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麻生川静男【第3回】本物の歴史書を繰り返し読むべし – 奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 – [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
【コラムジャンル】
リベラルアーツ , 奴隷 , 技術 , 教養 , 本物 , 歴史書 , 特集 , 生きた , 生きる , 第3回 , 繰り返し , 自由人 , 読む , 身につける , 麻生川静男
2019年01月14日
奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 - [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
「リベラルアーツは知識ではなく技術(わざ)」
「リベラルアーツ」とは何か? その理解は人によって大きなばらつきがある。そこで、リベラルアーツ研究の第一人者である麻生川静男氏に、その歴史や中身、現代人にとっての意義、そして身につけ方について伺った。
白谷輝英 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2018年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
本物の歴史書を繰り返し読むべし
多くの人は、リベラルアーツを「学びごと」だと思っています。そのため、「チャート式」で分かりやすく書かれた本を読んで知識を蓄えれば、手軽にリベラルアーツが身につくと考えがちです。しかし、それは大きな誤りです。改めて強調しておきますが、リベラルアーツは知識ではなく技術(わざ)なのです。
学問と技術の違い
例えば、子どもが二次方程式の解法を習い、きちんと理解できたとします。するとその子どもは、すぐ他の人にやり方を教えられるでしょう。ところが水泳の場合、そうはいきません。泳ぎ方をレクチャーされ頭で理解できても、実際に泳げるようになったり、他人に教えられるようになったりするまでには時間がかかります。これが、学問と技術の違いです。技術は何度もトレーニングを重ねることで初めて体得できるものです。同様に、そもそもリベラルアーツは一朝一夕に身につけられるはずがないのです。それでは、どうすればリベラルアーツが身につけられるのでしょうか。私がお勧めしたいのは、「本物の歴史書」を読むことです。中でも読んでいただきたいのが、偉人の言葉や行動を記した「人物伝」です。
繰り返し読み理解に努めることで自分の考えを築く
こうした人物描写主体の歴史書は、岩波文庫、講談社学術文庫、ちくま学芸文庫、京都大学学術出版会などから日本語で数多く出版されています。そのいくつかを紹介しましょう。プルタルコスが著した『プルターク英雄伝』(古代ギリシアやローマの政治家・軍人の伝記を集めた本)、ヘロドトスの『歴史』(ギリシア、ペルシア、エジプトなど古代オリエント世界の歴史・地理をまとめた本)、リウィウスの『ローマ建国以来の歴史』(ローマ建国から第三次マケドニア戦争までの歴史をまとめた本)、司馬遷の『史記』(中国前漢の武帝の時代にまとめられた中国の歴史書)などは、偉人の人物伝・言行録としては最上級のものです。
また、来日した外国人が記した旅行記や、海外に出た日本人が記した本を読むのもいいでしょう。例えば、ゴロヴニンの『日本幽囚記』(江戸幕府に捕縛されたロシア帝国の軍人による記録で『日本俘虜実記』ともいう)、明治初期の「岩倉使節団」の『特命全権大使米欧回覧実記』(太平洋を横断した使節団一行の見聞録)などを読むと、日本人と外国人の考え方の違いなどが浮き彫りとなり、生きた世界観が養えます。
こうした書物には、「ここが重要!」とか事件の関連をまとめたチャートなどは一切ありません。ですから、少なくとも三度は読んで理解に努める必要があります。そうすることで始めて自分なりの腹落ちする人生観と世界観を築くことができるのです。
講師紹介
麻生川 静男(あそがわ・しずお)
リベラルアーツ研究家・元京都大学 准教授・工学博士
京都大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修了、徳島大学工学研究科後期博士課程修了。京都大学大学院在学中に、サンケイスカラシップ奨学生としてドイツ・ミュンヘン工科大学に留学。その際に強烈なカルチャーショックを受け、独力でリベラルアーツに取り組みはじめる。住友重機械工業在職中、アメリカ・カーネギーメロン大学に留学し、同大学工学研究科を修了。その後、カーネギーメロン大学日本校プログラムディレクター、京都大学准教授を経て、「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立、運営していた。新著『資治通鑑に学ぶリーダー論~人と組織を動かすための35の逸話』(河出書房新社)など、著書多数。
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「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立、運営していた。リベラルアーツ研究家、元京都大学准教授、工学博士 麻生川 静男 講師のプロフィールはこちら