働き方・生き方
HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
河邑厚徳【第1回】キャリアを考えることは、自分の内面を見つめること – インタビュー「キャリアとは命を運んでゆくもの。」 – キャリアを真剣に考える
キャリアとは命を運んでゆくもの。常に「自分とは何者か」を問い続けながら成長していく。 - キャリアを真剣に考える
「キャリアを考えるとはつまり、自分に与えられた命の意味を考えること。」
映像ジャーナリストとして数々のドキュメンタリー作品を手がけ、多くのヒット作を生み出してきた河邑厚徳さん。40年余りにわたって「その時々に一番『伝えたい!』と感じたものを記録してきた」という河邑さんが、これからの時代のキャリア、生きること、育てることの本質に迫る。
岩崎知佳 ≫ インタビュー 櫻井健司 ≫ 写真 村上杏菜 ≫ 文
(※本記事は、2017年4月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
キャリアとは何か?
有名な大学を出て有名な企業に就職し定年したら悠々のセカンドライフ、という単一のキャリアが評価される時代は過ぎ去りました。働く意味、生きる意味を模索する若い世代が増えてきた今、「キャリア」の意味も改めて問われていると思います。もともとの英語の意味は「運搬」。では、運んでいるものとはいったい何なのでしょうか?
僕は、その人の”命”を未来に運んでいるのだと考えます。キャリアを考えるとはつまり、自分に与えられた命の意味を考えること。人生をどのように運んでいくのか、生きている意味を全うするにはどうしたらよいのか。内面を見つめ、自分にしかできないことを発見し、活かしていく。これからは学歴や職歴、業績、賞罰といった外側だけではなく、その人の中にある”価値”が意味を持つ時代になっていくでしょう。
キャリアを考えることは、自分の内面を見つめること
僕は「人」が大好きで、関心のある人たちをドキュメンタリーとして映像で記録し続けてきました。対象者や出来事を一方的に追っているようで、その実、同時に僕自身が「自分とは何か」への答えを問い続けてきたように思います。
作品も観る人の内面の”何か”を揺さぶります。人とは結局「自分」を追求し続ける生き物なのでしょう。若いうち、できれば学校教育の段階から「何のために学ぶのか」という根源的な問いにはじまり、自分を信じて生きていく力を育むことも大事だと思います。
人生は自分のもの
新卒でNHKに入局してすぐに映像を作り始めた僕はただひたすら目の前のことに一生懸命で、作品の出来について否定的な意見をもらうことも少なくありませんでした。表現する限り他者からの評価は避けて通れませんが、ただ一人からでも「あの部分が良かった」と認めてもらうことで救われてきたように思います。
これはどの職業でも同じで、一人の殻に閉じこもらずに、自分を理解し悩みや愚痴を共有してくれる仲間を見つけておくことは大事です。そのうえで、おおらかに見守ってくれる上司や先輩の下で育つことで可能性は大きく広がるはずです。時代的な余裕もあったからだとは思いますが、僕の上司も自由を尊重してくれる人でした。部下や後輩を一人の人間として認め、自由を与えることで信頼関係や安心感が育まれます。
思いつきや根拠のないアイデアに対しても頭ごなしに否定せず、ボーダーライン以上ならば任せてみて、結果は適切に評価する。自由こそが可能性を育てる、これは子どもも動植物も共通。過干渉を避け、可能性の芽をつぶさない。自由の余地を与えてこそ大きく育つのです。
講師紹介
河邑厚徳(かわむら・あつのり)
映画監督/元NHKエグゼクティブプロデューサー。1948年生まれ。元女子美術大学教授。大正大学教授。早稲田大学講師。NHK入局以来、現代史、芸術、環境、科学、宗教などを切り口に『がん宣告』『シルクロード』『アインシュタイン・ロマン』『チベット死者の書』『インターネットドキュメンタリー・地球法廷』『エンデの遺言』『世界遺産プロジェクト』などのドキュメントを制作し国内外の賞を多く受賞する。映画『天のしずく 辰巳芳子いのちのスープ』(2012年)『大津波 3.11 未来への記憶』(2014年)に続き、2017年6月3日に『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』を公開。
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ライフ・スタイル, 人材育成映画監督/元NHKエグゼクティブプロデューサー
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