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眞邊明人【第1回】“見せ方”で印象と感情を操る – 怒りとの正しい付き合い方 ~アンガーマネジメントが組織を導く~
怒りは“見せ方”次第。コミュニケーションにもクリエイティブにも応用できる。
「人間には感情がありますから、理屈だけでは動きません。嫌いだと感じたら、どんなにいい案でも難癖をつけて落としたくなる。相手の好意を誘う”人間力”を見せることです」
権利と平等の追求の果てに生まれたのは、本当に優秀な人しか生き残れない不公平な社会システムだという。怒りが充満しやすい現代社会で今、怒りの感情とどう向き合えばよいのだろうか。演出家、監督、作家、講師など、表現のプロとして多彩な顔を持つ眞邊明人氏が語る。
村上杏菜 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2016年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
“見せ方”で印象と感情を操る
真剣な眼差しから一転して冗談を言う表情に。そして今度はこちらが思わず姿勢を正してしまいそうな強面へと、次から次へと表情を変えて見せる眞邊氏。芸人やタレントのマネジメントから演劇作品の監督・演出、さらには研修講師など、表現を指導する立場にあるからこそ”見せ方”は熟知している。本紙WEB版でも『プレゼンの鬼が教える話し方のコツ』とキャッチを掲げ、人を引き付ける話し方のノウハウを伝授。上手なプレゼンテーションを意識するようになったのは、大日本印刷での営業職を経て吉本興業に入ってからだという。
「クライアントに番組の企画を通したり芸人を売り込んだりするようになってからですね。さらに立命館大学でゼミの学生の就職面接対策を行うようになり、話し方や掴みの指導を本格的にスタートしました。タレントのオーディションと就職面接は通ずるところがありますから」
大手広告代理店二社の対照的なプレゼンテーションのエピソードが、一つのヒントになりそうだ。一社は作り込んだ資料を用意したロジカルな説明だったが、眞邊氏の上司は「この企画書読んだらわかる」と一蹴。かたやもう一社は、用意してきたA案とB案のうちA案を勧めようとするも、説明しているうちに緊張と混乱のあまり最終的にB案を勧めてしまい、本人も「あれ?」。めちゃくちゃな展開だったが、上司は爆笑し「面白い!俺が全部教えたるわ」とこちらを採用したという。
「人間には感情がありますから、理屈だけでは動きません。嫌いだと感じたら、どんなにいい案でも難癖をつけて落としたくなる。相手の好意を誘う”人間力”を見せることです」
眞邊氏の方法論で印象的なのは、単なる「良い表情の作り方」を超えた、相手の心理を巧みにコントロールする対人ノウハウであるという点だ。吉本興業時代には『芸人は眉間で稼げ』と言っていたそうだ。
「怒りは眉間に表れやすいから、相手に嫌なことを言われた時こそ眉間を開くべき。抵抗の気持ちがないことを表情で見せれば、おのずと相手の気持ちも解けてきます。怒りに怒りで対応しても意味がない」
眞邊氏流の怒り対策とは、こうだ。
「相手がすごく怒っている時は、早く解決しようとか話し合おうなどの思いは捨て去り、ひたすら相手の言い分を聞く姿勢を見せる。人間、いつまでも怒ってはいられない。クレーム処理がうまい人は長時間勝負に強いんです。また、すぐにカッとくるような怒りっぽい相手には、こちらの非の有無に限らず『申し訳ありません!』と謝る。反論や不服そうな態度は相手に怒りの燃料を補給してしまうので避けた方がいい。私にも経験がありますが、素直に謝られてしまうとそれ以上怒りづらいんですよね」
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