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HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
齊藤正明【第2回】船員のやる気を出させるため、給料以外にあげるものとは? – 目指せ!デキるビジネスパーソン ~マグロ船から学んだ全てのこと~
【コラムジャンル】
チームビルディング , デキる , ビジネスパーソン , マグロ船 , マネジメント , やる気 , リーダーシップ , 全て , 学んだ , 目指せ , 第2回 , 給料 , 船員 , 言葉 , 講演会 , 連載 , 部下育成 , 齊藤正明
2015年04月07日
「マグロ船って、どれくらい儲かるの?」これは、私が一番聞かれる質問です。働くからにはお金が欲しい。そしてそれよりもっと欲しいものがある、そんなお話しです。
私は「日本一の船!」と、言われるマグロ船に乗せられた経験があります。
『マグロ船』という職場は、一般の会社と比べると、狭くて不便な環境でした。それだからこそ、皆が力を合わせ、助け合うことで安全を守り、かつ、大漁で帰港を果たしていました。『マグロ船』という、狭くて不便な環境だからこそ培われた、『人を活かすコミュニケーション』や、『困難を前向きに受け止める姿勢』を、お伝えしています。
船員をやる気にさせるため、給料以外にあげるものとは?
「マグロ船って、どれくらい儲かるの?」これは、私が一番聞かれる質問です。
マグロ船は、たしかに景気のいい時代はありました。40~50年前は、17歳くらいでも、ひと月に約100万円の給料をもらっていたそうです。しかしそれも今となってはすべて昔話になってしまいました。
原因は、
1.不漁による漁獲量の大幅な低下
2.燃料代の高騰
3.海外からの安いマグロが輸入されるようになった
など様々で、とにかく結論としては、日本のマグロ漁は経営的に成り立たなくなりつつあり、廃業する船が増えているようです。そんな状況ですので、漁師の給料がいいはずもなく、船によっての違いはありますが、一般船員の場合、だいたい40日の航海で30万円程度です(私が乗っていたタイプのマグロ船において)。
しかも、会社員と違い、ボーナスもありませんから、普通の会社員と比べて割が合わないと感じる人のほうが多いのではないでしょうか。
給料の代わりにあげるもの
私はとあるマグロ船の船長に、この現状のことで話したことがあります。
「今の時代、給料でみんなのやる気を上げられないから、船長の仕事って、より難しくなりますね」
「まーのー、でも、漁師は海が好きじゃし。それにの……」
「それに、何ですか?」
「若ぇ人たちには、金やらは よーやれんようになっちょーが、『言葉』やらはいくらでもあげられるけんのー」
潮でシケたのか、クシャクシャになったタバコをくわえ、目は海の一点を見つめながらそう言いました。私には当時、『言葉をあげる』という意味がまるでわかりませんでした。私にとっての『言葉』とは、部下に「指示をしたり」、「説明をしたり」するためだけにあるものでした。
漁師たちも、もちろん、そのために『言葉』を用いるのですが、それ以上の役割が、「言葉自体が贈り物だ」という発想なのです。つまりどういうことかと言いますと、部下の顔を見たときに頭のなかに入れておかねばならないのは、
「コイツにどげーなこと言うてやったら、コイツ、喜ぶかいのー?」
「コイツにどげーなこと言うてやったら、この船でもっと居場所ができるかいのー?」
という視点だそうです。
自発的に働いてもらうには
ですから普段、若い船員に声をかけてあげる言葉は、「オメー、若ぇのにうめぇのぉ」と褒めたり、「普段、ようやってくれて助かっちょるど!」というような感謝の気持ちを伝えるのです。すると若手は、「俺、この船で大事な人間なんだ!」という、いわゆる愛社精神が生まれ、自発的に働いてくれるようになるというのです。
意外にもその一方で、高給すぎるお金を渡すと、余計に船に対する愛着はなくなってしまいます。なぜなら、給料だけで動機づけをしようとすると、「もっと、金くれる船はねぇけぇのう?」と、いわゆる転職のようなことしか考えなくなってしまったそうです。
人をやる気にさせるコミュニケーションの分量
このような、「言葉自体が贈り物だ」という認識がないと、普段、部下とのコミュニケーションはどうなってしまうでしょうか?お恥ずかしながら、私の場合、部下の顔を見るたびに、「この人の、どこを直してやろうか?」、「この人、また勘違いなことやっていないかな?」という、あら探しばかりをしていたのです。
もちろん、いけないところを見つけて指導してあげることは必要です。でも、それを年中やられたら、部下はたまりません。常に自分の悪い所しか見てこない上司や経営者がいる職場のなかで、「この職場でがんばろう!」など思ってくれるはずがありません。
ですから、普段の業務のなかでは、「褒めたり、感謝を伝えるのが8割」。「指導や注意は2割」の分量でコミュニケーションをとらないと、人はやる気になってくれないものなのです。
次回は、見張りの仕事から教わった、退屈な時間が仕事の質を向上させるというお話をしたいと思います。
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