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中竹竜二 究極のチームづくり「ゴールを設定する」

中竹竜二【第1回】「日本一オーラのない監督」として指導者のキャリアをスタート – 究極のチームづくり<チームで道は開けるか>「ゴールを設定する」

中竹 竜二

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『私が豪腕型の指導者だったら、選手を強引に引っ張ることも可能だったでしょう。しかし、経験も名声もなかった私には、とうてい無理な相談でした。そこで選んだのが、『引っ張るのではなく、支えるリーダー』という道だったのです』

「ゴールが明らかになっていないチームに、決して栄光は訪れない」。それが、監督として早大ラグビー部、U20日本代表を率いる中竹竜二氏の結論だ。チーム力を高めるためにリーダーは何をすべきか、その哲学を語っていただいた。

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「日本一オーラのない監督」として指導者のキャリアをスタート

2007年と2008年、早稲田大学ラグビー蹴球部監督として大学選手権2連覇を達成。2014年9月には、ラグビーU20日本代表のヘッドコーチに就任した中竹竜二氏。しかし、早大ラグビー部の監督に就任した当時は、「日本一オーラのない監督」だったと笑う。

「前任の清宮克幸さん(現ラグビートップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロ監督)は、強い指導力を発揮して部員を引っ張ったカリスマでした。それに対し、当時の私は指導歴ゼロ。選手としての実績もたいしたことはありませんでした。そこで多くの選手は、『なぜ、こんな無名監督の下でプレーしなければいけないんだ』と、私をあなどっていたのです」

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練習の号令をかけても、選手の大半はふてくされた態度を取った。中には、あからさまにため息や舌打ちをしたり、「つまらねえ」などとつぶやく者さえいたという。しかし中竹氏は、権力を振りかざして部員を押さえつけたりはしなかった。全選手、さらに女子マネジャーやスタッフなどと粘り強く面談を行い、彼らの「勝ちたい気持ち」を確認していった。

「部員たちは皆、勝利を目指していました。ただ、ほとんどの者は『監督に勝たせてほしい』という受け身の姿勢だったのです。私が豪腕型の指導者だったら、選手を強引に引っ張ることも可能だったでしょう。しかし、経験も名声もなかった私には、とうてい無理な相談でした。そこで選んだのが、『引っ張るのではなく、支えるリーダー』という道だったのです

目指すべきゴールを「再定義」することがチーム作りの第一歩

中竹氏が最初に取り組んだのは、チームとしての目標を明らかにすることだった。

「私は、全選手の前で、こう宣言しました。『私は、君たちの人格形成やキャリアに一切興味はない。ただ、優勝することだけに集中する』と。目指すべきゴールをきちんと定義し直すことが、チーム作りの第一歩だからです」

ビジネスパーソンの中には、ゴール設定の大切さを耳にした経験のある人も多いだろう。しかし、ゴールを正しく定められている人・チームは意外と少ないというのが、中竹氏の指摘だ。

「スポーツチームにも企業組織にも言えることですが、多くのチームは抽象的であやふやなスローガンを掲げ、それをゴールだと勘違いしています。しかし、質の低いゴールは、チームを前に進める原動力にはならないのです。
仮にあなたが、ある部下の育成を任されたとしましょう。このとき、漠然と『部下が成長すればいいなあ』と思うだけでは、ゴールを決めたことになりません。そうではなく、『この人を2年後に主任に引き上げたい。そのためには、このスキルをここまで伸ばす必要がある……』などと、細部に至るまで煮詰める必要があります。誰がいつまでに、どんな方法でどこまで取り組むのか徹底して具体化することで、そこにたどり着くための計画も立てられる。そうして初めて、『本当の意味でのゴール』が生まれるのです」

また、達成があまりに容易なゴールや、メンバーのやる気を高められないゴールを設定しても、良いチームは作れない。

「期限が明確で、主語もはっきりしている。その上、実現までの道のりは遠いが、メンバー全員がワクワクできる。そんなゴールを設定することが、究極のチームを作る第一歩だと言えるでしょう」

このとき心がけたいのが、メンバー自らにゴールを決めさせることだ。リーダーがゴールを設定し、それを強制することも可能だが、それではモチベーションを高めるのが難しいという。

「上から与えられたものより自分で見いだしたゴールの方が、実現時に大きな達成感が得られる。そのことは、脳科学や心理学でも証明済みです。部下との対話を通じて目指すべきゴールを引き出す場合でも、最後の決定は本人に委ねましょう。『このゴールは自分で決めた』と感じさせることが重要なのです」

(※本記事は、2015年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

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