働き方・生き方
BUSINESS SKILLS COLUMN LIST ビジネススキル
竹中平蔵【第1回】「地図」より「コンパス」が求められる時代 – 変革の時代に求められるモチベーション
変革の時代に求められるモチベーション
「これからの時代には、再び自分なりの「コンパス」を持つことが重要」
政財界で活躍し、日米の大学などで教鞭を執ってきた竹中平蔵氏。世界の政治・経済リーダーたちが一堂に会する「ダボス会議」(世界経済フォーラムの年次総会)にも参加するなど、世界的視野で日本の未来を見据える竹中氏に、日本の強みや課題、ジャパンパワーの一翼を担うビジネスパーソンがモチベーションを高め、維持する秘訣などをうかがった。
田村知子 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2016年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
「地図」より「コンパス」が求められる時代
これからの時代には、再び自分なりの「コンパス」を持つことが重要。
日本のビジネスパーソンのモチベーションは、時代によって変化してきていると思います。近代化を志した明治維新の頃は「欧米に追いつけ、追い越せ」。しかし当時は、MBAプログラムのようなモデルは何もない。毎日が経済危機というような混沌とした時代の中で、誰もが自分の頭でモノを考え、行動していました。いわゆる「地頭」を使っていたんですね。
ところが、第二次世界大戦に敗れた後は状況が一変。日本の各産業がアメリカという明確なモデルに向かって突き進み、高度成長期を迎えます。そうした中では、偏差値の高い有名大学を出て、一部上場の大企業に勤め、管理職に就く。それが、ビジネスパーソンの1つの幸せのモデルになっていました。
ここでご紹介したい言葉があります。それは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボが、インターネットの登場による時流の大きな変化を示したキーフレーズの1つです。Compass over Maps―つまり「地図よりもコンパス」が重要な時代ということです。
明治時代には地図はなく、進むべき進路の軸となるコンパスを求めて、皆が自分の頭で懸命に考えた。戦後は明確なモデル、つまり「地図」があったため、それを頼りに進めばいい時代だったわけですね。しかし、今となっては、そんな「地図」はもうありません。”いい大学”を出て、”いい会社”に就職したとしても、その会社が不祥事を起こして経営危機に陥ったり、買収されたりするかもしれない。実際、これらのことは起こっています。そうした今の時代、そして、これからの時代には、再び自分なりの「コンパス」を持つことが重要だと思います。
講師紹介
竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
1951年生まれ。1973年一橋大学経済学部卒業。ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年小泉内閣の経済財政担当大臣に就任。以後、金融担当大臣、総務大臣などを歴任。2016年3月に慶應義塾大学教授を退官後、東洋大学国際地域学部教授に就任。その他、アカデミーヒルズ理事長、パソナグループ取締役会長、オリックス株式会社社外取締役などを兼職。博士(経済学)。
講師への講演依頼はノビテクマガジンで!
金融・経済・政治以外の分野においても、広い見地と知識、経験、素晴らしいお人柄から
「深く」、「身になる」、「楽しい」、講演をされます。慶應義塾大学名誉 教授/パソナグループ取締役会長
竹中平蔵 講師のプロフィールはこちら