしば、「ビズテインメント」という言葉を使う。この背後には、”楽しく働けなければ良い仕事はできないし、人生が充実することもない”という考えが根付いているのだ。だから、柴田氏が手がける研修や人材育成のノウハウにも、”受講者を楽しませ、感動させる”という発想が盛り込まれている。
「教科書を読めばわかることをわざわざ座学で教えるような、退屈極まりない研修はダメ。私がを設立した原動力は、ワクワクできるような研修・職場をさらに増やしたいという思いだったのです」
中間管理職に時間的な余裕を与えるべし
現在の企業では、管理職にプレーイングマネジャーとしての役割を求めがちだ。部下の育成・管理に加え、自らの目標も持たされるのである。
「こうした状況を私は、『集団皿回し』と呼んでいます。最初は10人が1枚ずつ皿を回しているのですが、やがて皿が2枚、3枚と増えていく。一方、人数は8人、6人と減っていくようなイメージです。最初は指揮だけを担当していたリーダーも、いつの間にか自分で皿回しをしていて、周囲に気を配る余裕などなくなります。これでは、楽しく働ける職場など望みようがないでしょう」
こうした状況を変えるには、物理的な余裕をつくるしかない、というのが柴田氏の結論だ。
「人が減るのに仕事が増える環境では、どんなに工夫しても『集団皿回し』から抜け出すことなど不可能です。そこで提言したいのは、”なにか新しい仕事を始めるなら、同時になにかをやめる”ということ。無理やり時間を生み出すことで、初めて問題解決の糸口がつかめます。
組織のカギを握るのは中間管理職です。経営層は、彼らが周囲に気を配れるための余裕を生み出すよう心を砕きましょう。同時に、”楽しく働ける環境づくりの三条件”も整備するのです。それに成功した企業には、従業員や顧客、支援者がたくさん集まってくるでしょう。すると、業績は自然と上向きになるはずです」
社員がワクワクできるような研修・職場。柴田氏のノウハウは、人材育成に悩む企業の福音になることだろう。
経営者よ、社員から「居場所」と見なされる職場をつくれ!(了)