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齊藤正明【第5回】部下の話はちゃんと聞くな! – 目指せ!デキるビジネスパーソン ~マグロ船から学んだ全てのこと~
【コラムジャンル】
チームビルディング , デキる , ビジネスパーソン , マグロ船 , マネジメント , リーダーシップ , 上司部下 , 全て , 学んだ , 目指せ , 第5回 , 聞くな , 話 , 講演会 , 講演依頼 , 連載 , 部下 , 齊藤正明
2015年07月24日
マグロ船に乗せられた私は、心配していたとおり、船酔い地獄の目に遭わされました。そんな状態がキツくて船長にアドバイスを求めましたが…。
私は「日本一の船!」と、言われるマグロ船に乗せられた経験があります。
『マグロ船』という職場は、一般の会社と比べると、狭くて不便な環境でした。それだからこそ、皆が力を合わせ、助け合うことで安全を守り、かつ、大漁で帰港を果たしていました。『マグロ船』という、狭くて不便な環境だからこそ培われた、『人を活かすコミュニケーション』や、『困難を前向きに受け止める姿勢』を、お伝えしています。
部下の話は、ちゃんと聞くな!
マグロ船に乗せられた私は、心配していたとおり、船酔い地獄の目に遭わされました。
43日間の航海だったのですが、そのうち吐かなかったのは、なんとわずか3日だけだったのです。 船酔いのキツさにまいっていた私は、「乗り物酔いってどうすれば治りますか?」と、ワラをも掴む気持ちで漁師に聞いてみると、次のように言われました。
「スッパイものを食べたらどうじゃ?」
「スッパイのは、苦手なんです」
「メシをいっぱい食ってみたらどうじゃ?」
「もう、いっぱい食べてます」
「遠くを見ていたらどうじゃ?」
「目が悪いので遠くが見えません」
無意識にアドバイスをことごとく潰す返事
私はこのように、無意識ながらもアドバイスをことごとく潰す返事を繰り返していたところ、漁師はみけんに深いシワを寄せ
「人がくれたアドバイスに、あまり『できない』と答えてしまうと、アドバイスをしても無駄だと思わるるど」
と言われてしまいました。でも、できないものを「できる」というわけにもいきません。「自分にはできないようなアドバイスをもらった場合、どう答えればよいのでしょうか?」とたずねてみると、
「おいどーは、そういうとき、『なるほどの』とか、『それはおもしろいの』とか言っちょるかいのー」
と、記憶をたどるように首をかしげながら言いました。
アドバイスを受け入れてしまうと実行しないといけない?
しかし、漁師のこの言葉に、私は納得できませんでした。なぜなら、「なるほど」と、相手のアドバイスを受け入れてしまうと、「もらったアドバイスを実行しないといけなくなるのではないかな?」と思ったからです。
「おいどーが言う『なるほど』は、『そのアドバイスを実行します』と言う意味ではねーんど。『アドバイスをしてくれた内容の、日本語は理解できました』という意味ぞ。だからの、別に実行する必要はねぇんど」
「アドバイスをたくさんされると、『余計なお世話』みたいに感じて、ちょっと腹が立つことってありませんか?」
「齊藤。それはおまえが間違(まちご)うちょる。人のアドバイスに期待をしすぎるから、的が外れたアドバイスに腹が立つんど。えーか、『他人からのアドバイスは、たいてい的が外れちょる』。これが普通ど。他人はみんな、自分の立場でものを考える。わざわざこちらの立場に立ってアドバイスをしてくれるなんてことはないんど。じゃから、ほとんどのアドバイスはアテになりよらん」
こう言われると、私はアドバイスをもらうこと自体に意味を感じられなくなり、アドバイスをもらう意味をたずねると、船長はすぐさま答えます。
「アドバイスは、こっちの立場に立って考えてくれない所に意味があるんど。じゃから大抵のアドバイスは的外れになるが、そのおかげで、たまに自分が気づいていなかった大事なことを教えてくれるときがある。自分の発想なんて、たかが知れとる」
新鮮な意見やアイデアを引き出すために
『デキるタイプの人』や『上司』というのは、自分に自信を持っている人が多く、そのせいで、「自分の意見が正しくて、部下の意見は間違いだ!」という考え方を無意識的にしている場合が多く見られます。このような状態になってしまうと、部下は、「あの上司と違う意見を言ったら怒られるからなぁ……」と思うようになり、結果的には言われたことしかやらないイエスマンしかいなくなってしまいます。
今のようにビジネスモデルが短命化している時代では、過去の勝ちパターンは長くは通用しません。ですから、常にお客様のニーズに合ったビジネスを行うためには、若い人から、「斬新すぎる!」とか、「何だそりゃ?!」と感じる意見が出ても、漁師のように相手の言った日本語だけを理解するという姿勢で、「ははは。それは斬新だな。参考にしたいから、また、アイデアあったら教えてくれな」と人のやる気をそがない答え方をして、いつでも新鮮なアイデアが出る組織をつくる必要があるのです。
(参考図書) 『マグロ船仕事術』 ダイヤモンド社 齊藤正明
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