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株式会社ispace【第1回】一つひとつの技術を積み重ねて宇宙を目指すHAKUTO – ”個“のスキルが集結する。宇宙という夢に向かって。
【コラムジャンル】
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2017年11月17日
「月面探査の国際賞金レース『Google LUNAR XPRIZE』。その戦いに日本から唯一参加する民間発のチームが『HAKUTO』」
「『夢みたい』を現実に。」と、HAKUTOは言う。
月を自由に旅する時代がいつか来る。その未来への確かな一歩が、世界初の民間による月面探査レース。
国籍もキャリアもスキルも異なる多様なメンバーが揃うチームを運営する株式会社ispaceに、未来を現実のものにする組織のあり方についてのヒントを得る。
小谷奉美 ≫ インタビュー 村上杏菜 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2017年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
一つひとつの技術を積み重ねて宇宙を目指すHAKUTO
いま、宇宙への関心が世界中で高まっている。Googleがスポンサーとなり、XPRIZE財団によって運営される月面探査の国際賞金レース『Google LUNAR XPRIZE』。その戦いに日本から唯一参加する民間発のチームが『HAKUTO』だ。優勝の最有力候補とも言われ、2017年末のインドでのロケット打ち上げに向け、着々と歩みを進めている。
「このレースの目的は、継続的に月を行き来できるだけの技術革新。もちろん我々も優勝を目標としてはいますが、レースが終わった後も、地球と月の間にもう一つの経済圏を作ることを目指して活動を続ける予定です。具体的には、月の『水』資源を開発し、各業界の研究者や資源開発関連の企業、月を中継基地として周囲の深宇宙を目指す方面などからのニーズを想定しています」(秋元氏)
この壮大なビジョンを実現するべくHAKUTOを運営しているのは、中村氏と秋元氏が属するベンチャー企業ispace。加えて、小惑星探査機「はやぶさ」の開発にも参加した東北大学吉田研究室、そして「プロボノ※」と呼ばれる有志のボランティアメンバーたちとでチームは構成されている。
※プロボノ…専門知識やスキルを活かして貢献するボランティア活動の一形態。ラテン語の「Pro bono publico(公益のために)」から。
「ispaceは25人前後、東北大学の研究室が10~15人、プロボノは登録だけで70人くらいですね。プロボノには現役の会社員をはじめ、大学生、海外からの留学生など、幅広いメンバーが揃っています。メーカー技術者から映像制作会社の社員まで、様々な業界に所属する人たちが、平日の夜や週末を利用して、それぞれのスキルや得意分野を活かして活動しています」(中村氏)
ispaceのエンジニアが「ローバー」と呼ばれる探査機の開発を行い、プロボノメンバーはクラウドファンディング、イベント企画・運営、SNS運用などを幅広く行っている。メンバーには女性も多い。
「人には本質的に宇宙に憧れる気持ちがあると思うんです。知識に関係なく、HAKUTOの取り組みを通じて宇宙と、人との距離を近づけたい」(秋元氏)
ローバー(惑星探査機)『SORATO(ソラト)』
『コストとパフォーマンスの最適解』をテーマに、6年の開発期間をかけ7回のモデルチェンジを重ねて完成したローバー(惑星探査機)『SORATO(ソラト)』。その重量はわずか4キロと、他チームでも類を見ない超軽量タイプ。熱や振動、放射線など宇宙の過酷な環境を耐え抜きレースのミッションを達成するだけの性能が小ぶりなボディに詰め込まれている。民生品を多く活用しコストも最小限に。
株式会社ispace
『Google Lunar XPRIZE』への参加を目的に2010 年に欧州チームが設立した『WhiteLabel Space』が前身。2013年、運営母体である欧州チームの撤退を受け、ボランティアとして参加していた現代表の袴田武史が引き継ぎチーム名を『HAKUTO』に変更。同時に株式会社化しispaceを設立。レースが終了した後も水資源の開発を中心とした宇宙開発ビジネスを視野に入れ活動を続ける。
中村貴裕(なかむら・たかひろ)
東京大学大学院で惑星科学を修了後、新卒で大手外資系コンサルティング会社に入社。6年ほどの勤務ののち、大手情報サービス会社の新規事業開発室に転職。自ら企画・立案した事業の立ち上げを経験し、2015年から現職。
秋元衆平(あきもと・しゅうへい)
大学卒業後、ロンドン留学。語学を学びながら日系出版社に勤務し、帰国後は総合PR会社、事業会社広報に勤務。2010年よりプロボノとしてチーム「HAKUTO」の広報・プロモーションを担当。2016年から現職。組織への柔軟なかかわり方が、企業と人に多様性をもたらす。