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自分自身の、 そして地域の「困った!」を ビジネスのタネに 馬場加奈子

馬場加奈子 – 「困った!」を ビジネスのタネに

馬場 加奈子

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2025年01月30日

イチオシ講師 馬場加奈子 - 自分自身の、 そして地域の「困った!」をビジネスのタネに

「自分の困りゴトは地域の困りゴト。」をモットーに、地域共感型ビジネスを展開する馬場加奈子氏。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017(子育て家庭応援ビジネス賞)」や「女性のチャレンジ賞特別部門賞」(内閣府)の受賞経験もあるスーパーウーマンだが、起業の第一歩はシングルマザーとしての身の回りの悩みから始まった。起業前から現在に至るまでの波乱万丈を聞いた。

(※本記事は、2022年5月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

中澤仁美 ≫ 文 波多野 匠 ≫ 写真

馬場加奈子(ばば・かなこ)

学生服リユースさくらや創業者
「さくらや」創業者。3児の母。自らの困窮家庭経験と知的障害児の子育て経験から、2010年に全国初の学生服リユースショップ「さくらや」を開業。1日5時間、週4日営業でも成り立つビジネスモデルが「子育て中の母親でも取り組みやすい」と評判を呼び、パートナー制度により全国拡大。ゼロから始めた学生服リユース事業は市場規模3億円まで成長した。自らの経験を生かし、セミナーなどを通して「地域共感ビジネス」の普及に努めている。

シングルマザーが見せた折れない心

馬場 加奈子

「学生服を買えない」という切実な悩みが、すべての始まりです

従来存在しなかった市場を生み出し、3億円規模まで拡大させる―。新進気鋭のベンチャー企業の話ではない。これを成し遂げたのは「普通の母親」だ。全国初の学生服リユースショップ「さくらや」を立ち上げた馬場さんだが、滑り出しは順調とはいかなかった。

「長女が知的障害を抱えて生まれてきたとき、いつか一緒に働ける環境をつくりたいと思いました。しかし、特別な技術やアイデアがなかった当時の私は、なかなか第一歩を踏み出せなかったのです」

その後、3人の子どもを育てる中で、離婚を経てシングルマザーになった。生活は厳しく、時には電気やガスを止められることもあったという。生きるのに必死な時期を乗り越え、ようやく末っ子が保育園に入ったとき、再就職先として選んだのは生命保険会社の法人営業職だった。

「企業のトップと交流しながら生活費を稼げるなんて最高!そう思って働き始めましたが、現実は甘くなかった……。それでも上司に恵まれ、勧められたD・カーネギーの本を頼りに勉強した結果、4年後にはビジネスの基礎知識と300万円の起業資金を得ていました」

時を同じくして、馬場さんは「ビジネスのタネ」も見つけていた。

「地元である香川県高松市では公立でも小学校から制服があるのですが、買い替えが経済的に厳しくて……。朝から晩まで働く私には、気軽にお下がりをもらえるようなママ友ネットワークもありませんでした」

この話を職場ですると、似たような困りごとを抱えている人が多数いることが分かった。これを学生服のリユース事業で解決すると同時に、かつての日本にあったような地域コミュニティーも再生できたら――。起業の指針が見えた瞬間だった。

地域のお母さんたちが口コミで広めてくれた

まずは同業他社の研究から始めようと思ったが、いくら探しても見当たらず、すべてを手探りで進めなければならなかった。

「地域のお母さんたちにアンケートを行い、デザインや価格の一覧表をつくりました。当初はうさんくさい目で見られることも多く、信用を得るため早々に店舗を借りて『さくらや』を開業。子どもたちと一緒に毎晩200枚もチラシを配ったり、ブログを1日10回更新したりと、できることを全力でやる毎日でした」

出費ばかりかさんで不安が募ったが、一人のお母さんが店を訪れて「こんな店がほしかったの!」と喜んでくれた。その姿を目の当たりにして、「絶対にさくらやを守っていこう」と決意が固まったという。

「お母さんたちの口コミで『さくらや』の名前が広がっていくスピードに驚きました。地域の困りごとが基盤にあるからこそ、図らずも広報担当者のように動いてくださる方々が増えていったのでしょう」

とはいえ、1年目に取り扱ったリユース学生服は約50着にとどまり、店舗のスペースを埋めるには到底至らなかった。しかし、そのスペースを無駄にはしなかった。

「お母さん同士で悩みを話し合ったり、子どもたちを呼んでおやつ会を開いたりと、無料で参加できるイベントを開催したら大好評でした。コミュニティースペースの展開について、自治体から講演依頼まで来るようになりました」

2年目にはリユース学生服の取り扱いが1500着にまで増え、売上も倍以上に伸びた。そこで課題になったのが洗濯や刺繍取りの工程だった。

「私だけではこなしきれなくなったので、長女が通っていた障害者施設に洗濯を、地域の高齢者に刺繍取りを委託しました。地域に眠る人材を掘り起こし、雇用を創出することでネットワークが広がっていきました」

馬場 加奈子

地域の人材を掘り起こし、ネットワーク化すべし!

人とのつながりを大切に未知の世界を楽しもう

開業から数年たつと、「さくらや」の事業を手がけたいという声が全国から届くようになった。パートナー制度による新規開業を進め、現在は全国各地に90店舗以上を数えている。

「希望者の面接では、リユース事業への思いを何よりも重視します。しかし、思いばかり先行してもビジネスは成り立ちません。パートナーには、売上や利益といった数字を見る重要性を口酸っぱくして伝えています。利益が出るからこそ事業を継続でき、地域貢献にもつながるからです」

店舗数が増大するにつれて、仕入れが不足するという問題も出てきた。そこで、「子供の未来応援国民運動」(内閣府)へ参画し、「ツナグ回収ボックスプロジェクト」をスタートさせた。不要になった学生服を回収するこのボックスは、大企業やスーパーの店頭、自治体などに設置されている。

「困窮家庭のお子さんが民生委員と一緒に『さくらや』を訪れることもあります。まだまだ地域には困窮する家庭が多いことを知ってもらうきっかけにもなる取り組みです」

仕入れの心配はなくなったが、集まる学生服のうち商品になるのは約2割。多くはデザイン変更や破損のため廃棄対象となる。

「その対策として、繊維リサイクルを可能にしたベンチャー企業と手を組み、廃棄予定の学生服がTシャツやエコバッグに生まれ変わる仕組みを整えました」

自分の困りごとを地域の困りごとと捉え、ネットワークを構築しながら解決を図る――。
ESG経営やSDGsといった注目のキーワードが馬場さんを後追いしているようにすら見えるが、本人はあくまで自然体だ。

「私の基盤は、やはり身近なコミュニティー。これからも人と人とのつながりを大切にして、『何が起こるか分からない世界』を楽しんでいきたいです」

馬場 加奈子

ワークショップ開催時の様子。

馬場 加奈子

さくらや店舗のお写真

馬場 加奈子

さくらや店舗のお写真

馬場 加奈子

企業で開催された講演会の様子「地域共感型ビジネス」の講演会を各地で行っている。

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