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「おとなの図工クラブ」でチームビルディング
「おとなの図工クラブ」で「ホンネ」でチームビルディング
子どもの頃は自由気ままに画用紙に向かっていたのに、大人になるにつれ正解を求め、自由な表現から遠ざかってしまう・・・。自分の本当の気持ちや感性を隠したままでは、真の関係性を築くことはできないのではないか。そんな課題意識から「おとなの図工クラブ」をはじめたという、鎌田奈那美さんのワークショップの魅力とは。
(※本記事は、2020年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
村上杏菜≫ 文 櫻井健司≫ 写真
ファシリテーター
鎌田 奈那美(かまた ななみ) 氏
おとなの図工クラブ/合同会社anohi代表
1988年、群馬県生まれ。幼少期より工作や絵を描くことを愛する。慶應義塾大学在学中、1年間オランダへ留学して社会科学を専攻する一方、オランダ在住の日本人画家のもとで油絵を学ぶ。大学卒業後はIT企業での営業を経て、出版社で趣味系雑誌の商品企画、マーケティングなどを担当。2013年、おとなのための自由な表現の場を求め、「おとなの図工クラブ」を立ち上げ、2018年法人化。現在、ビジネスマンや学生を対象にワークショップを開催している。
「図工」という非日常体験で本当の自分と相手を知る
なぜ「図工」をテーマにしたワークショップを?
幼い頃から図工が大好きで、大人になったいま、図工は既成概念にとらわれることなく自分と向き合うことのできる方法の一つです。以前勤めていたIT企業では、多くの人が常に建前ばかりで、疲れているように見えました。ディスカッションをしていても、お互いに本音を言わないため、良いアイデアや意見が出てこない。そんな萎縮した大人の姿には、とても違和感がありました。
いいチームって、まずそれぞれが自分の価値観を理解し、相手の本音を受け入れ、リスペクトし合える組織。その上で連携し合い、新しいものを生み出していける組織だと思うのです。
そこで、図工という方法を通じてまずは〝大人が自分を表現できる場を提供したい〞と考え、「おとなの図工クラブ」を始めました。自分の価値観をもとに、新しい価値を創造していけるスキルと本音で協業し合える組織の育成を目的にしています。
具体的にどんなことをするのですか?
まず、お題を決めて時間内に絵を描く「フラッシュドローイング」や「ハンドペイント」など、簡単なワークを3〜4つ行います。
お題は、「ぱあああああ」や「ぐぬぬぬぬ……」「仲間」「成長」といった抽象的なものです。お題をあえて抽象的なものにすることで、固定観念にとらわれずに、本音ベースのアウトプットがしやすくなります。抽象的なアウトプットに慣れてきたら本題へ。
企業や組織がこのワークを実施する目的、たとえば「ビジョンの共有」「アイデアジェネレーション」などのテーマに最適なワークを行います。ウォールペイントやフェイスペイント、箱庭(粘土と人形で作成)など、様々なパターンを提供しています。
その後、なぜそのような表現にしたのか、どういう意図があってこうしたのかを内省・言語化し、チームメンバー同士でシェアします。自分の意図や内面を本音ベースで共有し、お互いに尊重し合う経験がとても大切で、創造性の育成や本当の意味でのコラボレーションは、そういった対話と価値観の相互理解の上に成り立つと考えています。
「正解」「上手・下手」のない場。ワークを繰り返し、非言語での抽象的なアウトプットに慣らしていく。
目的は「正解」を出すことじゃない
参加者はどんな方がいますか?
現在、IT系やWEB系、外資系の企業様に多く利用いただいています。アートには心を癒す要素もあるので、メンタルヘルスケアに意欲的に取り組まれている企業様の利用も多いです。変わったところでは美容系の企業様と、そのクライアントである人材系の企業様の合同研修というケースも。「あなたにとって挑戦とは?」というお題でドローイングワークに取り組んでもらい、お互いの会社と、そこで働く人たちの相互理解と対話を深めていただきました。
図工が苦手だったり、アートがよくわからなかったりする参加者にも効果はあるのでしょうか。
「正解を出そうとしない」「謙遜や遠慮は禁止」「違いを楽しむ」-この3つのルールを最初にお伝えしています。上手・下手は関係なく、アウトプットは絶対にみんな違うものになるのがこのワークショップの面白さであり、それをお互いに尊重することが大切です。クレヨンや絵筆などの道具は太めのものを用意したり、指で描いてもらったりと、あえて上手に描くのが難しい状況を用意しているのもポイントです。正解を出すこと、上
手く作ることが目的ではなく、あくまで自分を表現する手段として取り組んでもらうので、図工が苦手という人でもまったく問題ありませんし、得られるものがあります。
正解を求められない安心安全な場だからこそ、お互いの感性と価値観を理解し、許容し合うことができる。なにも縛られることなく、自分のことを語るのって実はすごく楽しいんですよ。このワークショップでは、大人が本音で自分のことを語り、お互いの違いを楽しみながらチームビルディングできる場、新しい価値を生み出す術を学べる場を目指しています。
「ビジョンの共有」「アイデアジェネレーション」などのテーマにウォールペイントやフェイスペイント、箱庭(粘土と人形で作成)など様々なワークを行う。同じお題でもまったく違う作品が完成する。
合同会社anohi
東京都目黒区中目黒1-1-17-708
https://otonanozukoclub.com
本音を隠して建前で生きる大人たちに違和感を持ち、自分と向き合い自由に表現する場を作ろうと2013年より「おとなの図工クラブ」を開始。
「図工」ならではの非日常的な創造体験、対話の時間を通して強く記憶に残る気づきと学びの場を提供している。2018年に法人化し、大人を対象にしたさまざまなオリジナルワークショップを企画・運営。法人向け企業研修やオフサイトミーティングから、個人向けのイベント出展までニーズに合わせてプログラムを設計。研修の効果を一時的なものにとどめず、長期的にサポートしていくためのツールも提供している。