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田村勇人 弁護士がすすめるビジネスパーソンが観るべき映画~人間関係を映画で学ぶ~

田村勇人【第2回】真実を見極めるために大切なこと – 弁護士がすすめるビジネスパーソンが観るべき映画~人間関係を映画で学ぶ~

田村 勇人

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弁護士がすすめるビジネスパーソンが観るべき映画~人間関係を映画で学ぶ~

真実を見極めるために大切なこと。人の証言から「何が起きたのか」という真実を見極めるためにはどうしたら良いでしょうか?いくつかのポイントを理解していきましょう。

多くの一般民事・刑事・医療過誤・企業法務等、幅広い分野における事案を解決している弁護士田村勇人が、法律だけでなく人間への洞察を活かして事件を解決してきた経験から、新たな視点で名作の映画をとおして、人間関係を解説する。今回のテーマは、世界の黒澤明の代表作「羅生門」を題材に真実を読み取ることの難しさ、そしてその理由などをお伝えしていきます。

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真実を見極めるために大切なこと

人の証言から「何が起きたのか」という真実を見極めるためにはどうしたら良いでしょうか?

面談や面接、企業部内の不正調査などで、一般の方が対象者に事情聴取をする機会にありがちなミスをなくし、真実にたどり着ける判断方法と聞き方について少しでも伝わればと考えております。

真実を見極めるのにまず大切なことは、
「その人の言う言葉は、必ずしもその人の言いたいことではない」
「言葉というよりも、その人がその言葉を発言する背景を読み解くことが必要」
という理解です。

詳しく説明していきましょう。

――その人の言う言葉は、その人の言いたいことではない 人間は目で見たものではなく、脳で認識したかったもの・・・・・・・ ) だけを認識します。つまり、「人間の認知能力には誤作動が起きやすく」、また「記憶の通りに話すとは限らない」のです。

人間はまず
①見たものを認知する段階
②認知したものを記憶する段階
③認知したものを表現する段階
でそれぞれ誤りをおかしやすいのです。

真実を見極めるためには、この3つの段階で誤りがないかを確認することが必要です。

段階①「人間の認知能力は誤作動しやすい」認知バイアス

以下の実験があります。

若者がバスケットボールをパスし合っている様子がテレビモニターを通じて中継されています。
若者はそれぞれ白シャツ組と黒シャツ組とに分かれていて、それぞれ1個のボールを同じ色のシャツの仲間とだけバスケットボールをパスし合っています。
被験者は、白シャツ組がパスしている回数を数えるように言われます。
そして、数えた後、「何か画面で変わったことがなかったですか?」と聞かれると半数の人は「何もなかった」と答えるそうです。

しかし、テレビモニターを再度見てみると、大きなゴリラの着ぐるみが画面を横切っているのです。「白いシャツ」の人に注目し、ボールがパスされる回数を数えることに集中すると、人間は目の前を横切るゴリラにさえ気づかないのです。また、よくある幽霊トンネルのシミが幽霊の顔に見えたりするのも、このような認知能力の誤作動と言われています。

私たちが、他人が着ている服を背景の色や風景で異なる色に見えることがあるのも同じように、「目でみたものをそのまま認知できない」のです。 では、なぜこのように人間の認知能力は誤作動しやすいのでしょうか。人間は長い間、周囲から危険を避けるために正しい判断よりも、危険をいち早く察知する必要性にかられてきました。そのためには、目から入った情報を素早く脳で判断する必要があります。

サバンナでは、はるか先に見えるのがヒョウなのか猫なのか判断している暇はありません。また、茂みに潜む敵や山賊が、木と光による錯覚だったとしても、いち早く逃げた方が安全なのです。その結果、厳密な正しさよりも、パターンによって認知を類似化する脳力が身につき、このような認知バイアスが生じるのです。

段階②「記憶の通りに話すとは限らない」表現バイアス

以下の事例があります。

ある警察署に強盗の通報が同時に2件ありました。
2人とも同じ現場を見て、すぐに電話をかけたのでほぼ同時に通報しています。
しかし、犯人の特徴は全く異なっていました。

2人とも現場を見ながら話しているわけですから、短期的な記憶しか入る要素がありません。このような場合であっても人間は表現方法を全く異にするのです。民族によって虹の色の数が異なったり、私たちが信号の色を青といったり緑といったりすることもこの範疇の事例でしょう。

段階③「表現の際に刷り込みが入る可能性がある」

また、話す人間のミスではなく、質問者によって巧妙な誘導を加えられた結果、記憶の通り話すことができない場合があります。

例えば、交通事故の現場を見た証人に「車が接触したとき、どのくらいのスピードでしたか」と聞く場合と、「車が衝突したときどれくらいのスピードでしたか」と聞く場合とでは、答えるスピードが異なり、接触と聞かれたほうが遅いスピードを選択するそうです。

また、妻へのDVが疑われている男性がどんなに「DVはやっていないと答えよう」と考えていても、初めての法定で緊張している中、「妻を殴りましたか?」と聞かれるのではなく、「もう妻を殴ることはやめましたか?」と聞かれると、「はい、もうしないです。」と答えてしまうことがあるのです。

このように弁護士は敵対的証人に対して、引き出したい証言に応じてこのような刷り込みをうまく使うのです。では、人間は話そうとする認識と出てくる言葉が異なることが多いとなると、どのようにすれば真実が見えてくるのでしょうか。

相手が話す言葉自体は重要な要素です。しかし、その言葉自体を信じるのではなく、言葉が出てくる理由を考察することが必要なのです。また、その言葉と客観的な状況との矛盾や一致から最も可能性の高いストーリーを構築することが大切です。


今回は、真実を見極めるためには、『その人に悪意がなくとも、誤った証言をしている可能性があることを知る』ということの重要性についてお話ししました。次回は、真実の見極め方を具体的に解説していきます。

第3回ヘつづく。

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職場コミュニケーション活性化講演会、医療現場課題解決講演会などができる田村 勇人弁護士法人 フラクタル法律事務所 代表弁護士
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