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岡田晃【第1回】モチベーションは自分の「武器」と両輪で回す – 歴史に名を刻んだ名士のモチベーション
歴史は単なる過去の出来事ではなく、教訓やヒントを与えてくれるもの。
「自分の資質や武器が何かをわかったうえで、モチベーションがついてくるのが、本来の姿でしょう。」
人々のモチベーションはその時代によって変化している。歴史を牽引してきた名士たちのモチベーションはどこにあったのか。「ノビテクマガジンビジネスタレント」のウェブサイトにて「時代を築いたリーダー達」を連載中の経済評論家・岡田晃氏に、本誌ビジネスタレント講演事業・コーディネーターの八波洋介が聞いた。名士たちの士気を高めたモチベーションの源泉をひも解くことで、これからの時代に求められるモチベーションのヒントを探る。
田村知子 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2016年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
危機からの使命感がモチベーションに
今号のノビテクマガジンは「ジャパンモチベーション」がテーマです。日本の歴史を振り返ると、モチベーションもその時代によって変化していると思いますが、岡田先生はどう捉えていらっしゃいますか?
やはり、時代ごとにモチベーションは違っていますね。例えば、戦国時代は、いかにして生き抜くか。大名なら領地を広げ、天下を取る。家臣たちは殿様のために働き、手柄を立てて出世する。そのモチベーションを保ち続けた人が、歴史に名を残すなど成功を収めた時代でしたね。
江戸時代の二百数年間では、戦国の名残があった前期を過ぎると、中期以降は武士にとって藩が絶対的な価値観になっていきます。
藩が一つの国のようなイメージですね。
そうですね。その頃の藩士は、今でいう官僚のようなもの。藩の中での役割や仕事で実績を上げ、認められて出世していく。それがモチベーションになっていました。
江戸後期の幕末は混沌とした時代。身分の低い武士でも能力を認められれば抜擢されて、藩の重要な仕事を任されるようになりました。例えば、薩摩藩の西郷隆盛や大久保利通といった人がそうですね。この時代に頭角を現した人たちは、藩という発想を越えて世界に目を向け、日本がどうすべきかを考え、そのために尽力した。西洋の侵略の危機にある日本を救いたい。そんな一種の使命感のようなものがあったのでしょうね。
危機があったからこそ使命を感じて、それが彼らのモチベーションとなり、明治維新や明治以降の活躍につながった。いわばピンチをチャンスに変えたわけですね。
モチベーションは自分の「武器」と両輪で回す
それでは、モチベーションという観点から、岡田先生が注目する名士を挙げていただけますか?まず、戦国時代ではどうでしょう。
大勢いるので難しいのですが、最近話題のNHK大河ドラマ『真田丸』の真田幸村を挙げましょうか。今の日本経済はある意味、戦国時代。とくに、中小企業は生き残りに必死です。もともと大大名ではなかった真田家は、そんな中小企業のような存在でした。それゆえ真田家存続のために、格上の有力な戦国武将や大名と敵対しないよう、常にどこかに従ってきた。祖父の幸隆の時代から武田家に仕え、父親の昌幸の時代に武田家が滅亡し危機を迎えると、織田家につく。そこで織田を選んだのはさすがだと思います。しかしその後すぐに信長が殺されて第二の危機を迎えるものの、上杉、豊臣などに従って生き残りを図るわけです。
真田家を一企業としてみると、生き残るために、一族が一丸となって動いているような印象がありますね。
確かに、戦国武将では息子同士が跡目を争うなど内輪揉めが多かったのに、真田家にはそれがない。
そうですよね。織田信長も弟を殺害していますし。
武田信玄は父親を追放して当主になっていますし、そうしたことは戦国時代にはむしろ当たり前でした。
ですから、真田家には組織としての強さというか、結束力を感じます。
有力な大名に従うにしても、信用されなければ相手にはされません。一族の結束は信頼に値したでしょうし、真田家には「戦に長けている」という最大のセールスポイントがありました。それが彼らのモチベーションになっていたのだと思います。
揺るがないものがあったのでしょうね。
モチベーションというのは、ただ単に気持ちがあるだけでは空回りしてしまう。自分の資質や武器が何かをわかったうえで、モチベーションがついてくるのが、本来の姿でしょう。
自分の武器とモチベーションの両輪がうまく回ることが大切なんですね。
講師紹介
岡田 晃(おかだ・あきら)
「ワールドビジネスサテライト(WBS)」等テレビで世界経済や日本経済の解説者として活躍。経済界、労働界、学識者、自治体関係者、報道関係者、NPO関係者など、各界の有志で結成された「新しい日本を作る国民会議(21世紀臨調)」の運営委員も務めている。 また、経済の専門家として、世界経済や日本経済の現状や、今後の見通しについて歴史のアプローチからも分かりやすく解説する。著書:『やさしい「経済ニュース」の読み方』(三笠書房)、『これが高齢化社会だ』(共著、日本経済新聞社)等。
八波洋介(やつなみ・ようすけ)
1977年、埼玉県育ち。参議院議員秘書を経て、ビジネス系大手メディアの講演講師紹介事業に携わる。現在、株式会社ノビテクにて、ビジネスタレント講演事業を立ち上げ、コーディネーターとして活躍。安定感と奇抜さの両方を兼ね揃える提案バリエーションの豊富さで、数多くのコーディネート実績をもつ。多くの著名人との親交も深く、クライアントに合ったコンテンツ提供に定評がある。
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歴史上の人物から学ぶリーダー論、マネジメント論、危機管理、
そして、国内外の景気と株価を読む5つのポイントなどの講演ができる経済評論家 岡田 晃 講師のプロフィールはこちら