働き方・生き方
HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
坂本行廣【第2回】若手時代は暗黒時代? – 職場の幸福論
職場の幸福論
会社勤めの時はどんよりとした気持ちの仕事始めでしたが、独立してからは「新年早々に仕事があるなんて幸せ♪」「ビバ、仕事!」と180度変わるのですから不思議なもんです。
坂本行廣(さかもとゆきひろ)
<人材・組織開発ファシリテーター/メンタルコーチ>
人材・組織開発コンサルティング会社で階層別教育など各種研修、組織風土改革、次世代リーダー育成プロジェクトなど各種プロジェクトの開発、実施に携わる。研修では、理と情のバランスを重視し、受講者が頭で理解し、心で納得することを心掛けている。2013年にプレイフルワークスを設立し、現在は仕事をプレイフルに楽しめる人材、組織作りに取り組んでいる。
若手時代は暗黒時代?
明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願い申し上げます。
新年を無事に迎えられるというのはやっぱり嬉しいですね。そして、今年の仕事始めは5日(月)でした。会社勤めの時はどんよりとした気持ちの仕事始めでしたが、独立してからは「新年早々に仕事があるなんて幸せ♪」「ビバ、仕事!」と180度変わるのですから不思議なもんです。
新入社員研修の担当者からの要望
さて、人材育成の業界では1月になると既に4月の予定が決まり始めています。
言うまでもなく、新入社員研修の予定です。私は独立するまで、20代後半から40代の方の研修がメインだったので、昨年、初めて本格的に新入社員研修を担当しました。担当して驚いたのは、先方の担当者からやたらと、
「厳しくお願いします!!!」
と依頼があることでした。今まで他の年代を担当していてそんな事を依頼されたことはほとんど無かったので、非常に戸惑いました。「厳しく、厳しくって彼らもバカじゃないんだから。彼ららしく成長していくのをお手伝いできればいいんじゃないの?」と正直思ったりしたのですが、きっと担当者は現場から、そして上層部から
「今年の新人は挨拶も出来ないよな~~。ちゃんと新人研修やれよ」
「電話ぐらいまともに取れるようにしてね!」
「取引先からクレームが出ないように厳しく教育するように」
といった指示、要望を受けているんでしょうね。要は、新入社員は「出来ない新人」であって、担当者の役割は”彼らを「出来る新人」にし、可及速やかにし戦力化すること”であり、そのための手段として、”厳しく指導する”という選択をしているのでしょうね。担当者とお話しさせていただいて感じたのは、目的は戦力化であり、残念ながらその前提には、
「入社して幸せになって欲しい」
「充実感を感じて欲しい」
「成長に役立ちたい」
といった新入社員に対する思いは感じられませんでした。まあ、なかには「もう少し厳しく指導した方がいいんんじゃないの」と思う企業もあったのは事実ですが。。。
坂本の新入社員時代
ちなみに自分の新入社員時代を振り返ってみると、入社後数年は全く楽しくなかったですね。
通勤途中に同僚に「あ~、憂鬱や。めっちゃおもんない」と散々愚痴をこぼしたり、ある時は、「幸せって何なんやろう?」と呟いたりの数年間でした。入社後のこの暗黒の数年間は私だけのものかと思いきや、研修で出会う若手社員も同様に感じていることが多いことが分かってきました。
若手社員からは、
「仕事にやりがいや充実感を感じたことはない」
「楽しいという感覚が分からない」
という意見を度々もらいます。
ひょっとして、この暗黒時代はけっこう共通しているものではないかと思い、知人のMさん(30代女性)にも聞いてみました。Mさんは、大学卒業後、日本企業の時価総額トップ10に入る某企業に就職しました。ここから先はMさんと話した内容です。
Mさんとの新入社員時代の話
- 私:
- 入社後数年はどうでした?
- Mさん:
- ほとんど記憶がないなぁ。取りあえず、よく働いていました。睡眠時間が平均3、4時間だったので眠かったですね。
- 私:
- 私は入社後数年間、暗黒時代だったのですが、会社、仕事に対して当時、どんな風に感じていましたか?
- Mさん:
- 入社してすぐに大きなプロジェクトに配属されたのですが、当時、そのプロジェクトに配属された新人が集められ、プロジェクトリーダーから
- 「お前らがこのプロジェクトに集められたのは、お前らがひまだから。お前らはゴミみたいなもん。捨てられているのを拾ったのでちゃんと働けよ」
- と言われたのを覚えていますね。入社数年は、周りの先輩が社内政治で降格させられたり、人事考課で飛ばされたりといったのを間近で見ていたので「会社は使い勝手の良いやつが使われるところ」なんだなというのを実感しましたね。
- 私:
- なるほど、生々しいですね。。。確かに、入社数年は不条理と会社の強制力を否が応にも感じますよね。ちなみに、幸せは感じていました?
- Mさん:
- 考えないようにしていました。「幸せ」か「不幸」かと考えてしまうと前に進めなくなるので。考えていたのは、「やる」か「やらないか」でしたね。周りも必死で働いていたので「ごちゃごちゃ言わずにやれよ」という意識でしたね。
多くの会社が新入社員に求めているのは何だろう?
Mさんのご意見は非常に示唆に富んでいる。
ひょっとして多くの会社が新入社員に求めているのは、”お前のやる気、気持ちなんてどうでもいいので、ごちゃごちゃ言わずに目の前の仕事を全力でやれよ!”ということかもしれないですね。
ちなみに、Mさんは「もう自分の気持ちに嘘はつけない」と、入社3年後に退職したそうです。
大卒の方の入社3年以内の離職率
厚生労働省発表の「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」をみると、大卒の方の入社3年以内の離職率は、平成8年以降、ほぼ30%を超えています(平成21年のみ28.8%)。この数字の妥当性について議論するつもりはないのですが、暗黒時代とそれを生み出す背景が影響を与えているのではと思っています。
少なくとも私は幸せでありたい。そして、あなたにも幸せであって欲しい。
2015年、まずはそのことを声にしたかった坂本でした。
良き一年でありますように。