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山田真紀【第27回】受講者の心に火をつけるために必要なこと – 研修講師リレーコラム
山田真紀プロフィール
山田 真紀(やまだ まき)
研修講師
新卒でANAに客室乗務員として入社。国際線のチーフパーサーとして乗務し、政財界のVIPフライトやPR活動を担当。人財育成・評価を行いながら、組織活性化のプロジェクトにも携わった。16年経たのち独立し、接遇、コミュニケーション、チームマネジメントなどを中心に、研修や講演、コンサルティング、コーチングなどを開始し、現在に至る。主な著書に『あなたの魅力を爆発させる方法』(文響社))、『人生をシンプルにする本』(ダイヤモンド社)などがある。
(※本記事は、2020年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
受講者の心に火をつけるために必要なこと
研修における講師のミッションは、求められるスキルやマインドを受講者に身に付けていただくことです。しっかりとしたコンテンツがあり、教え方のテクニックがある講師なら、簡単にクリアできそうに思われますが、実はそう簡単なことではありません。なぜなら、人は心を開いた相手の話にしか耳を傾けないからです。
私自身、サラリーマン時代の若かりし頃にそのことを経験しています。出来の悪かった私は、多くの先輩からアドバイスをいただきましたが、同じことを言われているのに、ある先輩の言葉はずっしりと響き、他の先輩のときには何も感じないということがありました。未熟な新人時代に大変おこがましいことですが、アドバイスをくれる相手の〝人柄〞と〝姿勢〞によって、「素直に受け入れる」か「素直に受け入れられない」かを無意識に選別していたのです。
このような経験から、私が講師として登壇する際には、受講者に研修内容や伝えたいことを話す前に、心を開いてもらう(=信頼を得る)ために、〝人柄〞と〝姿勢〞を意識して整えるようになりました。
〝人柄〞と〝姿勢〞は、表情、振る舞い、話し方、話の内容などから伝わります。あなたが講師として研修をする際には、受講者に安心して心を開いてもらえるよう、温かい表情で話したり、説得力が増すよう、品格ある振る舞いを心がけてみてください。また、相手に関心を持って問いかけ、誠実さや熱心さを言葉や態度で表現することも大切です。目新しいことでも特別なことでもありませんが、コミュニケーション一つひとつにこだわり、いかに丁寧に伝えるかによって、受講者の講師への信頼度が高まるのです。
「相手は自分の鏡」と言います。受講者の信頼を得ようと誠実に努めるほど、受講者も同じように誠実に変化し、自主的に学ぼうという意欲が自然と芽生えます。〝人柄〞と〝姿勢〞を意識し、丁寧にコミュニケーションを取ることで、素直に話を聴いてもらえ、受講者の学習意欲に火をつけることも可能になるのです。
研修は1回で終わってしまうことも多いです。そして、エビングハウスの忘却曲線にもあるように、1日経つと学んだことの7割を忘れてしまいます。研修で学んだことを身に付けるためには、受講者自身が学ぶ必要性を強く感じ、終了後も学び続ける意志を抱いていただけるよう、研修時に受講者の心に火をつけることが不可欠なのです。
受講者にとって意義ある研修になるよう、人に心を開いてもらえる〝人柄〞と〝姿勢〞ができているか、私自身も常に見直しながら自己研鑽を続けています。