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藤田一照【第2回】まずは体感してみよう!BodyWork – 禅から考える”自律“とは? ~他律的思考から、自律的思考への転換~
禅から考える”自律“とは? ~他律的思考から、自律的思考への転換~
「人も自分の花を咲かせてみなければ何者であるかは誰にもわからないのです。」
17年間米国で禅の指導をし、『仏教3.0』『人生のパラダイムシフト』『オンライン坐禅』など、イノベーティブな切り口で注目を浴びる禅僧、藤田一照さん。神奈川県葉山に構える茅山荘にて、そのエッセンスをたっぷり教授してもらった。
櫻井健司 ≫ 写真 村上杏菜 ≫ 文 小谷奉美 ≫ インタビュー
(※本記事は、2017年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
まずは体感してみよう!BodyWork
禅の世界では形から学ぶことも重要とされている。“自律”の感覚に体でアプローチ。
BodyWork 1 自分の中心を探す
まっすぐ立つことは意外と難しい。体の中心を意識するために手軽にできる方法がこちら。壁の正面に立ち、一歩下がった位置で体を前に倒し、おでこを壁に付ける。「『体の中心』というと背骨の後ろ側を意識しがちですが、実は体を支えているのは背骨の前側の方」。おでこと、足の甲の付け根辺りまでを結ぶ1本の線を意識してみよう。そこが体の中心だ。
BodyWork 2 “自律”を体現する、坐禅の姿勢
内に対して徹底的に問うていくには坐禅がおすすめ。体の中心を意識しながら前過ぎず後ろ過ぎず、左右にも傾かない、もっともニュートラルな位置をキープ。”伸ばそう”とせずに自然と背筋が”伸びる”のが自律の姿勢。「下半身は床にどっしりと接し、大地からのサポートを受けます。背骨の前側で垂直にバランスを取りながら、背中は背後の空気を感じるくらいリラックスさせましょう」と一照さん。
「自律とは固く閉じている状態ではなく、心も体もオープンな状態。上にも下にも真ん中にもなれる自由自在な状態です」
ゆるやかなS字カーブの脊椎が頭の重みを支える。
NG!
胸が落ちて顎がつまり、視線も下へ落ちている。バランスが後ろに偏り過ぎると背中が丸くなる。
重心が前に偏ると背中が反ってしまう。「坐禅してるぞ、ドヤ!」な、反り腰の状態。
BodyWork 3 パラダイムシフトを体感する
一照さんがおすすめするのは”スラックライン“。専用の平べったいライン上を、バランスを取りながら進んでいく。強引に乗ろうとするとゴムの力で弾き返されてしまうため、ラインの支えを素直に受け取るのがコツだという。
「いくら頭で考えてもパラダイムを変えないことには乗れません。落ちることも大切。何度もトライすることで脳にデータが蓄積されていきます。自転車と一緒で、一度乗れればその後は考えなくてもできます」と難なく進んで見せる一照さんも、乗れるまでには3日かかったそう。
BodyWork 4 生きていることへの正しい認識、つながりのビジョンを理解する
「人間の体は部分の寄せ集めではなく一つの有機的統一体。どこか一箇所を動かそうとしたら体全体が連動して動くようにできています」。
そのつながりのビジョンがうまく表現されている球体のおもちゃ”ホバーマン・スフィア”。
閉じた状態では隙間がなく全体的にとげとげしい印象を受けるが、関節をうまく使って広げると境界がオープンになり、空気の出入りもスムーズに。「固定された一つの状態じゃなく、必要に応じて自由自在にサイズを変えられる全体そのものが『自己』なのです」
尽一切自己 じんいっさいじこ
「禅の世界では”私“と”世界“の区別はなく『宇宙一切が私である』という前提。野の花が咲くのは内在的な生命力によるものです。人間も同じで、あなたがいるから生命力が生まれるのではなく、生命力があなたという存在を生かしている。スミレかバラか、花は咲いてみなければ種類がわかりません。人も自分の花を咲かせてみなければ何者であるかは誰にもわからないのです」
禅から考える”自律“とは? ~他律的思考から、自律的思考への転換~(了)
講師紹介
藤田一照(ふじた・いっしょう)
曹洞宗 僧侶
1954年愛媛県生まれ。灘高校、東京大学卒。同大学院時代に坐禅に出会い深く傾倒。28歳で博士課程を中退し禅道場に入山。29歳で得度。33歳で渡米し、以来17年半にわたってマサチューセッツ州ヴァレー禅堂で坐禅を指導。2005年に帰国、2010年より曹洞宗国際センター所長。Starbucks、Facebook、Salesforceなどアメリカの大手企業でも坐禅を指導する。2017年よりオンライン禅コミュニティ「大空山磨u587c寺(たいくうざんませんじ)」開創。『現代坐禅講義 – 只管打坐への道』『アップデートする仏教』『青虫は一度溶けて蝶になる – 私・世界・人生のパラダイムシフト』など著書・共著・訳書多数。