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山本昌邦【第2回】育てるべきは、努力できる力 – 理念が活きる組織の条件
【コラムジャンル】
コミュニケーション , ノビテクマガジンVol10 , リーダー , リーダーシップ , 人材育成 , 再掲 , 力 , 努力 , 山本昌邦 , 最終回 , 条件 , 活きる , 理念 , 第2回 , 組織 , 育てる , 連載
2016年09月06日
理念が活きる組織の条件
「一流の選手にはまず例外なく3つの共通点があります。1つは負けず嫌い。2つ目は人の話が聞けること。自分の才能と技術だけで頂点にいけるなんて彼らは思っていないからオープンマインドなんですね。そして3つ目はとてつもなく高い目標を持っていること」
情熱で相手を揺さぶる人もいれば、徹底した理論派を貫く人もいる。チームを勝利に導くことを使命とする監督やコーチにも色んなタイプがいるという。「人を”育てる“ことこそが勝てるチームを作ること」と話すのは、指導者として世界ユース、五輪、ワールドカップなど数多くの国際試合を経験した山本昌邦氏。世界の一流選手を見つめ続けてきた同氏が、”人“を軸にした組織作りを語る。
村上春菜≫文 櫻井健司≫写真
※この記事は、2015年10月1日発行のノビテクマガジン発行時に収録した内容の再掲です。記事中の年齢、肩書きなどは2015年取材時のものです。
育てるべきは、努力できる力
数多くの試合を経験し、世界のトップクラスの選手を見つめ続けてきた山本氏だからこそ言えることがある。
「一流の選手にはまず例外なく3つの共通点があります。1つは負けず嫌い。2つ目は人の話が聞けること。自分の才能と技術だけで頂点にいけるなんて彼らは思っていないからオープンマインドなんですね。そして3つ目はとてつもなく高い目標を持っていること」
本田圭佑選手が将来の入団チームや契約金など具体的な目標を小学校の卒業文集に綴っていたというエピソードは聞いたことがある人もいるだろう。本田選手に限らず、一流の選手は周りが驚くような高いレベルの目標を一流になる前から胸に抱いているという。
「『そんなところまで目指しているのか、すごいな』と感嘆させられることはしょっちゅうです。逆に言うと、彼らはそれだけ高い目標を持っているからこそ頑張れるし、努力できる。本田選手もそうですが、一流の選手は成功するまでに何かしら大きな挫折を経験したことがある人ばかりです。歯を食いしばってどれだけ頑張ったのだろう、と思いますね」
持って生まれた才能や身につけた技術だけでは頂点にたどり着けない。一番大切なのは諦めずに努力できる力だと山本氏は力説する。
「困難な状況に置かれた時、どう対処しようとするかでその人の伸びしろ、未来の可能性が測れます。めげそうに辛い局面で、どう前を向けるか……。現状に満足してしまうとそれ以上伸びないし努力する習慣も身につかない。常に高みを目指し、アグレッシブにチャレンジできる環境、すなわち”満足させない環境“を作るのも我々の重要な役目と言えます」
結果が全てのシビアな世界。果敢にチャレンジし、努力しても結果が伴わないこともあるだろう。
「たしかに努力したからと言って成功が約束されているわけじゃない。でも、チャレンジしなければ何も学べません。大切なのは、努力したことでどれくらい成長したかを選手自身に自覚させること。経験と成長を重ねていくことで確実に勝利へと近づいていきます。本当の失敗はチャレンジをしないこと自体なのです」
試合で望んだ結果が得られなかった時にも「君たちに何も不満はない。この成長を続けていこう」と伝えるようにしているという。これで選手たちはまた前を向くことができる。
大切な人への感謝の気持ちを持ってもらうことも有効だ。
「たとえば自分のおじいちゃん、おばあちゃんに『最後の最後まで諦めなかったね、頑張ったね』と褒めてもらえるようなプレーをしなさいと伝えています。誰のために頑張っているのかを再認識すると、自分を支えてくれる人への感謝の気持ちが自然と溢れてきて、やる気へとつながります」
心に火をつける “人育て“。データが全てと言ってもいいほど科学的な現代サッカーの世界で、山本氏のチーム作りは人間味にあふれている。
「選手が望む『あそこまで行きたい』という願いを叶えてやりたい。あの高みにたどり着けたらどんな景色が見えるのか。それを味わうことはきっと人生最高の喜びでしょうから」
理念が浸透しやすい組織の3ケ条
- 人を育てることを大切にしている
- 個人の自主性を引き出す環境がある
- 才能でなく“努力”を褒める文化がある
山本昌邦(やまもと・まさくに)
静岡県沼津市出身。日本大学三島高等学校、国士舘大学卒業後、ヤマハ発動機株式会社サッカー部に入団。1987年、29歳で惜しまれながら現役を引退。その後、指導者としての道を選択し、ヤマハ発動機のコーチに。ジュビロ磐田でのコーチを経て、日本代表コーチとしてトルシエ氏やジーコ氏を支え、2002年W杯ベスト16の成績を残す。 W杯後、アテネオリンピック日本代表監督に就任。現在は NHK サッカー解説をはじめとして、高校・大学サッカーでの指導など、幅広い活動を展開している。
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