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バンダイナムコ×ノビテク【第2回】バンダイナムコゲームスの知見 – ビジネスゲームに活用される「ゲームメソッド」とは
【コラムジャンル】
ゲームメソッド , ノビテク , バンダイナムコ , ビジネスゲーム , 一木裕佳 , 学び , 梅田昌史 , 活用 , 知見 , 研修 , 社員研修 , 第2回 , 連載
2016年08月08日
様々な分野に同社の知見を生かす試みを続けているバンダイナムコゲームスの新規事業だが、一木氏には、全てのプロジェクトに共通する、ある想いがあるという。
「なぜ、ゲームメーカーが社員研修プログラムを!?」バンダイナムコゲームスが研修業界へ参入。その背景にはどのような考えがあるのか、「楽しい研修」というのは本当に成立するのかなどについて、バンダイナムコゲームスの社長室 新規事業部のゼネラルマネージャー・一木裕佳氏とマネージャーの梅田昌史氏に聞いた。
本間貴史≫文 櫻井健司≫写真
(※このインタビューは『ノビテクマガジン創刊号』発行時の2013年7月に収録した内容の再掲です。)
高齢者リハビリプロジェクトでも成果
高齢者のリハビリのプロジェクトでは、『太鼓の達人』や『ワニワニパニック』といったロングセラーのアーケードゲームがベースとなった。通常のリハビリは、単純動作の繰り返しなので辛いものになりがちだが、ゲームを通じて手を動かすと、毎日やってみたくなるもの、失敗しても再チャレンジしようと思えるものになる。高齢者向けということで、当初、リハビリマシンをゲームっぽくカスタマイズしたが、想定していた効果は得られなかった。
試行錯誤を重ね、アートゲームにリハビリの要素を少し加える形で「本物感」を打ち出したところ、高齢者の表情が一変した。「くやしい、もう一回やらせて!」という反応が出るようになったのだ。ゲームに使う器具が扱いやすくなるよう補助用具をを加える、ソフトの内容を高齢者の嗜好に合ったものにするといった最小限のサポートにとどめ、ゲーム本来の楽しさを全面に出したことで、高齢者のやる気を引き出す結果が得られた。
自発的な高齢者の姿勢に対して、介護施設や医療関係者からは、「今までのリハビリでは見られなかったこと」と驚きの声が聞かれる。リハビリテーションが専門分野である九州大学の高杉紳一郎准教授が中心になり分析した結果、通常のリハビリでは起こりえない形で効果が現れることが実証され学会でも発表されている。
様々な分野にバンダイナムコゲームスの知見を生かす試みを続けている新規事業だが、一木氏には、全てのプロジェクトに共通する、ある想いがあるという。
「私たちのプロジェクトによって、人と人とのつながりや温かい気持ちを生み出したい。ゲームというものに対して悪いイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、正しい使い方さえすれば、喜びや感動をもたらすものです。高齢者のリハビリでは、介護施設にゲームを置いたことで、近所の幼稚園児やお孫さんが遊びに来る頻度が増えたという声をいただいています。また、小学校の教科書のプロジェクトでは、お子さまと親御さんのコミュニケーションを増やす効果を考えました。社員研修プログラムのの開発においても、参加者同士の闊達 なコミュニケーションを生み出すものにしたいという想いを大切にしています」
ゲーミフィケーションとの違い
バンダイナムコゲームスの知見や担当者の深い想いから生まれた社員研修プログラムとは、具体的にはどのようなものなのだろうか。最近では、ゲーミフィケーションへの注目が集まっているため、この流れに沿ったものと思われがちだが、根本的な考え方はまったく異なるという。一木氏は、その違いを次のように解説する。
「ゲーミフィケーションというのは、テクニックの一つです。あることを達成すると、ポイントや特典がもらえる。これを動機づけにすることは、ゲームだけでなく販売活動などにも昔から採用されていました。弊社が提供している社員研修プログラムの背景にあるのは、バンダイナムコゲームスの膨大な知見です。これに基づくものと、ゲーミフィケーションというひとつのテクニックに基づくものでは、方向性が必然的に大きく変わってきます」
バンダイナムコゲームスの知見を象徴するのが、ゲームに付属されている説明書である。ゲームを開封したとき、説明書を熟読する人はほとんどいない。説明書を読む前にスタートボタンを押し、プレイしながらゲームの機能やストーリーを理解していく。なぜ、このようなことが可能かというと、操作性や情報をわかりやすくするノウハウをメーカーが持っているからだ。また、ゲームをはじめると、自発的に次のステージに進みたくなる。これは、計算されたストレスと開放感をゲームに付加しているためである。
同社では、このような知見を総称して「ゲームメソッド」と呼び、事業部の中核キーワードに設定している。ゲームメソッドに基づいて研修プログラムを開発することで、時に退屈さを感じることのある社員研修が、集中できるもの、自分から次のステージに進みたいものになる。
設定されているシチュエーションも参加者の意欲を高める要因となっている。同社がリリースする研修プログラムの一つ、「ゲームカンパニーX」は、架空のゲーム会社に入社し、ゲームの制作販売の業務を疑似体験することで、ビジネスに必要なスキルを身につけていくという内容である。ゲームに親しんできた比率の高い若い世代が対象ということもあり、どのような業界の企業でもこの研修が受け入れられるよう設計されている。