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新人の傾向2015 – 新入社員怪奇現象 検証倶楽部 RETURNS
【コラムジャンル】
2015 , ノビテクマガジン , マナー研修 , 対談 , 平井智子 , 新入社員怪奇現象 , 新入社員研修 , 水口政人 , 研修依頼 , 研修講師 , 藤川恭子 , 連載
2016年09月01日
「最近の新入社員は何を考えているのか分からない」といった声をよく耳にしますね。 |
(※本記事は、2016年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事をWeb版として再構成しました。)
おとなしいが、素直で 真面目な人が多い印象
2015年の新入社員を指導して、昨年と違うと感じた点はありましたか?
会社が違えば傾向も違ってきますので、「今年の新入社員は~だ」と分析するのは実は難しいですよね。
そうですね。私個人としては、昨年よりおとなしい人が多い印象を受けました。昨年までは、休憩中や研修後の帰り道で騒ぎすぎ、同じ研修施設にいる方や近隣住民の方からクレームが入るケースもあったものです。ところが今年は、そういった注意をする機会が減った気がします。
私は、意欲が高い人が増えたと感じました。「成果を出したい」「社会から認められたい」という意欲を持っている人は、昨年より増えたのではないでしょうか。
今まで専門学校・短大卒を中心に採用していた企業が、昨年くらいから四大卒を数多く採るようになっている気がします。また、「書く力」は向上していますね。研修終了後の確認試験などを見てみると、平均点はグッと上がりました。
一方、今年の新入社員に、昨年と共通する傾向はありましたか?
プライベートを大切にしたいと考える人の割合は、このところ、ずっと高いですね。ワーク・ライフ・バランスを意識した仕事の進め方や、多様化している働き方への理解が進むという意味では、いいことだと思います。
昨年と同様、突出して目立つタイプの新入社員が少ないように見受けられました。力強いリーダーシップを発揮する人が多くない代わりに、反抗的な態度を取るような人もいませんでした。素直で、真面目に取り組む人が多数派でしたね。
私も、研修に対して真面目に取り組む新入社員が多いと感じました。私が新入社員研修を受けた20年ほど前は、前の晩に飲み明かして研修中ずっと寝ている人も少なからずいたものです(笑)。ところが今は、そういったタイプはほとんど目にしません。ある企業の教育担当者の方に伺ったのですが、新人研修期間は、先輩社員が新入社員を飲みに連れ出すことを禁止しているということでした。
インターネットなどを通じ、自社の位置づけや評判を他社と比べる傾向が強いのも、ここ数年の新入社員の特徴ですね。つまり、企業が社員を選別するだけではなく、企業側も社員から選ばれているというわけです。企業に対し、自分の力をうまく伸ばしてほしいと期待する新入社員は、今後さらに増えるでしょうね。
新入社員に対して「厳しい指導」を求める企業が多い
新入社員研修に対する教育担当者の方からのご要望は、昨年と比べてどうでしたか?
こちらも企業によってそれぞれですが、内容については昨年同様のご要望をいただくケースが多かったですね。また、一部の企業からは、「厳しい研修」を求められました。
私も、「新入社員に対し、厳しく接してほしい」とリクエストされることが多かったですね。昨年もそうでしたが、新人のたるんだ気持ちを引き締め、社会人モードに切り替えてもらいたいというご要望は、毎年多いものです。
教育担当の皆様が、新入社員を大切に育てたいという思いは、強く感じますね。また、今年は外国人の新入社員に、日本人と同じ研修を受けさせるケースが増えました。グローバル化が進めば、外国人を日本で採用し、日本で研修する事例がもっと増えるかもしれません。
2015年の新入社員研修で、特に意識されていたことはありましたか?
本年度に限ったことではありませんが、教育担当者の方の意向をしっかり反映するように心がけています。当然のことながら、教育担当者の方は新入社員の皆さんと多く接していて、彼らの個性をよく理解されていますので、研修当日に初めて新入社員と会う私にとっては大変貴重な情報となります。このことは、新入社員研修に熱心な企業ほど当てはまると考えています。
新入社員一人ひとりの能力が少しでも伸びるように支援し、かつ、一緒に学ぶことを心がけています。そのためには、「知識をスキルとして定着させるため、いろいろな工夫を凝らす」「上から目線で教えるのではなく、新入社員に『気づかせる』ことを大切にする」「元気や勇気、自信を持って現場デビューできる」という3点に気を付けていますね。
毎年1つずつ、受講者との年齢差が大きくなっていきます。当然知っているだろうと思っていたことを相手が知らないケースや、想定外の反応が返ってくることが増えますので、できる限り受講者の話を伺いながら研修を進めています。また、何かを伝える際には、「なぜ」の部分を大切にし、考えてもらう時間をより多く取るように気を付けています。
新入社員の意欲を引き出していねいに育てることが大切
今年の新入社員研修で印象的だったエピソードはありましたか?
ある企業で40名ほどの新入社員研修を担当した際のことです。テキストのある部分を指し、「どなたか読んでいただける方は……」と声をかけたところ、間髪入れずに7~8名の方が前のめり気味に手を挙げました。「では、ぜひ読みたいという方どうぞ」と続けると、5名が一斉に立ち上がり、声を合わせて読み始めたのです。近頃の若い方は、周囲の目を気にする傾向が強く、横並び意識が生じやすいといわれます。でも、このように瞬発力や行動力を兼ね備えた新入社員の方たちを目の当たりにし、彼らの将来をとても頼もしく感じました。
素敵な話ですね。私も、新入社員のやる気に感動したエピソードがありましたよ。ある企業で新入社員研修を行ったとき、体調不良者が続出。「野外研修」から戻ってきたばかりで、全員が疲れのピークだということでした。三十数名いた受講予定者のうち、病欠が2名、病院に行くために早退した人が1名。さらに、マスクをしている人も10名以上いたんです。そうした状況にもかかわらず、全員が真剣に研修に取り組んでくださいました。このときは、彼らの健気な態度に涙が出そうでした。
最近の若手の中には、会社や社会に貢献しようとする意欲の高い人が増えていると感じます。企業からは、厳しく指導してほしいと頼まれるケースも少なくないのですが、あまり厳しくすると、若い方々の意欲をそいでしまう恐れがあります。それに、皆さんが本来持っているユニークな思考・キャラクターを封じ込めてしまうのはあまりにもったいない。そこで私たちも、基本的には暖かく、ときには厳しい態度で新入社員の成長を支援したいと思っています。上司や先輩、教育担当者の皆様も、新入社員の「ビックリ行動」を頭から否定するのではなく、ぜひ、ていねいに大切に育ててあげてください。