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麻生川静男【第4回】現代人にとってもリベラルアーツは不可欠 – 奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 – [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
【コラムジャンル】
リベラルアーツ , 不可欠 , 奴隷 , 技術 , 教養 , 特集 , 現代人 , 生きた , 生きる , 第4回 , 自由人 , 身につける , 麻生川静男
2019年01月28日
奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 - [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
「自らの頭で考え抜いた意見を堂々と自己主張をする技術を磨くべき」
「リベラルアーツ」とは何か? その理解は人によって大きなばらつきがある。そこで、リベラルアーツ研究の第一人者である麻生川静男氏に、その歴史や中身、現代人にとっての意義、そして身につけ方について伺った。奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。
白谷輝英 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2018年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
現代人にとってもリベラルアーツは不可欠
私は若い頃、ドイツに留学しましたが、驚いたのは、大人から子供まで、ドイツ人の誰もが自分の意見を持っていたことでした。彼らは子どもの頃から、自力で考え、それを表現するよう育てられています。その結果、多少誇張して言えば、彼らは例外なくわがままで自己主張が強い人たちばかりです(笑)。ただ、ドイツは不思議な国で、結束力は強いのです。彼らはひるむことなくガンガンと自己主張をして激論を戦わせますが、結論が出たらそれに従います。これが民主主義精神なのです。古代ギリシア・ローマでも、事情は同じです。欧米では、個人の自立心と国としてのまとまりが両立しているのです。
日本人も考えを自己主張する技術を磨くべき
これに対し、日本では自己主張を抑え、「なあなあ」の状態で表面だけまとまっているケースが多いように見受けられます。これではいざという時、バラバラになる危険性があるのではないでしょうか。日本人も、自らの頭で考え抜いた意見を堂々と自己主張をする技術を磨くべきだと思います。
現代のグローバル社会では、多様な価値観や文化背景を持つ人々と交わり、彼らを引っ張っていくリーダーシップが求められます。しかし、これは多くの日本人が苦手としています。三菱商事の海外駐在員だった斎藤親載氏の著書『アフリカ駐在物語』(學生社)には、「日本人は愛されるが、尊敬されない。英国人は嫌われるが、それでも尊敬される」とあります。これは非常に的確な指摘だと思います。日本人は、あらゆる手段を使ってでも周囲の人々を説得し、目的を遂行するための技術と度量に欠けています。グローバル社会においてこれはかなり大きな欠点といえます。
しかし、人物伝などを読めば、偉人たちの生き様をバーチャル体験できます。歴史上に燦然と輝く人々が、自国を勝利に導くためにどう考え、どんなロジックとレトリックを駆使したのか。また、どのような信念を持って行動し、どんな結果を生み出したのか。繰り返し読み返し、彼らの価値観や行動様式、レトリックやコミュニケーションを学びとってください。
感銘をうけたら、ためらわず実践
リベラルアーツは技術と言いましたが、本を読んで感銘をうけたら、ためらわず実践してみてください。一回でうまくいくことはありません。何度も失敗しながら、徐々に本から得た借り物の人生観や世界観が自分の考えの柱となってきます。
奴隷ではなく、自立しリーダーシップを発揮できる「自由人」として生きる。そのために、リベラルアーツはなくてはならないものなのです。
麻生川静男 – 奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。
– [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-(了)
講師紹介
麻生川 静男(あそがわ・しずお)
リベラルアーツ研究家・元京都大学 准教授・工学博士
京都大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修了、徳島大学工学研究科後期博士課程修了。京都大学大学院在学中に、サンケイスカラシップ奨学生としてドイツ・ミュンヘン工科大学に留学。その際に強烈なカルチャーショックを受け、独力でリベラルアーツに取り組みはじめる。住友重機械工業在職中、アメリカ・カーネギーメロン大学に留学し、同大学工学研究科を修了。その後、カーネギーメロン大学日本校プログラムディレクター、京都大学准教授を経て、「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立、運営していた。新著『資治通鑑に学ぶリーダー論~人と組織を動かすための35の逸話』(河出書房新社)など、著書多数。
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「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立、運営していた。リベラルアーツ研究家、元京都大学准教授、工学博士 麻生川 静男 講師のプロフィールはこちら