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立川談慶【第2回】気遣いは迷惑にもなる – 落語家・立川談慶に聞く!共感力を高める方法
落語家・立川談慶に聞く!共感力を高める方法
「他人に即した目線があってこそ、気づかいになるのです。」
落語家には『共感力』が欠かせない。お客さんが求めることを先回りし笑いをとったり、師匠へ気の利いた振る舞いをして評価されたり。どんなにセンスがあっても、発信力だけでは人の共感を得られないのだ。落語家として活躍するだけでなく、その「気づかい」から数々の著書も持つ立川談慶氏に、『共感力』の高め方について聞いてみた。
波多野匠 ≫ 写真 肥沼和之 ≫ 文 小谷奉美 ≫ インタビュー
(※本記事は、2019年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
気遣いは迷惑にもなる
落語家は一門に入門しても、すぐには落語をさせてもらえず、師匠のお世話をする修業期間があります。談志は私に対し、「俺を快適にしろ」と言いました。露骨な気づかいを求めたのですね。その結果が、出世に表れるわけです。
僕は長い間、アピールが上手であれば出世できると思っていたのですが、それは大きな間違いだと失敗し気づきました。落語の会場で、楽屋の入り口にのれんがかかっていたので、談志がくぐりやすくなるかと思い、のれんを持ち上げていたところ、「何でお前のペースに合わせなけりゃいけないんだ」と怒られました。的はずれな気づかいとなってしまった見本です。気づかいは、他人からすると迷惑にもなる時もある。他人に即した目線があってこそ、気づかいになるのです。相手の好みは何か察した上で行動しなければいけません。
「一眼国」という噺があります。ある男が、江戸のはるか向こうに、一つ目小僧がいるという噂を聞きました。その小僧をさらって、見世物屋に売って大儲けしようと男は企みます。ところが小僧を見つけたものの、男は一つ目の人々に取り囲まれてしまいます。命乞いをする男を見て、一つ目たちは「こいつ、二つ目をしている。見世物小屋に売ろう」と言うのです。この噺は、自分の考えは必ずしも相手と同じではないと物語っています。自分目線ではなく、相手の立場を察することが共感力なのですね。
上手い落語家は、高座でお客さんの笑い声に耳を傾けながら、好みを探っています。談志は天才的でしたね。もちろん、真似しようとしてできるものではありませんが、地道に努力を積み重ねることで近づくことはできます。
例えば事前のリサーチ。気難しい取引先と会うことになったら、近い人から事前に情報を得ておきます。初孫ができたばかりだったら、その話をすることで、相手は相好を崩すでしょう。すると心を許して無防備になりますから、本音も出て、話も弾みやすくなるのです。僕らもその日の客層を事前に聞いて、話す内容を変えています。落語を聞かない人が多いときは、全く違う話題から入るなど、色々工夫していますね。
そして、常にアップデートをすることです。「いい気づかいができたから終わり」ではなく、より良い気づかいをするためにはどのようにすればいいかを考え、PDCAを回していくことが大事です。
落語家・立川談慶直伝 共感力を高めるための6つの方法 後編
其の4 落語を聞く
落語は「見に行く」ではなく、「聞きに行く」と言います。楽しんでもらうために、お客さんにも聞く耳を要求します。なので、落語を聞くことで、自然と聞き上手になれます。寝る前にYouTubeなどで、落語を流すだけでも構いません。落語を楽しめるようになれば、聞き上手になり、自然と共感力も高まります。
其の5 聞くときも攻めの姿勢
喋ることは攻め、聞くことは守り、というイメージがあるかもしれません。けれど、聞くときにも攻めの姿勢を持つことが大事です。相手がしゃべっているときは、こちらも集中して耳を傾け、聞いた情報をすべて把握しデータ化するくらいの気持ちで受け止めましょう。その積み重ねで受信力は自然とアップし、共感力に繋がっていきます。
其の6 失敗から学ぶ
落語家は前座から二つ目に上がるまでに、普通3~4年かかります。けれど僕は9年もかかってしまった。師匠にアピールしてばかりで、言われたことの本質を何も聞いてなかったのです。失敗してきたからこそ、今があると思っています。失敗には必ず理由がある。なぜ失敗をしたのか分析し、事例を蓄積することで、次に生かせるのです。
(了) – 落語家・立川談慶に聞く!共感力を高める方法
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