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「ハモニケーション®」が組織と人に調和をもたらす
心地よい空間をみんなで─「ハモニケーション®」が組織と人に調和をもたらす
誰もが一度は耳にしたことのあるCMソング『この木なんの木』。2005年からその歌唱を担当するアカペラグループ『INSPi』のリーダー杉田篤史さんは、20年以上のアカペラ経験から〝周囲とうまくハモる術〟を体得してきたという。そんな杉田さんが代表を務める株式会社hamo-laboでは、組織のなかで人と人が調和するためのヒントを学ぶワークショップ「ハモニケーション」を提供している。大学と共同研究が行われるほど注目されている〝ハモり〟とは。
(※本記事は、2020年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
村上杏菜≫ 文 櫻井健司≫ 写真
ファシリテーター
杉田 篤史(すぎた あつし) 氏
株式会社hamo-labo 代表取締役CHO/アカペラグループINSPiリーダー/株式会社hamo-labo 代表取締役CHO
1997年大阪大学でINSPi結成。2001年にフジテレビ系『ハモネプ』出演後、メジャーデビュー。THE BOOMの宮沢和史氏や長渕剛氏らと楽曲共作。2005年より日立CMソング『この木なんの木』担当。2017年よりINSPiの活動と並行して「ハモニケーション®」ワークショップ研修をスタートし、三菱重工業、コクヨ、リコージャパンなどで実施する。10カ国以上の海外公演と現地でのワークショップ多数。2019年2月、株式会社hamo-labo設立。愛媛大学社会共創学部の羽鳥剛史准教授らと、ハモりと社会合意形成の関連について共同研究をすすめている。
組織の不調和=「ハモれていない」状態
「ハモニケーション」とは何でしょうか?
アカペラを通じたコミュニケーションのことです。アカペラでは〝ハモる〞ことがとても重要で、ワークショップではメンバーと作り出すハーモニーを体感してもらっています。〝ハモる〞とはつまり〝調和〞のこと。家庭、会社、地域など様々な組織において〝調和〞を作り出すためのヒントをアカペラを通じて学んでいただきます。
実は、ハモって全員がひとつにまとまると、すごく幸せを感じられるんです。メンバーと同じ輪のなかにいる喜びや貢献感、一体感など何ともいえない幸せな感覚が得られます。こればかりは体験してもらわないとわからないかもしれません。
ワークショップの具体的な内容を教えてください。
まずは手拍子やボディパーカッションなど、リズムを使った簡単なワークを体験したあと、簡単な発声練習をします。シンプルな『ド』と『ソ』などの2声のハモりからはじめるので難しくはありません。後半に入るとアカペラで曲を歌っていきます。時間やテーマにもよりますが、丸々1曲ではなくワンフレーズ、ツーフレーズくらいの簡単なものが多いです。みんなが知っているビートルズの『レット・イット・ビー』や、CMソング『この木なんの木』などです。楽譜が苦手な人でも、感覚的に歌えるような仕組みがあるので問題ありません。
パートに分かれて練習したあと、全体で合わせ〝ハモる〞ことを目指します。少し慣れてきたら、「どうやったらもっとハモれるか」「どうしたらもっと楽しいか」などをみんなで考えます。「揺れる」「手拍子をする」など、出てきた意見を実践し、全員で場を作り上げていきます。また、〝お互いに自己開示を進めたい〞〝コミュニケーションを深めたい〞などの要望やテーマに合わせて、「みんなで歌詞を作る」「ダンスや振り付けを考える」などのワークも追加できます。
お互いを受け入れることで生まれる信頼感
体験することで、どんなことが身に付きますか?
学べるポイントとしては、「Respect(尊重)」「Reception(受容)」「Reliance(信任)」の「3つのR」があると考えています。自分の周りの音を関心をもって聴き、受け入れ、信頼して身をゆだねる。その3つができてこそ〝ハモる〞が成立するのです。実際の受講者からも、「他人の声(意見)を実は聴いていなかった自分に気づけた」「周りを意識しすぎて自分の声が小さくなっていた。歌も日常でも、思い切って声や意見を出すことが大事だと思った」といった感想をいただいています。
全員で一体となって成果を出していくためには、〝お互いの声(意見)を聞くことが大切〞ということを、職場の人間関係などに応用してもらいたいと考えています。
歌うことに抵抗感のある人はどうすればよいでしょうか…。
手拍子や聴き役としての参加でもOKとお伝えしています。「さっきと比べてこうだった」「さっきより良かった」など、客観的なフィードバックを伝えてくれる聴き役はとても重要です。ただ、このワークショップは手拍子などのリズムワークから徐々に歌へと移っていくので、気がつくと最後まで参加している人がほとんどです(笑)。
音楽って本来〝マルかバツか〞ではないんです。少しズレた音やリズムはむしろ、音楽全体に深みや含み、広がりを与えてくれ、それが音楽全体の豊かさにつながります。「みんなにとって心地いい音楽にしよう」という気持ちさえあれば無駄な音もリズムもない、僕はそう思っています。ハモニケーションを通じて、主体的に人が団結していく力や、お互いの声を受け入れることで生まれる信頼感、その結果、良いものが出来上がるという幸せな循環を、ぜひ体感していただきたいです。
株式会社hamo-labo
東京都大田区山王2-3-3
http://hamo-labo.co.jp
アカペラグループ「INSPi」のメンバーの病気をきっかけに一般企業で会社員生活をしていた際、組織のなかの不調和、ハーモニーの乱れにより苦しむ人がたくさんいることに気づき、ワークショップ「ハモニケーション®」の構想を思いつく。20年以上のアカペラ経験から得た「ハモる喜び」「ハモるための心構え」をもとに、アカペラを通じたワークショップやイベント、研修を行っている。ハーモニーで「お互いを最大限に評価しあえる社会」の実現、そして音楽の力で社会に貢献する仲間の集まる旗印となることを目指している。