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竹中平蔵【第2回】真の「日本人らしさ」を思い起こす – 変革の時代に求められるモチベーション
変革の時代に求められるモチベーション
「復元力を思い起こすことが、日本人の力になる」
政財界で活躍し、日米の大学などで教鞭を執ってきた竹中平蔵氏。世界の政治・経済リーダーたちが一堂に会する「ダボス会議」(世界経済フォーラムの年次総会)にも参加するなど、世界的視野で日本の未来を見据える竹中氏に、日本の強みや課題、ジャパンパワーの一翼を担うビジネスパーソンがモチベーションを高め、維持する秘訣などをうかがった。
田村知子 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2016年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
真の「日本人らしさ」を思い起こす
「日本人らしさ」という言葉は、変革を拒もうとする時によく使われるので注意したいところですが、それでもやはり、前向きなエネルギーとなる「日本人らしさ」は存在します。
前回の記事のMITのキーフレーズには「Resilience over Strength(強さよりも復元力)」というものもあります。2011年3月11日に起こった東日本大震災の報道で、海外メディアは日本に対して、この「Resilience」という言葉をよく使いました。私はこれこそが日本人らしさであり、日本人が持つ最大の力だと思います。日本は世界の中でも自然災害を多く受けてきた国ですが、その度に立ち上がってきました。倒れても、失敗しても、立ち上がる。この復元力を思い起こすことが、日本人の力になるでしょう。
日本人の特徴には「ソシオ・キャピタル(社会関係資本)」を持っていることが挙げられます。18世紀の終わり頃、日本の江戸は100万人都市でした。一方、イギリスのロンドンやフランスのパリは50万人都市。アメリカのニューヨークの人口は3万3000人程度でした。日本は200年以上前から、狭い地域で肩を寄せながら暮らす中で、互いに譲り合うような社会を築いてきたのです。例えば、東日本大震災の時も、帰宅困難者がタクシーを待つ列に何時間も並んだが、暴動が起きなかったといったことが海外メディアで取り沙汰されたのは、ほかの国では考えられないことだからです。
ただ、このソシオ・キャピタルは、日本の強みである一方、弱みともなっています。日本は経済大国で豊かだといわれますが、実際は決してそうとはいえません。国や地域の生産性の高さの目安となる1人当たりのGDP(国内総生産)は、為替レートによって変動はあるものの、先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)の34カ国中、日本は20位。ルクセンブルク、ノルウェー、スイスの上位3カ国の1人当たりのGDPは、日本の2倍以上あります。人口が多い国では1人当たりのGDPが低くなるのは仕方ないところもありますが、日本は近年、下り続けているんですよね。これだけ経済が悪化していても危機感を持ちにくいのは、ソシオ・キャピタルがあるがゆえに、快適に暮らせてしまうからでしょう。
講師紹介
竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
1951年生まれ。1973年一橋大学経済学部卒業。ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年小泉内閣の経済財政担当大臣に就任。以後、金融担当大臣、総務大臣などを歴任。2016年3月に慶應義塾大学教授を退官後、東洋大学国際地域学部教授に就任。その他、アカデミーヒルズ理事長、パソナグループ取締役会長、オリックス株式会社社外取締役などを兼職。博士(経済学)。
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金融・経済・政治以外の分野においても、広い見地と知識、経験、素晴らしいお人柄から
「深く」、「身になる」、「楽しい」、講演をされます。慶應義塾大学名誉 教授/パソナグループ取締役会長
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