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齊藤正明【第7回】部下が、「もっと叱って下さい!」と、思ってもらえる漁師流の叱責術 – 目指せ!デキるビジネスパーソン ~マグロ船から学んだ全てのこと~
【コラムジャンル】
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2015年11月25日
赤道付近でマグロ漁をしていると、体長1メートルから2メートル以内くらいのサメもよく揚がりました。サメに遭遇し危機一髪の状態だった漁師に船長が掛けた言葉とは?
私は「日本一の船!」と、言われるマグロ船に乗せられた経験があります。
『マグロ船』という職場は、一般の会社と比べると、狭くて不便な環境でした。それだからこそ、皆が力を合わせ、助け合うことで安全を守り、かつ、大漁で帰港を果たしていました。『マグロ船』という、狭くて不便な環境だからこそ培われた、『人を活かすコミュニケーション』や、『困難を前向きに受け止める姿勢』を、お伝えしています。
部下が、「もっと叱って下さい!」と、思ってもらえる漁師流の叱責術
赤道付近でマグロ漁をしていると、体長1メートルから2メートル以内くらいのサメもよく揚がりました。
普通の魚の場合、捕れると体を左右に振ってバタバタと暴れますが、サメの場合はこれと異なります。船に揚げられたサメは、ほふく前進をするかのように、ローリングしながら漁師ににじり寄ってきますが、そこは漁師も手慣れたもので、焦らず奥歯を強く噛みしめた表情で、闘牛士のごとく体をさばき、右手に持っているナタでサメの頭部を斬り落とすかのように振り下ろします。
マグロ船ではサメを捕る時もある
ただしこのときは、頭が落ちる程にはナタを振るいません。完全に頭と胴体を切り離すと、噛みつく余力があるサメの頭が、甲板をゴロゴロと転がるので非常に危険です。ですから頭を半分だけ落とし、サメが暴れない程度にしておきます。こうして、ほぼ安全にしておいてから、背ビレ、腹ビレ、胸ビレを包丁で切り落とし、いわゆる“フカヒレ”を取るのです。
サメも1匹ずつ揚がるのであれば、漁師も落ち着いて作業ができるのですが、群れに当たってしまうと、甲板がサメだらけになります。そうしたときは、忙しさからついつい作業が雑になり、ケガが起きる危険性が高まります。
サメに危機一髪
ある日の漁でサメが連続で揚がっていたとき、突如、「おわぁ!」という叫び声が聞こえました。声の方向を見ると、ひとりの漁師が右足をサメにかまれていました。足をかまれた漁師が、思いきり足を振り上げるとサメは足から外れます。縄を揚げている漁師は持ち場を離れられないのですが、目を丸くして持ち場から状況を見ています。
他の待機中の漁師たちが、サメにかまれた漁師の元にかけつけようとしたところ、かまれた本人が、「大丈夫じゃ!長靴をやられただけじゃ」と言いました。長靴を脱ぐと、本当に無傷でしたが、長靴には、見事に大きなケモノに爪で引っかかれたかのような穴が空いており、奇跡的にもかまれずにすんだようです。
無傷に湧く漁師達に親方の怒声が響く
漁師たちは口々に、「すげぇ!」と言ったり、「神業じゃ!」と興奮した口調で声が上がります。そんなとき操舵室から親方のドスのきいた、「ゴルァ!!」という、今にもブン殴りに飛び出してきそうな怒声が飛び、甲板にいた全員が、一瞬にして凍りました。普通であれば、殴りに行かないまでも、「オマエ、いつになったら一人前になるんだ!? 本当に使えないな」とか、「そんな新人でもしないようなミスするんじゃねぇよ!」といった文句の言葉を浴びせるところだとは思いますが、このときの漁師の言葉は違いました。
難を逃れた漁師に親方が掛けた言葉
「一体、何やっとんじゃ! せっかくうまくさばけるようになったお前がここで怪我しよったら、みんなが困りよろうが!!こんバカ!!」
と、操舵室から叫んだのです。
たしかに口調は怒っているのですが、言っている内容としては、「お前はさばくのがうまい」・「お前が欠けると、戦力が欠ける」・「お前はこの船でとても役立つ人材だ」ということを伝えているのです。怒られた本人も、このように怒られたことがとても嬉しかったらしく、今まで以上にこの船で頑張ろうと思ったそうです。
上司の怒りの正体は“期待”
怒りの感情がわき起こる理由は、「信頼する部下ならきっとうまくやってくれる!」という“期待”が裏切られたからです。つまり、「怒りがわいた!」というのは、相手に期待をしていたという何よりの証なのです。
ですから、部下に対して怒りの感情を持ったときには、“怒り自体”をぶつけるのではなく、その前にあった、“期待”の部分を伝えてあげるほうが、部下は「ああ、上司はこんなふうに私のことを期待してくれていたんだ……。それなのに、自分はなんて不甲斐ないんだ。よし!次こそは、期待に応えてみせよう!!」とやる気を出してくれるのです。
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